青田買い
2010年 01月 12日
福岡県の公立高校受験生の「青田買い」問題が1月5日に続き11日の西日本新聞朝刊に掲載されました。
私は正直この記事を初めて見たとき、「なぜいまになって問題化?」という印象を持ちました。
常態化している不正にスポットライトがあてられたときというのは意外さ、腑に落ちなさを感じるものです。
県立高校に部活推薦で入学する生徒たちが本校にも毎年のようにいます。
そのなかにはもう内々定をもらっている生徒がいたこともあります。(ちなみに今年は複数の中学から生徒が通ってきていますが、そのような子は1名もいません。)
ある進学校に内々定をもらったある子は、自分がこの高校に合格できるほどの学力がないことを知っていたので、戸惑っていました。好きなスポーツができるのはうれしいけど、わたしなんかが受かってもいいのかな?という感じで。だから私はその子に、「〇〇さんは部活推薦で合格できるっていうのはすごいことなんだよ。〇〇高校が〇〇さんの実力を認め、合格するだけの価値を持っていると判断したから〇〇さんは〇〇高校に合格できるんだよ。だから胸を張って受験してこなきゃ。」という話をして勇気づけました。私は正直その子が入学したとして、果たして高校の勉強についていけるかと不安を持っていました。保護者様も持っていました。しかしすでに学校間で話は進んでいました。そうなると、その子もご家庭も話を預けて、あとは時の流れに身を任せるのみです。
私はその子に「自分の力で合格したんだ」という気持ちをどうしても味わわせたかったから先の言葉をかけました。私はその子に「あなたは、あなた自身の力で合格できたんだ」ということを、何度も伝えようとしました。(果たしてそれが伝わったかはわかりませんが。) 学校同士の話し合いで決まる「合格」では、生徒たちが「自分の力で合格した」という気持ちを抱きにくいのです。それは子どもにとって「自分で自分の道を切り拓く」という受験における大切な経験を奪うことになります。
内々定をもらう子というのは、もちろんそういう子ばかりではありません。
ある子はトップ進学校に合格する力があり、片手だけでは数えられないほど多くの高校から触手が伸びるなかで、もっとも部活動に没頭できる環境の学校を選び、進学しました。その子は「とにかく僕は部活動に専念したい」という希望を持っていましたし、「僕はどこでもやっていける」という自信を持っていました。
だから、そういう子にとっては、内々定はあまり意味を持ちません。どうせどのような方法でも自分で志望校を選び、合格できる力を持っているのですから。
ある受験生は「〇〇先生は〇〇界では有名だから、生徒を合格させられる。でも、〇〇先生は、新任でバカ弱いから、合格させるの無理」という話をしていました。部活顧問が、生徒を高校に合格させることができるということを、自らの権力を誇示する道具にし、生徒たちがそれを鵜呑みにする状況があるとすれば、受験生を巻き込んだ形で、受験の不透明さを知らしめているその状況はおかしいと言わざるをえません。
生徒の受験結果に、大人の都合が入らないことが望ましいです。私はスポーツ推薦で合格する生徒に対し、これからも「あなたはすばらしい力を持っている。高校に合格できたことがその証だ。」ということを伝えていきたいです。これは私の本当の気持ちです。だってスポーツ推薦で高校に合格できるなんて、素晴らしいことじゃないですか。
そして、あくまで入試に受かるのは100%生徒の力の賜物であってほしい、周りの大人が「お前は俺のおかげで合格したんだぞ」と生徒本人の合格の手柄を奪うようなことだけはあってほしくないと思います。
今回の西日本新聞の記事は、公立高校にだけスポットを当てていますが、見方によっては、公立高校が私立高校のやり方に追随しただけのようにも見えます。そもそも推薦入試という方法自体に、公正さに対する脆弱さがあることは火を見るより明らかです。
何が問題なのか、ということをもう少し精査する必要があるように思います。
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