寺子屋ブログ by 唐人町寺子屋

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2017年 06月 14日

ローマのサン・ジョバンニ・イン・ラテラノ大聖堂

ローマの三大バジリカ、サン・ジョバンニ・イン・ラテラノ大聖堂。国東出身のペトロカスイ岐部は、3年もの年月をかけてローマに辿り着き、この荘厳な聖堂で司祭に叙階された。
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その後、彼が凄絶な殉教を遂げるまでの話は遠藤周作が幾度か描いた通りである。すでに「転んで」いたフェレイラ(沢野忠庵)に棄教を迫られても揺るがず、穴吊りになっても他の信徒を励まし続けたために、とうとう穴から出されてしまうなど、殉教者たちの中でも特に強靭な精神の持ち主だったことが知られる。
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「沈黙」から13年も経過した後に「銃と十字架」でペトロ岐部の生涯を描いた遠藤の内面について考える。「沈黙」に比べるとドラマ性に欠ける「銃と十字架」。でも一方でペトロ岐部の苦しみの生涯に、ただひたすらに寄り添おうとする筆致には迫力がある。
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ローマでの体験が、ペトロ岐部の強靭な生の支えになったことは疑う余地がない。彼の心の中の神は決して沈黙しておらず、最期の瞬間まで生き続けた。きっと彼は神を見たし、神を知っていたのではないかと思う。
そのことは私にとって、驚異であり、大いなる謎である。遠藤もこの謎を自らの掌に手繰り寄せたかったのではないか。そんなことを想像する。
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ローマのバジリカの中に座っていると次々に私と対話しようと近づいてくる人たちが現れては消えていった。そして、ペトロ岐部もそのうちの一人だった。

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by terakoyanet | 2017-06-14 09:28 | 好きな場所 | Trackback | Comments(0)
2017年 05月 28日

ウブドの散歩道、チャンプアンリッジウォーク

チャンプアンリッジウォーク(Campuhan Ridge Walk)はウブド周辺の数ある散歩道の中でも特に美しいことで知られていて、さっきまで居た町中の喧騒が嘘のように気持ちの良い風が吹いています。午前中の散歩がオススメです。

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東浩紀の新著『ゲンロン0』を読んでいます。「観光客」という軽薄な存在の捉え直し。とても面白いです。全部読んだ後にお話しできればと思います。


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by terakoyanet | 2017-05-28 09:23 | 好きな場所 | Trackback | Comments(0)
2016年 12月 13日

坂口恭平 × 田北雅裕 トークライブ(11/23) 参加した方々のご感想

11月23日に行われた坂口恭平さん、田北雅裕さんのイベント。
第1部は田北さんによる「ふりかえり2016」、第2部は坂口さんの「現実宿り」出版記念トークライブが行われました。

奇跡のような凄まじい時間で、いまだにその日の印象が鮮烈に残っています。

そのときの参加した方の感想を以下にご紹介させていただきます。(掲載のご了承をいただいています。)



遅ればせながら、23日祝日夜のとらきつねさんでのイベント。

田北雅裕さんのお話
田北雅裕さんと坂口恭平さんのトークライブ
坂口恭平さんのお話とライブ

濃い濃い時間でした。

田北さんのお話、丁寧でとてもわかりやすくて、まだまだ聞きたいことたくさん!

坂口さんは、驚くほどの早口で、スピードラーニングかと思いました(笑)

天才なんだ、この方は。

でも、お話は尖っているようで、実はすごくあたたかく、真面目に感じました。

お母さまが子どもに感じて欲しいことを暗号のように生活の中に散りばめられていたお話や、各々がイメージする、例えば風景でも、それはある意味で「現実」で、しかもそれは個人的なものだけでなく、他の人達と共有することも出来る、というようなことに、改めてなるほど、と思ったり。

そして、それぞれが自分を惜しみなく出していくようになるこれからの世の中、きっとこんな天才的な人は、増えていくんだろうな、と思ったり。
そうすると、もう、天才、とか、しょうがい、とか、カテゴライズしていきようがなくなるんだろうな。

人と人は出会い、話し、触れる。
それで何が生まれるか。
幸せに向かっての知恵や行動。
うまくいかなかったり、悩んだ時に見守られる存在。

今ある自分は、自分で大きくなったように見えて、常に誰かの影響を受けたり、誰かの言動で心を揺さぶられたりして形作られていて、それは自分の好きな人達だけでなく、嫌いな人達からもちゃんと影響を受けている。

それを実感すると、必要のない人間とか出会いとかは、ない。

そして、私は、つい、こんな風に大人になった素敵な人達を育てたお母さん、家族の環境に興味が湧いてしまう。

イベントの前のミニマーケットで買った花屋マウンテンさんのドライフラワーとミニリース。
生花は枯らす「火の手」の私にも、ドライフラワーなら!という一抹の期待。

花屋マウンテンさん、すごく丁寧に、お花を愛おしむように包んでくださり、その姿に何だかすごくあたたかい気持ちに。

普段乗らないバスで帰ったら、確認したのにまさかの乗り間違いで、自宅近くから雨の中15分ほど歩いて帰宅。

ものすごい熱量のイベントだったので、頭冷やすのにちょうどいいってことかなぁ。

ドライフラワーが濡れないように…と気をつけて帰って、紙袋からお花を出した後に気がついた花屋マウンテンさんのロゴマーク!

かわいい…


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田北雅裕✖️坂口恭平 ふりかえり2016 @とらきつね トークイベントに行って来ました。

坂口さんの予言(?)のとおり、久々に興奮し過ぎてすぐには寝れないだろうという状況で帰路に着きました。
クールダウンせねば、インプット量が多すぎたのでアウトプットしなければ、と幼なじみの店に寄ろうとしたけどあいにくのお休み…
仕方がないので家の周りをドライブして帰り着いたらダンナがまだ起きてるよ…
何もやましいことはないのに、なぜか後ろめたい気分にさせられました。

ということで、ここにアウトプットしている次第。

以下雑感…
坂口さんのお話が若干キョーレツ過ぎて刺激が強めだったけれど、高校生も何人かいるなかで、それぞれがお話や音楽を聞いて楽しんで、それぞれ何かしら自分の中で咀嚼して落とし込んでいる感が伝わってきて、素晴らしいなと思ったこと。

坂口さんと田北さんが初対面であり、まずもって佇まいからして真逆な印象であるのにもかかわらず、真面目なお人柄の田北さんが、坂口さんのまるでお父さんであるかのように、共通点を見出して分かりやすくトークを進めてくださっているのに感動してしまったこと。

お話の内容としては田北さんの場合、杖立温泉に移住なさった後の取り組み、今の地域おこし、町おこし、またはまちづくりにおいて普遍的なテーマであり、基本的なテーマである、昔から町に住んでいる人たちへの新参者としてのアプローチの仕方、コミュニケーションの手段をお話してくださったこと。お話なさっている以上にご苦労があったと推察しました。
これはまちおこしに限らず、社会と家族のあり方へのアプローチでもあることを、社会からの孤立という視点から相模原の障害者施設の事件を通してお話してくださいました。
それから、SOS子どもの村ジャパンにおける取り組み。実は一番聞きたかったところでもあったのだけど、時間の関係上短くなってしまったので刊行誌を購入。後でゆっくり読みたいと思います。
一番印象に残ったというか、目からウロコだったのは、自立と依存は反対語ないし反対の概念ではないというお話。自立というのはたくさんの小さな依存によって成り立っているものだということ。すごく腑に落ちるお話でした。

坂口さんは…掻い摘んで言うなら…5次元と6次元のお話。躁状態の疾走感と高揚感。これ以上はお腹いっぱいです、勘弁してください(笑)
お支払いしたお金以上の、まさに宝寿、宝をおみやげにたくさんいただいた気がします。またこうして文章におこしてみると、宗教ぽくて怪しさ満載なのだけれど(笑)
高校の教科書にも載るほどの歴とした作家さんです。
まあ、高校の教科書に載ったからってどうなんだって、ご自分でもおっしゃってましたが。
すごくご自身も含めて生きづらさを感じるけど、それと同時に大丈夫だよって励まされてるような気にもなったし、もっと残りの人生出し惜しみせずに勉強してみようと思えるお話でした。
なんか、小学生の感想文みたいになっちゃったけど…本当に行ってよかったです。

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昨日の坂口さん効果が一夜明けてもまだ覚めやらない今日。本当に生きてる覚醒材ですよ。人剤ですよ。財かもしれない。ヤバい。
だけど同時に田北さんのお話が現実としっかり結びつけてくれている。田北さんもスゴイ。
あれだけすごい情報量のことを喋っているのに、全く論理破綻がないって…天才としか表現しようがないです。
聴いてるこっちも命がけ(笑。
帰ってから頭痛がして、知恵熱出すかもと怯えるくらいでした。
弾丸トークの一方で、あの伸びやかな歌。緩急激しいジェットコースターみたいな…
だからなぜか心地良い疲労感。坂口さんに言われた通りお風呂に浸かったら頭痛も治りました。

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田北雅裕さんと坂口恭平さんのトークイベントへ。とらきつねさんは福岡来て気になるお店のインスタ一斉フォローした時に知ったお店でいつか行きたいなあと思ってた矢先いきなりトークイベントのお知らせがアップされて即予約して。坂口さんのtwitterだと気付いた時点で満席告知だったのでほんと奇跡。

田北さんは申し訳ないことにほんとに知らなかったけど紹介のあった活動全て気になりすぎた。まちづくりのことや家族のあり方のこと。大学の時にあんなにありふれていたテーマばかりでちゃんと学んでおけば良かったと今更思ってしまった。田北さんは淡々とお話しされるイメージだったけどそこには想いがぎゅっと詰まっていて何度も感動した。面白いお話がたくさん聞けてよかった。

坂口さんは思えば1年ぶり。twitter復元後からやばいだろうなあと思ってたけど案の定スーパーぶっ飛び状態だった。今まで数々のイベントに行ったけどダントツ1位だったなというか私が一気に坂口恭平にぐわーってなったニコ生の宮台さんとの対談の時ぐらいぶっ飛んでた。汗流れるほど笑った元気もらった。歌もうたってくれて超贅沢時間。
福岡でみれてほんとに嬉しかった〜。なんかもう私の甘甘の感情による最悪とか絶望とかそんなくだらない状態は簡単にとっぱわれて私は私の生活をちゃんとする。ちゃんと生活することをがんばる。




その日の熱量が臨場感たっぷりに伝わってくる感想。
感想を書いてくださった皆さんに、ありがとうございました、と書きかけて違和感。
皆さん、きっと感じたことを書きたいから書かれただけですよね。

書かずには語らずにはおられない分厚いエネルギーが、その日、会場には宿っていました。


当日のイベントのはじめの挨拶で、私はある生徒の話をしました。
自己否定感に苛まれているある子の話。

その話をしていたとき、坂口さんは会場に入っていなかったので(トイレに行ってた?)私の話は聞いていなかったはずなのですが、トークライブが終わったあと、とらきつねの外に出てみると、坂口さんとその子が話していて、坂口さんが「君いいね~」と言っている場に遭遇。びっくりしましたが、あとで彼に聞いたところによると、彼は世間の「常識」「一般」の成り立ちについて坂口さんに話していた模様で、それに坂口さんが感心した、という現場だったようです。坂口さんが彼を「発見」してくれたことに感謝。家に帰ってきた彼をみて、お母さまは、彼の頭から火花が散っているのが見えたそう。参加した皆にとってかけがえのない時間になりました。
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当日の坂口さんの歌「春のせい」の一部をアップしました。それにしてもいい歌です。



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by terakoyanet | 2016-12-13 09:36 | とらきつね | Trackback | Comments(0)
2016年 11月 19日

田北さん、坂口さんと、橙書店のこと。

今回のイベントの第1部では、2016年を振り返るトークが行われます。今年、私たちが共有した出来事の中で、最もインパクトの大きかったもののひとつとして、そして未だにインパクトを与え続けているものとして、熊本の地震が挙げられると思います。

今回のイベントのゲスト、坂口恭平さんと田北雅裕さんは、ふたりとも熊本にゆかりのある方々。そして熊本には、おふたりが時を隔ててクロスした場所があります。

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橙書店。村上春樹氏が朗読会を開いたことで、多くの人が知ることとなったこの小さな書店は、地震の影響で移転した今も、無骨ながらも清涼な瑞々しさを湛えた熊本の文芸の拠点として、近所の人たちが穏やかな時間を過ごすことができる憩いの場として、日々大切に運営されています。

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店主の田尻さんが見せてくださったのは、橙書店の開店当初につくられた、素朴な佇まいのしおり。「これ、田北さんが作ってくださったんですよ。」しおりには、開店当初の息遣いそのものが綴じ込められているようで、そこに書かれた文を読んでいると、フォントが軽やかなダンスを踊っているように浮かび上がってきます。

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*こちらの画像だけ、instagramでyanoa21さんから許可をいただいてお借りしました。田尻さんにも許可をいただいています。


坂口恭平さんは、今回の移転にあたり、看板やドアの「橙書店」の文字を書いた人。そして橙書店は、坂口さんを世に送り出した沢山の書籍が生命を得た場所でもあります。坂口さんは橙書店の隅の小さな部屋で、どんなに苦しい内容のときでも軽やかに踊っているあの文体を生み出したのです。

時を隔てて橙書店という小さな場所で交錯したお二人の邂逅の場となる23日のイベント。楽しみにしたいと思います。

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とらきつねでは、橙書店さんが発行する文芸誌「アルテリ」をお取り扱いしています。

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アルテリは現在第2号まで刊行されており、坂口恭平さんは、第2号の冒頭で美しい短編「避難所」を発表されています。これを読むだけでも、アルテリを買う価値ありです。



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by terakoyanet | 2016-11-19 00:41 | 寺子屋エッセイ(読み物) | Trackback | Comments(0)
2016年 09月 29日

やる気は必要ない

いまFBを見ていたら、脳科学者の茂木健一郎さんの今朝のつぶやきが流れてきて、とても興味深いことをおっしゃっていたので、そのまま引用します。(*もし問題があればご指摘ください。)


時々受けるご質問に、「やる気がでない」「どうしたらやる気がでますか」というものがある。それに対する私の答えは、ちょっと意外なものである。それは、「やる気は必要ありません!」「やる気がでないを、言い訳にしないでください!」というものだ。

もちろん、「夢」はあった方がいい。「目標」もあるにこしたことがない。しかし、日々の仕事、営みにおいては、「やる気」は必要ない。むしろ、淡々と、フラットに、アップもダウンもなく、続けていく方が良い。

例えば、10年かけて実現する「夢」があるとする。夢を抱いたその出発点は、感動があったり、意外な出会いがあったりするのかもしれないけれども、そのあとの10年間は、基本的に日常の連続であるはずである。

毎朝起きて、今日もまた淡々と作業をする。その過程で、「やる気」という、特別なものは必要ない。むしろ、常に、「今、ここ」に没入して目の前のことをこなしていくのであって、それ以上でも、それ以下でもない。

逆に言えば「やる気」がでないという人は、それをやらないことの言い訳にしているにすぎない。「やる気」というのは、それがあるから行動できるのではなくて、行動しないことの言い訳として、「やる気」を持ち出しているだけの話なのである。

何かに取り組んだり、行動したりするのに「やる気」は必要ない。そう気づけば、ずいぶん気が楽になるだろう。また、「やる気」がないことをを言い訳にして何もしないでいる自分にサヨナラできるだろう。「やる気」は必要ない。さあ、今日も、「やる気」など関係なく、目の前のことに取り組みましょう。




「やる気」は必要ない。
この逆説的な言葉は、例えば、いま大切な試験直前で、それに追い詰められて「やる気」になっている人たちに向けられているものではなく、日々の生活の中で「やる気」という切迫感を持てずに、自分の「やる気のなさ」を持て余している人たちに向けられている言葉です。

「今、ここ」に没入して目の前のことをこなしていくのであって、それ以上でも、それ以下でもない。

やる気があるかないかは置いておいて、とりあえず、今、動いてみるんです。
私の「今」の身軽さに気づいたあなたは、小さな驚きとともに、目の前の作業にすっとのめり込むことができるかもしれません。

「やる気」が入りすぎると、弊害もあります。
それはいつか燃え尽きてしまうかもしれないのです。
「やる気」というスイッチが入っていたことを自覚した人ほど、そのスイッチが切れると、とたんに動けなくなるのです。これが「やる気」の逆説です。

日々、淡々と作業をこなしていく。
これにかなうものはきっとないのでしょう。



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by terakoyanet | 2016-09-29 07:27 | 寺子屋エッセイ(読み物) | Trackback | Comments(0)
2016年 09月 21日

新しい旅のすすめ その1

村上春樹氏が朗読会を開いたことでも知られる、熊本の橙書店が刊行している「アルテリ」第2号(2016年8月31日発行)の巻頭に、坂口恭平氏の美しい短編『避難所』が掲載されている。この物語の中で、「わたし」は、熊本地震の影響で妻の実家の横浜に避難し、さらに妻と気まずくなり東京の知人宅へと二重に「避難」している。熊本から避難してまもなく2カ月が経過しようとしているある日、娘の「ナオ」がわたしを訪ねてくる。ナオは地震以来、音や振動に極度の恐怖心を抱くようになっていて、わたしはそれを自分のことのように不安に思っている。そんな不安な二人がわずか2時間だけいっしょに公園に行き、共に時間を過ごすことになる。「遊具で一緒に遊びたい」と言うナオに対して、わたしは「ここで見てるよ」と言う。ナオは「嫌だ。一緒に遊びたいもん。」とそれでも食い下がる。それに対してわたしは「でも、パパも嫌なんだよ。」と応じる。
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ここに描かれているのは、親子、というよりは、あまりにフラットな人間間の対話である。「わたし」は、親であっても決して子を「所有」することはできず、親と子はどこまでも非対称であることを直観的に知っている冷徹な人である。愛する我が子を見るときに、その存在と存在の隔たりがいつでも悲しく目に映る人である。もし「わたし」の言動が子供じみて見えるとすれば、それは、「わたし」が私たちが普段目にする親子のヒエラルキーに依拠していないからである。

「だって、誰かに遊びかた決められているみたいで退屈なんだよ。」わたしはなぜ遊具で遊ぶのが嫌なのかをナオに話したあと、いっしょに「木登り」をすることを提案する。ナオの目の前で7,8mの高さを登る私。そして「やめて。」「パパ、落ちそうで怖いよ」と叫ぶナオ。「また不安になってきた」とつぶやくナオ。
でも怖くて不安だけど、おもしろそう、わたしの木登りを見てそう感じたナオは、自ら木を登る練習をする意思を示し、半泣きになったり怒ったりしながらも、わたしの力を借りて、なんとか低い枝の上にまたがる。そして降りるときに怪我をするも「痛くない」ことを発見し、次は自力で登る意思を示し、次は自力で低い枝に登りきる。

登り切ったあとナオは「不安じゃない、怖いのに、痛いのに、不安じゃない」と言う。わたしも、「怖いけど、痛いけど、面白い。それほんとに大事だから。」そう答える。最後の場面で二人は、雲ひとつない空の下で、木の上の家でもつくろうか、そんな話をしている。そうやってこの話は静かに終わってゆく―。

『避難所』は5分もあれば読める短い小説。そのあらすじをわざわざここに書き連ねたのは、他でもなく、私がいまから書こうと思う「旅」の醍醐味はまさに、この小説の最後のほうに出てくる言葉、「怖いけど、痛いけど、面白い。」これに尽きると考えるからだ。

私自身これまで多数の国・地域に行きながら、一度も旅行会社のパックツアーに参加したことがなく、(参加したことがないのに言う資格はない、そう言われそうだけど)パックツアーは、「誰かに遊びかた決められているみたい」で嫌だから、いつも自分で全てを手配して、自分で旅をつくるようにしている。先が見えず怖いけれど、でも本来、安心というのは、上の小説のナオがそうであったように、はじめからそこに行けばあるものではなくて、自分でいろいろと試す過程で勝ち取っていくものではないだろうか。その意味では日本国内における外国をいたずらに怖がる風潮は、その多くがよくわからないものを直視できないときに起こりがちな、ごく一部の特殊な例を肥大化してとらえてしまうような、アレルギー的で強迫的な反応であり、それらの無根拠ともいえる反応によって、多くの人たち、特に女性の旅が抑制されている事実については、とても勿体ないことではないかとさえ思われる。(女性の旅にリスクがあることを否定しているわけではないが。)
怖さや痛さを伴いながら、それでも面白い、そのことを味わうことなくして、旅は成立しないとさえ思える。

(その2に続きます。)


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by terakoyanet | 2016-09-21 19:56 | 寺子屋エッセイ(読み物) | Trackback | Comments(0)
2016年 05月 08日

大切な本をご寄贈いただきました。

先日の憲法記念日に、2014年に書いた「憲法に関する最も基礎的な話。 」という記事を再投稿したところ、思いがけず、反響をいただきました。ありがとうございます。

この記事を読んだある保護者様から、お手紙とともに大切なご本を寺子屋のライブラリーに寄贈いただきました。ありがとうございます。


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井上ひさしさんは中学国語教科書でもずっと取り上げられていることもあり、このブログでもお話しをしたことがある(『握手』井上ひさし)のですが、不勉強のためこちらの本は読んだことがありませんでした。いわさきちひろさんの絵とともに、とても素晴らしいです。

本の冒頭に載っている「はじめに」の井上やすしさんの文章が震えるほど素晴らしい。
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*こちらの画像、パソコンで閲覧するのは問題ないのですが、一部のスマホ・携帯で見ると逆さまに見えるという怪現象が起こっています。申し訳ありません。

そのあとも、子どもでも十分に読むことができる内容です。

寺子屋のライブラリー(1F自習室)には1千冊を超える蔵書があり、在校生・卒業生・保護者様に無料で貸し出しを行っています。ぜひご活用ください。



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by terakoyanet | 2016-05-08 14:43 | 雑感・授業風景など | Trackback | Comments(0)
2016年 05月 05日

子どもの日の吉井の町と MINOU BOOKS AND CAFE

今日はふらっと吉井に行ってきました。(前の記事の原鶴温泉とともに)

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GW期間は「小さな美術館めぐり」と題する美しいイベントが開催中でした。
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小さな美術館をめぐることで、町内の素敵なお店たちを巡ることができるしかけ。
いろいろ素晴らしかったのですが、金子文夫資料展示館の「なつかしい生活雑貨展」は特に充実していました。とても楽しい散歩。
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そして、オープン当初からずっと行きたかった、MINOU BOOKS AND CAFE へ。
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いただいた、いちごのマフィンとシトラスサイダー、穏やかな味で最高でした。
そして、本のセレクトが、あれ、これ私の本棚じゃない?と思うくらいツボで、うなってしまいました。

いわゆるハウツー本などは置いていなくて、静かに考えることができる本、すてきな料理の本、私が大好きな山登りの本など。昨年とらきつねにお越しいただいた寺尾紗穂さんの本もちゃんとありました。

少しでも時間ができたらまた飛んでいきたい場所を見つけました。



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by terakoyanet | 2016-05-05 22:34 | 雑感・授業風景など | Trackback | Comments(0)
2015年 10月 02日

必読書『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』

『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』
すでにベストセラーですが、これは必読書です。

いまの安保法制の問題とか、原発とか、沖縄の基地問題とか、いろいろわからない、とモヤモヤしている方、右も左も関係なく、ぜひこちらを読んでみて下さい。日本の政治家たちが、何に忠義を尽くしているのかということが手に取るようにわかります。

分かりやすすぎて、いまの日本の状況を思いしらされすぎて、凹みますが、
私たちはここから始めるしかないんだなという現状を、しかと確認することができます。


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by terakoyanet | 2015-10-02 14:41 | 雑感・授業風景など | Trackback | Comments(0)
2014年 11月 28日

新世紀エヴァンゲリオン完結。

昨日、自宅に帰ってみると、新世紀エヴァンゲリオン(貞本義行)14巻がAmazonから2つ届いているという小さな惨事が。
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今回の最終巻は、発売前から複数の中学生たちが「いよいよ発売ですね」と小さな笑顔を浮かべて話してきたり、昨日は高1のKくんが、この新刊を読みながら塾にやって来て「危ないやろ」と注意を受けたり、注意を受けたことを踏まえてKくんは自宅に帰る時に一度帰りかけたのにかかわらず、「読みながら帰るのは危ないから」とエヴァを読むために教室の敷地内に戻ってきて、「家で読みよ!」と突っ込まれるなど小さな騒動が起こったりしました。


私たちの世代にとっては十代から続く青春のコミックスですが、まさか20年近くも経過したあとに、当時の自分と同世代、同世代以下の子どもたちとエヴァを語る日が来るとは思いませんでした。



マザコンと父殺しという、神話の定式を携えて完結を迎えたエヴァンゲリオン。

現代の新しい倫理の光を放つガッチャマンクラウズなどのアニメに比べると、なんとなく郷愁のようなせつない懐かしささえ感じさせますが、私(たち)の心を掴んで止まないその郷愁は、きっとこれからも時あるごとに、私(たち)の胸をきゅっと締めつけることでしょう。


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by terakoyanet | 2014-11-28 11:23 | 雑感・授業風景など | Trackback | Comments(0)