寺子屋ブログ by 唐人町寺子屋

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2012年 07月 09日

「坂口恭平×石田衣良(アシタスイッチ)」を観る

昨日から「坂口恭平」という検索ワードで本ブログに入ってくる方が激増している。
昨日のテレビ「アシタスイッチ」の影響が大きいことは間違いないところ。

私も観ました。「アスタスイッチ」
見た直後に私がTwitterに連投した内容を以下に転載します。

Twitterに書き込むと前後内容が確認しづらく、部分的にまとまりがありませんが。

―――――


アシタスイッチを見た。坂口恭平氏が石田衣良氏と話していて、坂口氏が夢を、石田氏が現実を語っているかのような構成だった。坂口氏は自身を夢師と呼ぶが、少なくとも石田氏ら良識派から見た意味での、つまり現実の対極としての「夢」師ではないと私は思っている。

坂口氏は少なくとも石田氏よりは「現実」を見ている。土地の所有という概念、お金という概念が一種の「夢」であり幻想であることについて「現実」的な視点から語っているのが坂口氏だ。

それに対して良識派は言うのだ。 そんなことはわかっている。でもだからってなんだっていうんだ?現実としてお金で世の中は成り立っているんだ、不動産で経済は動いているんだ、と。

良識派は半ば無意識にはじめから見ないようにしているのだ。「疑い」を持つことで自身の世界が歪むのが恐ろしいのだろうか。良識派の「抵抗」はとてつもなく強力だ。良識派は自身を「現実派」、相手を「夢師」とすることで、足場を確固たるものとする。

今回のアシタスイッチもそうだ。石田衣良氏は見事に「現実派」として模範的なふるまいをした。結果、坂口恭平氏は「現実」を見ない「夢想家」の若造として多くの人の目に映っただろう。しかしこれは良識派の常套手段である。私たちは目を凝らして頭を働かせて「現実」とは何か考える必要がある。

土地の所有やお金に対する根本的な疑問、これらをあらゆる社会問題を切り崩す糸口にすること自体は古典的な方法だ。ただ、坂口氏はその糸の手繰り寄せ方に独創がある。坂口氏はその独創をもっと徹底するべきではないだろうか。変に「社会派」として見られると良識的な「現実派」たちから潰されてしまう 。

坂口恭平がいう「社会」と石田衣良がいう「社会」ではそもそも意味が全く異なる。 坂口氏の「社会」は目の前にあるミクロな世界の延長にあるワタシと繋がった世界であるのに対し、石田氏の「社会」はワタシが存在し思考する以前からゆるぎないものとしてあるマクロな世界である。

坂口氏の「社会」には何も確約されたものがない。手探りで自分で社会を見つけていくのだ。しかし、石田氏の社会は初めから措定のものとしてそこにあり、私たちは抗うことができない。これらの良識に対して、手探りで不安だけど、抗うことは可能なんだよ、楽しいんだよ、と言うのが坂口氏の仕事だ。

「現実派」の人たちになぜ坂口氏の話が通じないかと言えば、彼らは先にマクロな「社会」を前提として語っているからだ。彼らがその場所から語る限り、坂口氏の話は全く通じない。その意味で坂口氏には勝ち目がない。

彼らが負けようがない位置から話しているとすれば、坂口氏は別のアプローチを取る以外に方法はない。 私は「社会派」なのではなく「あなたが死なずに生きていくことができるように。」ということを素朴に考えているのだ、ということをただひたすら伝えまくるしかないのではないだろうか。

彼はすでにそのことを十分にやっているけれど、今回のアシタスイッチだけ見た人はそれがわからないだろう。 坂口氏はマクロな社会と対決するという姿勢ではなく、そのような檻のような前提のある社会からあぶれた人たちを助けたいと思っており、それが結果的に社会貢献になると信じている人だと思う。

彼がやっている一見奇抜で風変わりに見えることが、実際のところは、すごく真っ当で普通のことなんだという感覚が多くの人に伝われば、彼がやっていることはひとまず成功だ。

しかし、すごく真っ当で普通のことをそのまま表現しては芸術ではないし、抵抗あっての芸術である。芸術はあえて抵抗装置を用意することによって見る者のふるい分けをする。彼の最近の活動にはあらゆるところできしきしと抵抗が音を立てているのが聞こえる。その意味ではやはり彼がやっていることは芸術なのだと思う。


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by terakoyanet | 2012-07-09 12:51 | 寺子屋エッセイ(読み物) | Trackback | Comments(0)
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