寺子屋ブログ by 唐人町寺子屋

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2014年 11月 28日

新世紀エヴァンゲリオン完結。

昨日、自宅に帰ってみると、新世紀エヴァンゲリオン(貞本義行)14巻がAmazonから2つ届いているという小さな惨事が。
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今回の最終巻は、発売前から複数の中学生たちが「いよいよ発売ですね」と小さな笑顔を浮かべて話してきたり、昨日は高1のKくんが、この新刊を読みながら塾にやって来て「危ないやろ」と注意を受けたり、注意を受けたことを踏まえてKくんは自宅に帰る時に一度帰りかけたのにかかわらず、「読みながら帰るのは危ないから」とエヴァを読むために教室の敷地内に戻ってきて、「家で読みよ!」と突っ込まれるなど小さな騒動が起こったりしました。


私たちの世代にとっては十代から続く青春のコミックスですが、まさか20年近くも経過したあとに、当時の自分と同世代、同世代以下の子どもたちとエヴァを語る日が来るとは思いませんでした。



マザコンと父殺しという、神話の定式を携えて完結を迎えたエヴァンゲリオン。

現代の新しい倫理の光を放つガッチャマンクラウズなどのアニメに比べると、なんとなく郷愁のようなせつない懐かしささえ感じさせますが、私(たち)の心を掴んで止まないその郷愁は、きっとこれからも時あるごとに、私(たち)の胸をきゅっと締めつけることでしょう。


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by terakoyanet | 2014-11-28 11:23 | 雑感・授業風景など | Trackback | Comments(0)
2014年 10月 20日

自分とふたりっきりで暮らす

いまFACEBOOKを見ていたら、谷川俊太郎氏がバカボンのパパに託して書いた一篇の詩が流れてきた。



自分とふたりっきりで暮らすのだ

自分のパンツは自分で洗うのだ

自分は自分を尊敬しているから

それくらいなんでもないのだ

自分がニコニコすれば

自分も嬉しくなってニコニコするのだ

自分が怒ると自分はこわくなるので

すぐに自分と仲直りするのだ

自分はとっても傷つきやすいから

自分の言うことさえきいていれば

自分は自分を失うことはない

自分は自分が好きで好きでたまらない

自分のためなら生命も惜しくない

それほど自分はすばらしいのだ





原詩では、ひらがな部分はすべてカタカナで表記。

バカボンのパパのセリフだからカタカナで書かれたわけだが、カタカナ表記で、且つ自恃を感じさせる内容が、宮沢賢治の「雨ニモマケズ」を連想させた。

私(たち)が日ごろ気疲れしているときというのは、たいてい、他の人の評価を気にしていたり、他の人に腹だっていたりする。

でも、そんなときこそ、投げやりになることなく、自分の心と対話しながら、しかるべき道を定めていきたい。




バカボンのパパの「これでいいのだ」という全肯定は、私たちの心を蝕む自己否定に対する最大の対抗手段である。

それは決して開き直りではなく、諦念でも思考停止でもなく、むしろ、否定の悪循環を停止する意志を持ち、そういった意志を持つ自分を頼みとすることが、私たちの生きる術であり、ひいては私たちの幸せにつながるということを示唆していると、私は考えたい。


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by terakoyanet | 2014-10-20 09:23 | 寺子屋エッセイ(読み物) | Trackback | Comments(0)
2014年 01月 06日

私とマンガ、そして受験生とマンガ

昨日の授業の合間に、生徒から「先生はマンガとか読まなそう」と言われたので、その偏見に真っ向から反論しました。
反論しすぎて「先生おたくー」と言われてしました。
しかし私の中ではマンガは少し好きなだけなので、おたくとまで呼ばれると、マンガ好きの方々に申し訳ない気がしました。
私はまだまだマンガ愛が足りないと思うのです。

私の読書の7割は単行本(小説・哲学・民俗学・デザイン・民藝)と、旅のガイド本です。
残り3割がマンガです。

過去2年間にAmazonで買ったマンガ本を並べてみました。(Amazonの購入履歴をコピー&ペースト)

■2012年2月
ヒミズ 1 (ヤンマガKC) 古谷 実
よいこの黙示録(2) (イブニングKC) 青山 景
へうげもの(1) (モーニングKC (1487)) 山田 芳裕
へうげもの(3) (モーニングKC (1545)) 山田 芳裕
へうげもの(2) (モーニングKC (1512)) 山田 芳裕
SWWEEET 1 (IKKI COMIX) 青山 景
SWWEEET 2 (BIC COMICS IKKI) 青山 景
ヒミズ(2) (ヤンマガKC (1010)) 古谷 実
■2012年3月
ヒミズ(3) (ヤンマガKC (1040)) 古谷 実
ヒミズ(4)<完> (ヤンマガKC (1055)) 古谷 実
■2012年4月
日本人の知らない日本語3  祝!卒業編 (幻冬舎) 蛇蔵, 海野凪子
岳 1 (ビッグ コミックス) 石塚 真一
岳 2 (ビッグ コミックス) 石塚 真一
岳 3 (ビッグ コミックス) 石塚 真一
岳 4 (ビッグ コミックス) 石塚 真一
岳 5 (ビッグ コミックス) 石塚 真一
岳 6 (ビッグ コミックス) 石塚 真一
岳 7 (ビッグ コミックス) 石塚 真一
岳 8 (ビッグ コミックス) 石塚 真一
岳 9 (ビッグ コミックス) 石塚 真一
岳 10 (ビッグ コミックス) 石塚 真一
岳 11 (ビッグ コミックス) 石塚 真一
岳 12 (ビッグ コミックス) 石塚 真一
岳 13 (ビッグ コミックス) 石塚 真一
岳 14 (ビッグ コミックス) 石塚 真一
岳 15 (ビッグ コミックス) 石塚 真一
3月のライオン 7 (ジェッツコミックス) 羽海野 チカ
もやしもん(11) (イブニングKC) 石川 雅之
■2012年5月
岳 16 (ビッグ コミックス) 石塚 真一
ストロボライト (太田出版) 青山 景
■2012年6月
レッド(1) (イブニングKCDX) 山本 直樹
レッド(2) (イブニングKCDX) 山本 直樹
レッド(3) (イブニングKCDX) 山本 直樹
レッド(4) (イブニングKCDX) 山本 直樹
惡の華(1) (少年マガジンKC) 押見 修造
惡の華(2) (少年マガジンコミックス) 押見 修造
レッド(5) (イブニングKCDX) 山本 直樹
レッド(6) (KCデラックス) 山本 直樹
惡の華(3) (少年マガジンコミックス) 押見 修造
惡の華(4) (少年マガジンコミックス) 押見 修造
アイアムアヒーロー 1 (ビッグ コミックス) 花沢 健吾
アイアムアヒーロー 2 (ビッグ コミックス) 花沢 健吾
アイアムアヒーロー 3 (ビッグ コミックス) 花沢 健吾
アイアムアヒーロー 4 (ビッグ コミックス) 花沢 健吾
アイアムアヒーロー 5 (ビッグ コミックス) 花沢 健吾
アイアムアヒーロー 6 (ビッグ コミックス) 花沢 健吾
アイアムアヒーロー 7 (ビッグ コミックス) 花沢 健吾
アイアムアヒーロー 8 (ビッグ コミックス) 花沢 健吾
おやすみプンプン 10 (ヤングサンデーコミックス) 浅野 いにお
惡の華(5) (講談社コミックス) 押見 修造
惡の華(6) (講談社コミックス) 押見 修造
日本人なら知っておきたい日本文学 人物で読む古典 (幻冬舎) 蛇蔵, 海野 凪子
臨死!! 江古田ちゃん 1 (アフタヌーンKC) 瀧波 ユカリ
臨死!!江古田ちゃん(3) (アフタヌーンKC) 瀧波 ユカリ
臨死!!江古田ちゃん(2) (アフタヌーンKC) 瀧波 ユカリ
■2012年7月
臨死!!江古田ちゃん(4) (アフタヌーンKC) 瀧波 ユカリ
臨死!!江古田ちゃん(5) (アフタヌーンKC) 瀧波 ユカリ
臨死!!江古田ちゃん(6) (アフタヌーンKC) 瀧波 ユカリ
岳 17 (ビッグ コミックス) 石塚 真一
■2012年9月
自殺島 1―サバイバル極限ドラマ (ジェッツコミックス) 森 恒二
自殺島 2―サバイバル極限ドラマ (ジェッツコミックス) 森 恒二
岳 18 (ビッグ コミックス) 石塚 真一
大奥 8 (ジェッツコミックス) よしながふみ
テルマエ・ロマエV (ビームコミックス) ヤマザキマリ
■2012年10月
よつばと! 1 (電撃コミックス) あずま きよひこ
よつばと! 2 (電撃コミックス) あずま きよひこ
よつばと! 3 (電撃コミックス) あずま きよひこ
よつばと! 4 (電撃コミックス) あずま きよひこ
よつばと! 5 (電撃コミックス) あずま きよひこ
よつばと! 6 (電撃コミックス) あずま きよひこ
よつばと! 7 (電撃コミックス) あずま きよひこ
よつばと! 8 (電撃コミックス) あずま きよひこ
よつばと! 9 (電撃コミックス) あずま きよひこ
よつばと! 10 (電撃コミックス) あずま きよひこ
よつばと! 11 (電撃コミックス) あずま きよひこ
■2012年11月
うた恋い。異聞 うた変。 杉田圭
超訳百人一首 うた恋い。2 杉田 圭
超訳百人一首 うた恋い。3 杉田圭
潔く柔く 1 (マーガレットコミックス)  いくえみ 綾
潔く柔く 2 (マーガレットコミックス)  いくえみ 綾
潔く柔く 4 (マーガレットコミックス)  いくえみ 綾
■2012年12月
潔く柔く 3 (マーガレットコミックス)  いくえみ 綾
潔く柔く 5 (マーガレットコミックス)  いくえみ 綾
おやすみプンプン 11 (ヤングサンデーコミックス)  浅野 いにお
大奥 第9巻 (ジェッツコミックス)  よしなが ふみ
3月のライオン 8 (ジェッツコミックス)  羽海野 チカ
潔く柔く 9 (マーガレットコミックス)  いくえみ 綾
潔く柔く 7 (マーガレットコミックス)  いくえみ 綾
潔く柔く 6 (マーガレットコミックス)  いくえみ 綾
潔く柔く 10 (マーガレットコミックス)  いくえみ 綾
潔く柔く 13 (マーガレットコミックス)  いくえみ 綾
潔く柔く 12 (マーガレットコミックス)  いくえみ 綾
潔く柔く 8 (マーガレットコミックス)  いくえみ 綾
潔く柔く 11 (マーガレットコミックス)  いくえみ 綾
■2013年1月
あふがにすタン (三才ブックス) ちまきing
アジアのハッピーな歩き方 (キョーハンブックス) 堀田あきお&かよ, 亜細亜の素
アジアのディープな歩き方 (上) (旅行人) 堀田 あきお
アジアのディープな歩き方 (下) (旅行人) 堀田 あきお
泣き虫チエ子さん 1 (愛蔵版コミックス) 益田 ミリ
毎日かあさん9 育っちまった編 西原 理恵子
ギャグマンガ日和 9 増田こうすけ劇場 (ジャンプコミックス) 増田 こうすけ
ギャグマンガ日和 10 増田こうすけ劇場 (ジャンプコミックス) 増田 こうすけ
波打際のむろみさん(1) (少年マガジンコミックス) 名島 啓二
どうしても嫌いな人―すーちゃんの決心 益田 ミリ
オレの宇宙はまだまだ遠い 益田 ミリ
■2013年3月
できるかなゴーゴー! (SPA COMICS) 西原 理恵子
よつばと! 12 (電撃コミックス) あずま きよひこ
レッド(7) (KCデラックス) 山本 直樹
おかゆネコ 1 (ビッグ コミックス〔スペシャル〕) 吉田 戦車
西原理恵子の人生画力対決 1 (コミックス単行本) 理恵子, 西原
西原理恵子の人生画力対決 5 (コミックス単行本) 理恵子, 西原
■2013年4月
海街diary 1 蝉時雨のやむ頃 吉田 秋生
もやしもん(12) (イブニングKC) 石川 雅之
海街diary 2 真昼の月 (フラワーコミックス) 吉田 秋生
■2013年5月
テルマエ・ロマエVI (ビームコミックス) ヤマザキマリ
■2013年6月
おやすみプンプン 12 (ヤングサンデーコミックス) 浅野 いにお
Sunny 第1集(IKKI COMIX) 松本大洋
Sunny 第2集(IKKI COMIX) 松本大洋
Sunny 第3集(IKKI COMIX) 松本大洋
■2013年7月
臨死!!江古田ちゃん(7) (アフタヌーンKC) 瀧波 ユカリ
■2013年8月
ヒストリエ vol.8 (アフタヌーンKC) 岩明 均
■2013年9月
機械仕掛けの愛 1 (ビッグ コミックス) 業田 良家
■2013年10月
スティーブ・ジョブズ(1) (KCデラックス) ヤマザキ マリ
3月のライオン 9 (ジェッツコミックス)  羽海野 チカ
■2013年12月
大奥 10 (ジェッツコミックス) よしながふみ
神々と人々の日々 1 ギリシャ神話劇場 (ヤングジャンプコミックス) 増田 こうすけ
ギャグマンガ日和 13 増田こうすけ劇場 (ジャンプコミックス) 増田 こうすけ
惡の華(7) (少年マガジンコミックス) 押見 修造
惡の華 (8) (講談社コミックス) 押見 修造
惡の華(9) (少年マガジンコミックス) 押見 修造
惡の華(10) (講談社コミックス) 押見 修造
スキエンティア (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL) 戸田 誠二
アンダーカレント アフタヌーンKCDX 豊田 徹也
さよならソルシエ 1 (フラワーコミックスアルファ) 穂積
さよならソルシエ 2 (フラワーコミックスアルファ) 穂積
毎日かあさん10 わんこギャル編 西原 理恵子
羊の木(1) (イブニングKC) いがらし みきお
羊の木(2) (イブニングKC) いがらし みきお
おかゆネコ 2 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL) 吉田 戦車
おやすみプンプン 13 (ヤングサンデーコミックス) 浅野 いにお



いいマンガだよ、と言われるから買って読んでみているだけで、青田買いも表紙買いも欲情買いも何もなく、保守的な買い物をしています。



随分前に、「マンガは学力の向上に役立ちますか」と真面目なお母様から尋ねられたことがあるのですが、この質問は、「たまねぎを食べたら足が速くなりますか」と尋ねられるのと同じくらい答えるのが難しい。

だってマンガは人生の慰み物。学力の向上のためにあるものではないのです。
マンガを読むことで学力の向上を期待するなんて、ちょっと欲張りな気がします。

しかし、マンガは結果的に、学力向上に寄与することならあり得ます。
「国語」の科目で得点を取りたいなら、あくまでも論理的な文章と戦うべき。これは鉄則であり譲れない。
しかし、文章を読むときに必要な知恵・知識・感性をマンガで鍛えることは可能であり、補佐的な作用ならば多少は期待できそうです。


合格したい高校が目の前にあるのに、受験直前にマンガを読んでいる生徒はバカです。
言葉は悪いですが、事実です。

言い訳はできません。だってマンガ読んで、合格に近づけるわけないでしょう。
受験に奇跡はない。受験をなめるなと言いたい。

一方で、マンガを読むこと自体をバカげたことと否定するのは、マンガを読んでいる子どもにとっては受け入れがたいこと。
マンガには愉しみがいっぱい詰まっている。それはわかるけど、人はついつい目の前の愉しみにばかり心を奪われ、そのくせ、そのせいで失ってしまったものがあることが後でわかったときに、泣いて悔やんだりそれを人のせいにしたりする弱い生き物(=バカ)なんだよ、という知恵を親子で共有しながら、共に歩む道を探していただきたいと願っています。


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by terakoyanet | 2014-01-06 00:58 | 雑感・授業風景など | Trackback | Comments(0)
2012年 09月 27日

「岳」最終巻

夜通し中学生たちの2学期中間テストの対策テキストを作成中です。
次から次に新しいテキストをつくってはプリント&コピーしています。



閑話休題---

石塚真一のコミック「岳」が最終巻を迎え、先日読了しました。
Amazonレビューですでに多くの酷評をあびているさなかなので、私が上塗りする話でもないかもしれませんが、私もこの結末は残念でならなかった読者のひとりです。


(以下ネタばれあり)

17巻から図柄のトーンが暗くなり、これは嫌な予感が…作者さん、かなり精神的に参っているのではないか...などと心配していたのですが、残念ながら杞憂に終わらず。

なぜ一点の曇りもないポジティブスーパーマンの三歩が死ななければならなかったのか理解できませんでした。彼の死の必然性が全く感じられない展開。

はじめからこの作品は人間の深部をえぐるような作風ではなく、五月晴れのようなさわやかさが売りの作品のはず。多くの読者にとって、山への憧憬をこれほど掻き立てる作品との出会いは初めてで、ワクワクと胸をふるわせて作品を読み進めてきたはずです。

しかしながら最後の2巻は違う作品のように思えました。ほぼ勝算がない中で人命救助をしようとし、案の定命を落とす展開は、これまでのスーパーマン三歩の行動と明らかに矛盾しています。避けようのない事故ならともかく、最終巻の彼の死は彼自身の判断に間違えがなければ避けることができたはずです。




物語の中の死には論理的必然性が必要です。否、論理的必然性というよりは、むしろそれを超えるような、論理を捻じ伏せるほどの大きな力のはたらきが必要です。

夏目漱石の「虞美人草」では、最終章で藤尾が突然死します。その死は原因のわからない不可解なもので、読者は唐突な展開にあっけにとられます。
しかし、それまでこの物語を鋭く読み進めてきた読者はこの死に圧倒的な必然を感じます。
これまでの物語を切り裂くようなおぞましい藤尾の死が、厳しい倫理を貫こうとする作者の姿勢からもたらされたことを直観したときに、私たちは初めてこの物語の意味を知ります。
物語の中の死にはこれまでの物語の論理を逆立ちさせるような力があるのです。すぐれた文学作品のなかには必ずといっていいほどこの力が宿っています。


「岳」と同じ舞台地(北アルプス)の名作として知られる井上靖の「氷壁」。
この作品では、登山家としては隙のないはずの2人の登山家が(結果的に)死に至ります。
事故死した小坂はともかく、登山家としては隙のないはずの魚津の死には、完全無欠の登山家の死という意味で、「岳」の三歩と共通点を感じることができます。

しかし、魚津の死に読者が首をかしげることはないでしょう。やはり魚津の死に大きな力がはたらいていたことを読者は感じます。そもそも小坂が死んだ時点で、魚津は死に吸い寄せられていたのではないか、かおるは小坂の分身ではないだろうか、、、など、読者には無数の解釈をする余地があり、その余地自体が魚津の死に多重の意味を持たせます。また、彼の死によって読者は、小坂、かおる、魚津という若者たちの純粋性をそのままの状態で心に抱え持つことができます。彼らの無垢な精神がそのまま物語の余韻となり、それが永遠化するのです。


「岳」における三歩の死は、これまでの物語の論理を逆立ちさせるわけでも、論理を超えた余韻を残すわけでもない点で、彼の死についての多様な解釈の余地が読者に残されていない点で、失敗と言わざるをえないのではないかと感じています。


私の中の三歩は、今日も北アルプスの尾根に座ってコーヒーを美味しそうに飲んでいるんです。
山登りの楽しさの断片を教えてくれた三歩に感謝しながら、このまとまりのない文章を終えます。



―仕事に戻ります。。。―

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by terakoyanet | 2012-09-27 06:20 | おすすめの本・音楽 | Trackback | Comments(0)
2011年 11月 15日

当世マンガ事情

日々の実働時間が極めて長いため、私の一日の読書時間は寝る直前の10分程度に限られますが、それでも、マンガのいわゆる話題作はわりとマメにチェックして読んでいます。

昨日、「おやすみプンプン」の9巻を読み終わりました。
いまどきめずらしい純文学系とよびたくなるマンガです。プンプンとその周囲のキャラは暗くネジまがっていますが、読んでて不思議な安堵感があります。

この1年で最も面白いとおもったのが、松本大洋の「竹光侍」
過去の松本大洋の作品の中でも地味な部類に入るマンガですが、まずストーリーうんぬんの前に絵そのものがすごくいいです。彼の筆致によって男のロマンが月見草のような繊細さとはかなさをもった美しいものに昇華されています。昨年完結しました。

いま読み進めているのが「ヒストリエ」。紀元前4世紀のギリシャ、ペルシア、マケドニアが舞台の歴史マンガ。作者は「寄生獣」で一躍有名になった岩明均なので、一部どぎつい描写もありますが、ストーリーの圧倒的な面白さがありグイグイ読み進めてしまいます。

歴史ものであと一つ。映画化もされすっかり有名になった「大奥」は連載当初からずっとおもしろさの質を下げずに突っ走っています。将軍が「女」だからこそこんなに面白い作品になったんですね。

先日、自殺して亡くなった青山景の「よいこの黙示録」。青山氏の死去により未完で終わることになりましたが、今後どのような展開になったのだろうと、想像せずにはいられないとても面白い作品です。小学生がクラス内に宗教をつくるという一見奇想天外な話ですが、善人がどれだけ倫理的に弱い存在かということを痛切にリアルに描いた作品で、妙な現実感をもって私たちに迫ってきます。

映画化も進み、話題沸騰の「テルマエ・ロマエ」。温泉と地理と旅が好きな私にとって特別な面白さをもったマンガです。何といってもヤマザキ氏の巧妙かつ心穏やかな視点がとてもいいです。この作品になら、しばしの間私の心を預けられるという信頼感は他に替え難いものです。

話題沸騰といえば、子どもたちも知ってる「毎日かあさん」「もやしもん」あたりは発刊巻数が進んでも読み進めていますが、「毎日かあさん」には最近は話にあざとさを感じることがあり、しかも作者自体がそのあざとさまでもをネタにする逞しさをもっていますから、まったくもう手に負えないよ、と思うことがあります。昨年出た感動作として知られる「きみのかみさま」にも若干あざとさを感じてしまいました。とはいっても西原ブランドはいまだに支持しています。私のなかの西原作品NO.1はいまだに「ゆんぼくん」です。

「もやしもん」は最初から登場人物たちの無機質さ、特に登場する女の子たちのキャラの魅力のなさに対し違和感を感じていましたが、「菌」の話自体に知識欲をかきたてる面白さがあるために読み進めてきました。しかしながら個人的にはここにきてちょっとダレてしまいました。樹教授にはヘタな説教をやめてほしいと。

逆に面白くなってきたなあと感じているのが「3月のライオン」。当初からこのマンガも登場する女の子たちがやたら魅力ないなと思っているのですが、それと関係なしに、巻数が進むにつれストーリー自体に深みが出て面白くなってきました。それにしても同じ「根暗」が主人公といっても、プンプンなんかと比べるととても健全なマンガですね。

名作「ヒカルの碁」の完全愛蔵版が、昨年完結し、私は今年になってすべて揃えました。
このマンガとおやすみプンプンは卒業生Hくんの勧めで読み始めたのですが、高校生たちもいいマンガたくさん知っていますね。過去読んだ全てのマンガのなかでも中毒度が最も高い作品のひとつです。

昨年完結したバレエマンガ「テレプシコーラ第2部」。おそらくこの作品を読んだ多くの人が感じているであろうと思いますが、テレプシコーラは第1部がとにかくすごかった、ということ。第1部に私たち読者は最愛の人を亡くし、その悲しみが癒えることなく第2部が終わってしまった、という印象です。

同じく昨年完結した「ピューと吹く!ジャガー」。過去10年存分に楽しませてもらいました。
終わったときは本当に悲しかった。人生の楽しみをひとつ失ったな、と思うほど。
当初は名作マサルさんを上回ることはない、と勝手に思っていたのですが、いつのまにか、マサルさん以上の愛情をこの作品に注いでいました。うすた氏の次作を心待ちにしています。


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by terakoyanet | 2011-11-15 09:36 | おすすめの本・音楽 | Trackback | Comments(0)
2008年 06月 05日

心を穏やかに暮らしたいお母さん方にオススメのマンガTOP5

心を穏やかに暮らしたいお母さんたちにオススメのマンガのご紹介です。
読みやすいのに含蓄があってそしてなんだかほっとするマンガたちを紹介します。(順位は適当です。)
どれも非常に人気のある作品ばかりですから読みやすいものが多いと思います。

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1位 ものがたりゆんぼくん(上・下) 西原理恵子 竹書房文庫

この漫画については以前オススメをしたことがあります。破天荒な親子のエピソードの中に、優しさがつまっています。

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2位 すーちゃん 益田ミリ 幻冬舎

すーちゃん、まいちゃんというどこにでもいそうな30代の女性を描いたマンガ。
内容はとても穏やかなのですが、そこにはリアルで的確な心象描写があります。
また、世間の風に対するすーちゃん、まいちゃんの距離のとりかたには思わず共感してしまいます。心が疲れた人は励まされる漫画なのではないでしょうか。
姉妹本に「結婚しなくていいですか。すーちゃんの明日」があります。

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3位 自虐の詩(上・下) 業田良家  竹書房文庫

映画化されたことで知名度が非常に高くなった傑作4コママンガ。「泣ける」漫画として有名です。
上巻の最初は何だこれ面白いのか?という感じのなのですが、下巻でダイナミックなドラマが待ち受けています。
このマンガのすごいところは4コマという形式で、これほどダイナミックな作品をつくったところにあります。(*4コママンガのいいところは、読者が1つの4コマが終わることに自分自身のペースを取り戻すことができるところです。1つの4コマを読み終わって次の4コマを読み始めるまでの一瞬の間隙に私たちは少し我に返ってマンガの意味やマンガと私自身との距離について思いをめぐらすことができます。)
このマンガでは愛情と友情が恥ずかしげもなく直球で描かれています。下巻の最後では強く心を揺さぶられますが、読後は穏やかな幸せを感じるマンガです。

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4位 毎日かあさん(①~④) 西原理恵子 毎日新聞社

西原理恵子の子育てマンガ。手塚治虫文化賞を受賞しています。毎日新聞に連載されていました。よくもまあこんなクセのあるマンガが全国紙に載ったものです。愛情いっぱい毒いっぱい、現役のお母さんたちにとってはグッとくるシーンがあまりに多いかもしれません。

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5位 コミックCOJI-COJI(①~④) さくらももこ 幻冬舎コミックス

国民的人気漫画家さくらももこのメルヘンファンタジーマンガ。ストーリーがかなりへんてこりんだったり、ちょっと哲学的?だったりしますが、読んでいてほっとするマンガ。
コジコジではものたりない人には「神のちから」をおすすめします。これちょっとヤバいです。



選外:細川貂々の「ツレがうつになりましてとそのシリーズ(その後のツレうつやイグアナの嫁など)も面白いですよ。


とてもおすすめの本ばかりを紹介しました。ぜひ読まれてみてください。
寺子屋(とその卒業生)のお母さまだったら、貸してくださいと言われればお貸ししますよ。(余裕のある方は買われてくださいね。巻数が少ないものばかりなので、上のマンガをすべて定価で購入しても9130円です。)


そのうち(いつになるかわかりませんが)、全く違う視点でのお母さん方へのオススメマンガ、そして高校生へのオススメマンガ等についての記事を書けたらと思っています。

by terakoyanet | 2008-06-05 11:34 | おすすめの本・音楽 | Trackback | Comments(0)
2008年 01月 10日

お知らせと、心にうつりゆくよしなしごとを箇条書きで。

受験前は本当に時間がありません。受験生もわたしもそうです。ですから、今日は箇条書き風に思いついたことをいくつか書きます。

昨日1・2年生の到達度テストの結果が出ました。2年生特進クラスの4名が偏差値64を超えたことに驚きました。その他1・2年生、全体的には思った以上のがんばりだったと言えます。ただし、2年生の成績の高低差が非常に大きく、今後大きな課題になります。みんなにしっかりがんばてもらわなくてはいけません。

本ブログの記事「新春の三寺社巡り」がウーマンエキサイト公式コンテンツ内の記事に採用されました。これはエキサイトが行っている「ブログtoメディア」とよばれる「オフィシャルコンテンツと情報発信力の高いブロガーを結びつけ、ともにコンテンツを作っていくためのエキサイトだけのシステム」とかなんとかいうもので、簡単に言えば、うちの記事がエキサイトの審査を経てエキサイトのオフィシャルサイトに掲載されたということで光栄なことです。ちなみに、エキサイトオフィシャルサイトへの記事掲載は「桜坂のイタリアンのお店クロチェッタ」に続く2回目です。

今日、3年生のI君に「先生、ピューと吹くジャガーの新刊買いましたか?」と聞かれました。もちろん答えは「買いました。」 買ったけどまだ時間がなくて読んでいないという生殺し状態です。ちなみに、同時に出た、「ピューと吹く!ジャガーふえ科自由研究」も買いました。

最近、新学期生の問い合わせが続いています。まもなく募集のお知らせをしますが、問い合わせはいつでもどうぞ。

12月分の成績配布が遅延しており申し訳なく思っております。数日中に配布いたします。

3年生、勉強の進行が順調で志望校に対し前向きな気持ちで取り組めている子はとても表情が明るいです。一方で、勉強がこの時期になってもはかどらない、がんばる気持ちはあるのに何かここにきてもがんばりきれないと感じている子の顔は曇っています。一人ひとりをしっかり観察して、よきアドバイスをしたいと思い、みんなの顔を一生懸命観察しています。

昨日のニュースのなかで、一般の公立校で、能力不足とみなされた教員は、特別支援学校にまわされることが多いということが、公然といわれており、とても驚きました。本当にひどい話だと思います。こんな記事がふつうに流れること自体おかしい。

昨日あるHPのなかで、先生と生徒が友達になるのはおかしいということが、非常に一方的な視点で書いてあり、あれれと思いました。私はどうせ生徒と友達になるなら、親友になるくらいの心意気が必要だと思っています。

わたしがいつも訪問させてもらっているHPにとよ爺さんのページがあるのですが、いつもその教育にかける熱意と情報の内容の濃さに驚かれます。

最近しょこたん語、例えば「ギザかわゆす」などを使っている生徒が何人もいます。KYがはやっているときに比べたら害がないのでいいと思います。この前岐阜に行ったときに、コンビニで、地元の若い子たちが、あまりに自然にみんなで「かわゆす」「まじこれかわゆす」とか言っていたので、これは方言なのか??と思ったのですが、どうなのでしょうか。

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富士宮駅前から見た夕焼けの富士
January 2008


by terakoyanet | 2008-01-10 01:19 | 寺子屋エッセイ(読み物) | Trackback | Comments(2)
2007年 07月 30日

青春のマンガ スラムダンク

青春のマンガと言えば、スラムダンクをおいて他にない。
私が中学のころジャンプで連載が始まり、大学2年のときに連載が終了した。
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スラムダンク最終巻が出たのは1996年10月


いま読んでもスラムダンクは桜木・赤木・流川・三井・宮城の5人すべて(さらに言えば仙道や沢北など敵チームの人物までも)が主役級の魅力を持っており、とにかくその人物とストーリー展開に魅了される。主役は桜木なのだが、周囲ではむしろ、三井や流川の人気のほうが高かった。私自身、高校時代はスラムダンクと寝食を共にしていたとでも言いたくなるほどその世界にはまっていた。

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私は高校時代はかなりの問題児で、自分が好きなことだけしかやらないようなバカ高校生だったが、でも何かに夢中になって取り組むとき、このスラムダンクにとても助けられた。
子どもたちみんなにも、小説でもマンガでも音楽でも何でもいいから、自身を鼓舞してくれるようないい出会いがあるといいと思う。

by terakoyanet | 2007-07-30 07:49 | おすすめの本・音楽 | Trackback | Comments(4)
2007年 07月 05日

ピューと吹く!ジャガー

大好きなマンガです。ジャンプにのってます。
13巻が出たのでさっそく昨日注文しました。
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うすた京介のマンガはほかに「すごいよ!マサルさん」があります。マサルさんすごいです。
最初はマサルさんのほうがすごいマンガだ!と思っていたのですが、この1年は、ピューと吹く!ジャガーのすごさにすっかり参っています。寝る前に数ページだけ読み返すのが日課です。

ジャガーさんはふえ科の講師です。でもふえ科のみんなはふえを吹きません。
わたしはふえを3本持っているふえ好きです。でもいまふえは吹きません。
ふえとジャガーさんをリスペクトしています。
ジャガーさんのふえを生で一度でいいから聞いてみたいです。

by terakoyanet | 2007-07-05 16:11 | おすすめの本・音楽 | Trackback | Comments(2)
2007年 04月 21日

『ものがたり ゆんぼくん(上・下巻)』 西原理恵子著

4コママンガの名作です。(4コママンガの名作といえば、他に『自虐の詩』があります。)
物語では、主に、イガグリ頭がかわいいゆんぼの成長と、破天荒なそのお母さんが描かれています。

そこには親子愛が描かれていますが、しかしその中身はなかなか過激です。
ゆんぼは家出して誰かの別荘に空巣に入ってしまうし、お母さんは誰かの墓石に登って果物をとったり、墓石を漬物の置石にしてしまったりします。
これらはもちろん悪いことです。作者もゆんぼやお母さんが悪いことをすることを肯定しているわけではありません。

ただ、この物語を通してわたしたちが教えられることは、自分の頭で考える、ということです。
先に善悪を定めてしまって、善いことだからする、悪いことだからしない、と割り切ってやっていくのは、もちろん間違ったことではないし、楽で安全なことです。

一方で、この物語のゆんぼとお母さんは考えます。自分がそのとき置かれている状況でもって自分がどのような行動を取ればよいか考えます。それは決してご都合主義というわけではなく、そこにはむしろ既成の善悪観に流されない強さがあります。

以前、うちの塾には規則がありませんでした。私は、子どもたちが、規則なんかなくても、自分の頭で考えて行動を取ってくれることを願い、信じていました。私は子どもたちが自分の頭で考えることができるようになることを願い、ある意味私はそのために指導をしているのだ、と考えていました。

でも、あるとき規則が必要だと感じるようになりました。まだ自分で考える用意ができていない子どもたちを責任持って預かるには規則が必要だと感じるようになりました。そしてその規則を守るという練習は、人間の信頼関係をつくる大切な練習になりうると考えるようになりました。これはいまでも間違ってはいないと感じています。しかし、一方で、規則が必要なのは、大人のそれこそご都合主義的な面があることは否めないとも感じています。

私は上からの押付けで既成の善悪観をたたきこむのではなく(このようなことをしたら、子どもは自分の力で考えることができなくなります)、あくまで自分で考える力を養ってほしいと思っていますし、これからもそれを教えるべく指導していくつもりです。

ということで、わき道に逸れてしまいましたが、『ゆんぼくん ものがたり』は、いま書いたようなことだけでなく、懐広く、私たちに、いろいろなことを考えさせてくれたり、わたしたちの心をほぐしてくれたりします。ぜひ、読んでみてください。

by terakoyanet | 2007-04-21 09:53 | おすすめの本・音楽 | Trackback | Comments(3)