寺子屋ブログ by 唐人町寺子屋

terakoyant.exblog.jp
ブログトップ | ログイン

タグ:ラテンアメリカ ( 7 ) タグの人気記事


2017年 11月 21日

一度見たら忘れられないパイプオルガン~トラコチャウアヤ聖堂

d0116009_02251627.jpg
オアハカから東南東に20㎞の場所にある町、サン・ヘロニモ・トラコチャウアヤ(San Jerónimo Tlacochahuaya)の教会堂に行きました。

16世紀に建てられたこの聖堂。外見は質素ですが、中に入ると素晴らしいんです。
d0116009_02312209.jpg
d0116009_02305585.jpg
直前にタクシーのパンクトラブルがあり、着いたときには見学時間を過ぎていましたが、お願いしてみたら特別に見せてくれました。
d0116009_02334142.jpg
2階も見る?と聞かれて私は大喜び。だって私はこの教会の2階にあるパイプオルガンを見るためにこの町に来たんです。見学時間外のため、若いアーティスト2人がパイプオルガンで音源の録音中だったのですが、快く見せてくれました。
d0116009_02375628.jpg
2階から堂内を見下ろす 天井画が目前にせまって美しさにめまいがするほど



そして、こちらが私が見たかったパイプオルガン。
2階に上ったとき、ちょうど録音のリハーサル中でしたから、その音を聴くことができました。
いかにもプリンシパル系の明るい音で、一聴しただけで、素晴らしいオルガンだとわかるほどでした。
d0116009_02400727.jpg
よく見ると、
d0116009_02413745.jpg
唄口に人が描かれているんです。空気が出入りする場所が口になっているなんて、素晴らしいでしょう!
一見ユーモラスなんですけど、それだけでは片付けられない強いエネルギーを感じます。

こんなものが作られるというのはただ事ではないです。このパイプオルガンを見ているだけで、教会と音楽とが人々の生活に深く刻み込まれているこの町について、もっと知りたいと思わずにはいられません。

メキシコのめくるめく聖堂の話、またそのうちに。





とらきつね on Facebook 随時更新中です。

唐人町寺子屋の新しいオフィシャルホームページはこちらです。

入塾希望の方、お問い合わせの方はこちらの「お問い合わせフォーム」を通してご連絡ください。

by terakoyanet | 2017-11-21 02:53 | 好きな場所 | Trackback | Comments(0)
2017年 11月 14日

モンテ=アルバン遺跡 sanpo

メキシコ最終日の早朝に、古代アメリカの祭祀場、モンテ=アルバン遺跡に。

古代遺跡やマヤ・アステカの遺跡は旅のテーマ〔メキシコのバロック〕から外れるし、あまり興味もなかったので行かないつもりだったのですが、良い天気に誘われて急遽行くことに。

d0116009_11481355.jpg
d0116009_11562094.jpg
小高い丘の頂上にある遺跡は想像を超えて気持ちのいい場所でした。
古代アメリカ文明の最たる特徴をなす天文台もしっかり残っていました。
ここなら確かに宇宙人と交信できますね。
d0116009_11482532.jpg
d0116009_11484159.jpg




by terakoyanet | 2017-11-14 11:58 | 好きな場所 | Trackback | Comments(0)
2017年 10月 11日

新しい旅のすすめ その2

テクノロジーの進歩によって私たちの行動の選択様式が変容を遂げたいま、旅の方法にも大きな変化が生まれています。Google MapやGPSに依存した新しい旅のかたちは、そんなのは本来の旅じゃないと揶揄されがちですが、しかし、新しい技術を自分ができる範囲で存分に使いこなしながら、新しい旅のかたちを発見していくというのは、存外に楽しいものです。

昨年オスロに行ったとき、私はこの街について事前に何も下調べをしていなくて、ムンクの絵とオペラハウスさえ見たら、あとはのんびりと近くの低山を歩きたいと思いました。そのときに活用したのはグーグルマップです。
d0116009_08143438.jpg
d0116009_08094404.jpg
d0116009_08153917.jpg
どんな湖かわからないけれど、とりあえず地下鉄で〇〇駅まで行けば、徒歩10分で湖に着くらしい。
そしてその湖とそこから西に5kmのこの湖の間に細い道がある。これ、トレッキング用の道じゃないかな。
さらにその湖からは登山道っぽい道がある…。

何の確証もない状況で、グーグルマップだけを頼りに歩き進めていくと、ピカピカに磨き上げたような鏡のような透明度の湖があったり、ちゃんと整備された道が確かにそこにあって人が楽しげに歩いていたりして、初めての場所なだけに緊張感がありつつも、それがいやでもほぐれてしまう瞬間というのがあって、それがとてもかけがえのないものに感じられるのです。
d0116009_08293154.jpg
この日は結局、地下鉄の料金を払っただけで、そのあとはグーグルマップを頼りにオスロ市内を一望する低山のてっぺんにたどり着いて、ガイドブックがなくても存分に楽しい時間を過ごすことができました。
(そのあと地球の歩き方やロンリープラネットなどのガイドブックを見ても、この美しい低山のことは全く載っていなくて、まさにグーグルマップが運んでくれた縁なのだと感じました。)



先月、アメリカとメキシコを訪れたときは、Uberをさかんに活用しました。
Uberは、海外を訪問する人たちにとっては革命的なアプリです。
乗車場所、降車場所を予め指定できるし、支払いはすべてクレジット決算だから、これまでのタクシー利用に比べて圧倒的にストレスフリーです。
d0116009_08392890.jpg
海外に行くときには身の安全の担保が課題になると思うのですが(特に女性は)その意味でもUberはあまりに革命的発明です。メキシコはこれまでタクシーは危険だと言われ続けていました(もともと言われすぎだったと思います)が、長年、国が総がかりで対策を講じても達しえなかった安全性への懸念を、Uberというひとつのアプリが、経済や治安の問題をある意味で飛び越える形でひとつの解決の道しるべを示したということは、手ばなしですごいことだと思います。

ただし、Uberが万全というわけではありません。乗車場所が大きな施設の場合には、待ち合わせがうまくいかなくなるときもありますし、キャンセル料のリスク等もあります。また、小さな町にはドライバーがいないので、そこまで行けても帰れないなんてこともあります。またネットが不安定な場所、繋がらない場所では、Uber自体が使えなくなるので、それに頼ろうとしていた場合、途方に暮れることもあるでしょう。
d0116009_09095126.jpg
メキシコシティではタクシーは一切使わずにUberに頼りきり


新しいテクノロジーによってどんどん便利になり、新しい旅の可能性が広がっていきます。でも一方で、どれほどに便利になろうとそれで万全ということには決してなりません。自分がいる場所の環境を思い通りパーフェクトにコントロールすることなんて土台無理なことですし、何よりも、変化しやすい自分自身の身体そのものに万全を期待することができないのです。しかし、だからこそ私たちはいつまでも旅を楽しむことができます。どれほどに新しいテクノロジーにより、旅の可能性が広がろうとも、一寸先の未来は誰も手中にできない。だからこれからも旅は続きます。


今日は旅の達人、石川直樹さんがとらきつねに来訪します。
石川さんは、新しい道具を使うことに躊躇がない一方で、その身ひとつで自らの知恵自体を道具に変えて世界を横断してきた、柔らかい身体=思考の持ち主。とにかく楽しみです。



とらきつね on Facebook 随時更新中です。

唐人町寺子屋の新しいオフィシャルホームページはこちらです。

入塾希望の方、お問い合わせの方はこちらの「お問い合わせフォーム」を通してご連絡ください。

by terakoyanet | 2017-10-11 09:11 | 寺子屋エッセイ(読み物) | Trackback | Comments(0)
2017年 10月 09日

世界一幸福な町、サンミゲル・デ・アジェンデ

メキシコ中部に位置する世界遺産の町、サンミゲル・デ・アジェンデは、世界一幸福な町、そんな言葉も決して大げさとは思えないほど、多幸感に溢れた場所でした。

d0116009_12221324.jpg
日曜日は町中はたくさんの人たちで賑わいます。

d0116009_12225802.jpg
d0116009_11173272.jpg
d0116009_12262974.jpg
d0116009_12331219.jpg
d0116009_12335103.jpg
d0116009_12344585.jpg
d0116009_12350573.jpg
どこに行っても、町の人たちがみんな自然にフレンドリーであたたかくて、すごく居心地がいいんです。
d0116009_11244328.png
この町で考えたことは、以前こちらのページに綴りました。「弱者を他者に仕立てること」
d0116009_12354666.jpg
d0116009_12363273.jpg
d0116009_12365538.jpg
d0116009_12371337.jpg
訪れたのは、9月最初の日曜日。
この日にこの町で結婚式を挙げた4人の花嫁を、町の人たちみんなで祝福しています。

この世にこんなに幸せな夜があるなんて。
d0116009_12374299.jpg
街角を歩けば聴こえてくるマリアッチ。
メキシコ音楽を聴くたびに、やっぱり音楽は技術じゃないよね、パッションだねー、パッション最高、と心でつぶやきます。
d0116009_12380886.jpg
サンミゲル・デ・アジェンデ。いままで訪れた場所の中でも特別に心に刻まれる滞在になりました。


とらきつね on Facebook 随時更新中です。

唐人町寺子屋の新しいオフィシャルホームページはこちらです。

入塾希望の方、お問い合わせの方はこちらの「お問い合わせフォーム」を通してご連絡ください。

by terakoyanet | 2017-10-09 13:23 | 好きな場所 | Trackback | Comments(0)
2017年 09月 20日

美しきプエブラ

d0116009_09490965.jpg
昨日、メキシコで再び大きな地震がありました。震源地はプエブラ市(Puebla)近郊。
メキシコシティでも大きな被害が出ているようです。

9月7日の地震の際には私が直前の6日時点でメキシコのオアハカ州にいることをSNS等でお知らせしていたために、多くの方からご心配のメールやお電話をいただきました。(私は6日の午前にメキシコから出国していました。) その際はありがとうございました。

被災地の1日も早い復旧を心から願っています。
美しい街プエブラ。きっとまた訪れたいという気持ちで、プエブラのことをご紹介したいと思います。

d0116009_10193451.jpg
d0116009_10210614.jpg
プエブラ大聖堂



メキシコは建物の壁画が楽しいんです。プエブラは煉瓦とタイルの街。
d0116009_10251041.jpg
d0116009_10255320.jpg
土曜のマーケットで見つけたレタブロ(ブリキ絵/メキシコの奉納画)



プエブラは、メキシコ有数の美食の街としても知られています。メキシコのランチの時間は14時くらいから。その時間に合わせて、美味しいレストランがひしめくプエブラの街の中でも、地元の人たちに特に長く愛されている"Fonda de Santa Clara"に行きました。
d0116009_10320243.jpg
これ、なんだかわかりますか? こちらはプエブラ名物のモーレ・ポブラーノ(Mole Poblano)。
柔らかい鶏肉の上に、チョコレートとスパイスがブレンドされたソースがたっぷりかけてあって、それをチリペッパーが効いたピラフに絡めて食べる、云わばチョコレートカレー。これが絶品なんです!
d0116009_10391221.jpg

プエブラは、陶器の町としても知られていて、店内の壁にもたくさんタラベラ焼のお皿がかかっていました。
d0116009_10442792.jpg



そして、プエブラにも、目が眩むようなメキシコバロックの美しさを知ることができる聖堂があります。
d0116009_11130070.jpg
サント・ドミンゴ教会

d0116009_10575690.jpg

聖堂に入り、奥に足を進めていきます。
d0116009_10590080.jpg


そして、レタブロまでたどり着いたとき、その左手に現れるのが、ロサリオ礼拝堂です。
d0116009_11141159.jpg
d0116009_11190019.jpg
採光窓の効果もあり、まさに天使が下りてくる場所という神々しさに包まれていました。


偶像を禁止したイスラム教が作ったアラベスクに、キリスト教の天使の顔と、古代宗教の生命の象徴であるトウモロコシが合体したところにメキシコが凝縮されている。

『極彩色メキシコ巡礼』を著した小野一郎さんは、本の中でこの礼拝堂について、そう評しています。
メキシコの聖堂の面白さは、ただでさえカトリックとイスラームの文化が融合しているスペインの建築が、メキシコに入ってきて現地の人たちの生活感情と結びついて、さらに独自の発展を遂げたところにあります。


プエブラから30㎞余り北に進んだところにある、トラスカラ(Tlaxcala)市のすぐ東隣に位置する丘の上にある町オコトラン(Ocotlán)の聖母マリア聖堂、ここにもすさまじいメキシコバロックが存在します。

d0116009_11554756.jpg

聖堂を真っ直ぐ進んで、レタブロの右下部分に隠し扉のような入り口があり、そこに入ってさらに左手に進むと現れるのが、この聖堂の礼拝堂カマリンです。

私はそのとき聖堂内にいた神父が倒したマイクを立て直してたまたま好印象を与えた⁉こともあり、たまたま入って見せてもらえましたが、いつもこの礼拝堂に入れるのかどうかはよくわかりません。
d0116009_12315391.jpg

それにしても、この礼拝堂は、眩すぎて視点が定まりません。
隙間なく埋め尽くされた装飾と聖人たち一つひとつを見てもそれぞれにすごいのですが、それが一斉に視界に入るときに、何というか、人間の魂の蠢きをそのまま目の前に開け広げられたような、空間を乱射するエネルギーに圧倒されてしまい、身動きが取れなくなるような瞬間がありました。とんでもない場所です。
d0116009_12323242.jpg
d0116009_12350079.jpg

メキシコのあの深い祈りの場所を思い出しながら、これ以上多くの人々が苦しまずにすみますようにと祈っています。




とらきつね on Facebook 随時更新中です。

唐人町寺子屋の新しいオフィシャルホームページはこちらです。

入塾希望の方、お問い合わせの方はこちらの「お問い合わせフォーム」を通してご連絡ください。

by terakoyanet | 2017-09-20 12:29 | 好きな場所 | Trackback | Comments(0)
2017年 09月 12日

メキシコのゴシック聖堂①トラコルーラにある聖母の被昇天教会

若いころより旅が楽しくなった。そう感じるのは、旅の焦点が絞られてくるからではないでしょうか。
自分の興味の対象を心の深いところで理解して、それを羅針盤にして動いてみる。そうやって新しいものに出会うという楽しみ方は、年を重ねた人のほうがきっとうまくいくのでしょう。

私の今回の旅は、工藝風向さんでメキシコのブリキ絵に出合い、小野一郎氏(尾形一郎氏)の「極彩色メキシコ巡礼」(晶文社)を読む機会に恵まれなかったら、実現していたかどうかは疑わしいものです。そうやって、自分が出合った人やものに導かれ、自分がカトリックの家に育ったという過去の境遇と、現在の出合いの経験とが撹乱し、それによって生じた熱量に導かれた形で実現したのが、今回のメキシコ訪問でした。


d0116009_09153157.jpg
聖母の被昇天教会にある聖クリスト礼拝堂



予備知識を携えて出かけたはずなのに、メキシコのゴシック聖堂に圧倒され、魅了される旅になりました。
メキシコの聖堂は「祈り」の空間そのもので、その祈りの深さに、度々心を揺さぶられることになりました。

d0116009_09230548.jpg
d0116009_09233463.jpg
d0116009_09343908.jpg
d0116009_09391503.jpg
受難のモチーフが多用された聖像たちはグロテスクですらあります。
しかし、その聖像たちを見たときに、私はこの祈りの強度をいつか確かに感じたことがある、そう気づかされました。どうしようもなく深い親近性が心の奥底からふつふつと湧き出てきたことを忘れることができません。

カトリックの数ある教えの中で、メキシコのこの地の人たちの心を捉えたのは、やはりキリストの受難です。
命を賭して人間に救いをもたらしたイエスの苦難は、苦しめば苦しむほど霊的な存在になることができるというメッセージを人々に与えました。切り落とされた自分の首を持つ聖人像は、自己犠牲の最たる姿を表すものでしょう。

カトリックは、北アメリカの古代信仰を否定する形で受容されたのではなく、古代信仰の分厚い地層の上に積みあげられる形で、この地で受け入れられました。カトリックの教会堂はしばしば古代遺跡の基礎の石盤の上に建てられているし、それらの遺跡の石がそのまま教会堂の建築に利用されています。

聖堂の血なまぐさい聖像たちは、アステカ時代の自己犠牲や生贄のデモンストレーションの残滓であり、同時に、カトリックと植民地支配を受容したこの地の人々の苦難をイエスの受難に託した姿そのものです。それはあまりに苛烈な表現であり、本来、祈りというものがいかに凄絶なものであるかということを、いま一度思い知らされるものです。
d0116009_10594967.jpg
しかし、この聖堂から祈りの苛烈さだけを抽出して読み取るのは、人々の暮らしを見る目をむしろ誤らせてしまうことになるでしょう。メキシコのブリキ絵を見ていると、ささやかな日々の暮らしの中に祈りがあること、神への信仰と周囲への愛情が穏やか結びついていることを感じさせ、温かい気持ちになります。
d0116009_10420367.jpg
今回ご紹介した聖堂があるトルコルーラは、オアハカ市から車で50分ほど東に進んだところにある町で、日曜日には大きなマーケットが開かれることでも知られています。
d0116009_11004750.jpg
メキシコのゴシック聖堂の記事、旅の記憶が消えていかないうちに、改めて書きたいと思います。



とらきつね on Facebook 随時更新中です。

唐人町寺子屋の新しいオフィシャルホームページはこちらです。

入塾希望の方、お問い合わせの方はこちらの「お問い合わせフォーム」を通してご連絡ください。

by terakoyanet | 2017-09-12 10:53 | 好きな場所 | Trackback | Comments(0)
2017年 09月 04日

弱者を他者に仕立てること

昨年、ノルウェーのオスロを訪れたときに驚いたのは、路上生活者の数の多さである。街中を歩いていると、夏でもひんやりする空気の中に、表情に乏しい大柄な男性たちが座っている。初乗り550円の地下鉄の改札を多くの人が次々とくぐり抜けるすぐ隣に彼らが佇んでいる姿を見たとき、世界最富裕国ノルウェーという無意識の期待感に冷や水を浴びせらた気分になった。しかし、ノルウェーと言えば、世界に名だたる社会福祉先進国である。さらに、一人当たりのGDPは日本の2倍を超える数字であり(これは、バブル期に一人当たりのGDPで世界トップ3に入った記憶を残している人たちにとってはいささか衝撃的な数字である)世界最富裕国という称号に、数字上の偽りはない。

日本では10年前、20年前より、路上で生活している人たちを見ることが随分少なくなった。あのとき地下鉄にいたおじさん、おばさんたちはいまどうしているんだろうと考える。日本の路上生活者は統計上でも減少しているそうだ。それには支援団体の努力のおかげもあるだろう。しかし、日本の高齢化と貧困化はかつてより悪化しているのではないか。貧困する社会の中で、路上生活者の数を減らすことに一体何の意味があるのか。私は世界最富裕国の首都を歩きながら考えた。

私はいまメキシコの世界遺産の街、サンミゲル・デ・アジェンデにいる。メキシコで最も美しいと言われる、スペインのコロニアル建築に埋めつくされたこの街にも、路上で生活する人たちをあちらこちらで見かける。
昨日の夕方は、ある老夫婦らしき二人が路上に座っていた。擦り切れたカセットテープのような輪郭に乏しい音楽が小さなラジカセから流れていて、老父は弦が3本しかない小さなギターをその音楽に合わせるように1本ずつ弾いており、老婆の方は、その隣で左手の肘から上だけを動かしてマラカスを鳴らしながら、右手にはお金を入れてもらうための小皿を抱えていた。演奏には何の技巧もなく、そこには貧しさだけがあるように見えた。

しかし、貧しい二人は、そのとき確かに街に包まれていた。多幸感に包まれるその街に、彼らが存在していることに矛盾はなかった。彼らは間違いなくそこにいてもよい存在であり、だからこそ彼らの拙い演奏は、街の音に心地よく紛れていた。

日本で路上生活者の問題を語るときに余所余所しさがつきまとうのは、彼らがはじめから私たちの仲間ではないからだ。弱者ははじめから存在を否定されていて、その否定自体は省みられることなしに、それを解決すること、抹殺することに力が傾注されている。ユニバーサルデザインという言葉が踊る中で、まん中に手すりをつけるベンチがたちまちに広がる世の中の本体、そして、弱者を他者に仕立てようとする自分自身の本性について、深く考えさせられる滞在になりました。


d0116009_17551197.png

d0116009_18265435.jpg

とらきつね on Facebook 随時更新中です。


唐人町寺子屋の新しいオフィシャルホームページはこちらです。

入塾希望の方、お問い合わせの方はこちらの「お問い合わせフォーム」を通してご連絡ください。

by terakoyanet | 2017-09-04 15:20 | 寺子屋エッセイ(読み物) | Trackback | Comments(0)