将来推計人口と国勢調査人口との誤差から見る将来の日本
2011年 02月 26日
国勢調査の人口速報値が発表されたので、2007年に国立社会保障人口問題研究所が発表した2010年の将来推計人口と実際の2010年の国勢調査の数字を比較してみました。
2007年時点の2010年将来推計人口予想は1億2717.6万人で前回2005年国勢調査より減少を予測。
実際には1億2805.6万人で前回国勢調査より人口は微増。(減少と微増ではえらい違い[だと思う。])
誤差は88.0万人で、この誤差を大きいと感じるか、小さいと感じるかは人それぞれですが、私としては、たった3年前に知恵をしぼって複雑な数式を導入して予想してもこれほどの誤差が出るのかと驚きました。
◇推計人口より実際の人口が多かった都道府県TOP10(*数字は国勢調査人口-推計人口)
*人口増加数Top10ではありません。念のため。
1位 東京都 +25.6万人
2位 大阪府 +12.7万人
3位 埼玉県 +11.3万人
4位 千葉県 +10.9万人
5位 神奈川県 +8.8万人
6位 愛知県 +4.1万人
7位 福岡県 +3.9万人
8位 茨城県 +3.4万人
9位 兵庫県 +2.5万人
10位 広島県 +1.9万人
逆に、推計人口より人口が少なかった(予想よりさらに人口が減った!)のが東北地方の各県(宮城県を除く。他にも数県あります。)
青森県-1.3万人、岩手-1.1万人、秋田県-0.8万人、山形県-0.9万人、福島-1.0万人
推計人口がピタリとあたった都道府県が全国に1つだけありました!
佐賀県です。
推計人口85.0万人、国勢調査人口85.0万人。ピッタンコカンカン!おめでとうございます!
佐賀県に住まいを持つ方々は、国立社会保障人口問題研究所の方に行動や家族計画をすべて捕捉されている、または県民に多くの工作員が存在するかもしれませんので注意が必要です。
国立社会保障人口問題研究所の推計と国勢調査統計を比較すると、いくつかの特徴が浮かびあがります。
まず、推計値よりはるかに人口の一極集中が進んでいること。
特に東京への一極集中は、数式の範疇にはおさまらない伸びを示しています。
3年間でこの誤差(東京+25.6万人)が出たのなら、同時に発表された30年後推計人口は100万人以上の誤差が出るかもしれません。
また東京に続いて、大阪でもUターン(都市回帰現象)が起きていますが、推計値ではこの動きを読みとることができません。
東京・大阪以外の地区でも、それぞれの地区で地方中枢都市(北海道-札幌市、宮城県-仙台市、愛知県-名古屋市、広島県-広島市、福岡県-福岡市)への人口集中は、いずれも推計値を上回る数字となっています。
ついでに東北地方の推計より大きい人口減少は、東京に東北地方の人たちが予測以上に吸い取られたことをものがたっています。東北地方と東京の物理的距離は年々狭まっています。東北地方の人口は今後ますます「予想以上に」東京に吸い取られていくでしょう。
私がなぜこれほどマニアックに統計について語っているのかと言うと、私は推計人口と国勢調査人口の差異にこそ、今後の日本を読み解く鍵があるのではないかと考えているからです。推計人口は非常に合理的な方法で算出されています。裏を返せば、推計人口と国勢調査人口の差が大きければ大きいほど、そこには非合理な力学がはたらいていることになるのです。この非合理な力学こそ、現代の人々の欲望の正体です。
これからの将来、日本の人々はますます東京を欲望します。
リトル東京(地方中枢都市)にやってきた人たちは、それでも飽き足らず、リアル東京を目指します。
ますます加速度を増すこの欲望に、地方はどのようにして太刀打ちしていくのでしょうか。
東北地方は東京とのアクセスが便利になればなるほど、地域の活力を東京に吸い取られました。東北地方と東京のアクセスが便利になって目を輝かせるのは、東北地方の人でしょうか、東京の人でしょうか。そんなことははじめからわかっていたはずです。
日本国民の欲望がすべて東京に集中するように、これまでせっせと何十年も日本列島を磨き上げてきたのです。いまさら地方の魅力を、と言ったところでそれはツーリズム的な魅力を発掘するにとどまるでしょう。そこには人々が欲望するものが決定的に欠如しているのです。
真の地方活性化のためには、東京を渇望する人々の視線を一旦リセットするほどのパワーを持つ、「欲望される地方」を形成するしか方法はありません。
しかしそんなことは可能でしょうか。また、可能だとして、その実現は、東京というイデオロギーの全体化にすぎないのではないでしょうか。
石原都知事は、東京が将来も地方に対して圧勝し続けるであることを確信している人物の1人であり、いまのところそれは正しいと言えましょう。しかも彼は積極的に東京を欲望する見本を示します。
宮崎では東国原知事が活躍しました。彼は一時は地方という弱者を助けるスーパーマンになりました。しかし彼の行政はむしろ地方の弱さを際立たせ、その挙句、現在では、東京への欲望という生々しい本音を露呈するに至っています。
日本全国が、東京という欲望に向かって進んでいる。
これは私が将来推計人口と国勢調査人口との誤差から読み取ったことです。
そしてそこから将来の日本についてあれこれ考えたあとに見えたのが、地方がさらに疲弊してゆく姿です。それは寂しい姿です。しかし、それが果たして不幸なことがどうかはまだ確信を持てません。欲望に向かう形とは別の幸せはきっとあるはずだと思っています。
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