当世マンガ事情
2011年 11月 15日
昨日、「おやすみプンプン」の9巻を読み終わりました。
いまどきめずらしい純文学系とよびたくなるマンガです。プンプンとその周囲のキャラは暗くネジまがっていますが、読んでて不思議な安堵感があります。
この1年で最も面白いとおもったのが、松本大洋の「竹光侍」。
過去の松本大洋の作品の中でも地味な部類に入るマンガですが、まずストーリーうんぬんの前に絵そのものがすごくいいです。彼の筆致によって男のロマンが月見草のような繊細さとはかなさをもった美しいものに昇華されています。昨年完結しました。
いま読み進めているのが「ヒストリエ」。紀元前4世紀のギリシャ、ペルシア、マケドニアが舞台の歴史マンガ。作者は「寄生獣」で一躍有名になった岩明均なので、一部どぎつい描写もありますが、ストーリーの圧倒的な面白さがありグイグイ読み進めてしまいます。
歴史ものであと一つ。映画化もされすっかり有名になった「大奥」は連載当初からずっとおもしろさの質を下げずに突っ走っています。将軍が「女」だからこそこんなに面白い作品になったんですね。
先日、自殺して亡くなった青山景の「よいこの黙示録」。青山氏の死去により未完で終わることになりましたが、今後どのような展開になったのだろうと、想像せずにはいられないとても面白い作品です。小学生がクラス内に宗教をつくるという一見奇想天外な話ですが、善人がどれだけ倫理的に弱い存在かということを痛切にリアルに描いた作品で、妙な現実感をもって私たちに迫ってきます。
映画化も進み、話題沸騰の「テルマエ・ロマエ」。温泉と地理と旅が好きな私にとって特別な面白さをもったマンガです。何といってもヤマザキ氏の巧妙かつ心穏やかな視点がとてもいいです。この作品になら、しばしの間私の心を預けられるという信頼感は他に替え難いものです。
話題沸騰といえば、子どもたちも知ってる「毎日かあさん」「もやしもん」あたりは発刊巻数が進んでも読み進めていますが、「毎日かあさん」には最近は話にあざとさを感じることがあり、しかも作者自体がそのあざとさまでもをネタにする逞しさをもっていますから、まったくもう手に負えないよ、と思うことがあります。昨年出た感動作として知られる「きみのかみさま」にも若干あざとさを感じてしまいました。とはいっても西原ブランドはいまだに支持しています。私のなかの西原作品NO.1はいまだに「ゆんぼくん」です。
「もやしもん」は最初から登場人物たちの無機質さ、特に登場する女の子たちのキャラの魅力のなさに対し違和感を感じていましたが、「菌」の話自体に知識欲をかきたてる面白さがあるために読み進めてきました。しかしながら個人的にはここにきてちょっとダレてしまいました。樹教授にはヘタな説教をやめてほしいと。
逆に面白くなってきたなあと感じているのが「3月のライオン」。当初からこのマンガも登場する女の子たちがやたら魅力ないなと思っているのですが、それと関係なしに、巻数が進むにつれストーリー自体に深みが出て面白くなってきました。それにしても同じ「根暗」が主人公といっても、プンプンなんかと比べるととても健全なマンガですね。
名作「ヒカルの碁」の完全愛蔵版が、昨年完結し、私は今年になってすべて揃えました。
このマンガとおやすみプンプンは卒業生Hくんの勧めで読み始めたのですが、高校生たちもいいマンガたくさん知っていますね。過去読んだ全てのマンガのなかでも中毒度が最も高い作品のひとつです。
昨年完結したバレエマンガ「テレプシコーラ第2部」。おそらくこの作品を読んだ多くの人が感じているであろうと思いますが、テレプシコーラは第1部がとにかくすごかった、ということ。第1部に私たち読者は最愛の人を亡くし、その悲しみが癒えることなく第2部が終わってしまった、という印象です。
同じく昨年完結した「ピューと吹く!ジャガー」。過去10年存分に楽しませてもらいました。
終わったときは本当に悲しかった。人生の楽しみをひとつ失ったな、と思うほど。
当初は名作マサルさんを上回ることはない、と勝手に思っていたのですが、いつのまにか、マサルさん以上の愛情をこの作品に注いでいました。うすた氏の次作を心待ちにしています。
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