先生、ネクタイが曲がっていらっしゃいます。
2013年 11月 12日
「先生、ネクタイが曲がっていらっしゃいます。」
この表現の誤りを正し、全文を書き直す問題が出ました。
正解は
「先生、ネクタイが曲がっています。」
この文章の主語は「ネクタイ」なので、「ネクタイ」に敬意を示している「いらっしゃいます」の表現はおかしい。
だから、尊敬語をとって「曲がっています」という丁寧語のみで表現すればOKという問題でした。
多かった回答は
「先生、ネクタイが曲がっておられます。」
「先生、ネクタイが曲がっております。」
まず、「先生、ネクタイが曲がっておられます。」
「おられる」は、例えば「渡部さんは著書で○○と述べておられます」というふうに、尊敬語として使用することができる言葉です。ですから、「おられる」はやはりこの場合、上と同じく主語の「ネクタイ」に対する敬意を示す語になってしまい、不可です。
「先生、ネクタイが曲がっております。」
この文に用いられている「おる」は「~ている」という意味ですから一見すると問題がないようですが、
ネクタイに「おります」をつけると何だか変な感じがする。
これはなぜかと言うと、「〇〇が~ております」というときには、〇〇には自分や自分側の立場の人物が入るから。
例えば、「先生、私の父がいま説明しております。」
これだと正しい表現になりますが、「ネクタイが~ております」というのはやはり、やや不自然な日本語と言わざるをえません。
その他のすさまじい解答をご紹介します。(勝手に紹介された子ごめんね。)
「先生、ネクイイがお曲がりになられてます。」(Tくん)
「お曲がりに」とは悶絶ものの丁寧表現です。それなのに「なられてます」とは。
尊敬語「なられる」のあと、「~ています」の「い」を抜くことで、相手に敬意を示しながらもフレンドリーさをも表す、高度なテクニックですね。
しかも、曲がっているのは「ネクイイ」なのですね。
「先生、おネクマイが曲がっていらっしゃいます。」(Wくん)
まさかネクタイに「お」をつけるという荒業を披露してくれる子がいるとは思いませんでした。「お米」「おにぎり」「おネクタイ」なのでしょうね。
いや、「おネクタイ」ではなく、「おネクマイ」になっています。中2男子はもしかして、ネクタイって何のことか知らないのかもしれない、とにわかに不安になります。
敬語は難しいです。
私も保護者様と電話で話しているときにたまに敬語の使い方を間違って「しまった」と思います。
でも、話している途中に間違ったからといって、決して言い直すことはできないからつらいところです。
穏やかな笑顔でスラスラと美しい敬語を話せる、そんな大人に私はなりたいです。
今回、謙譲語と尊敬語の違いを初めて理解した中2生のみんなも、これから素敵な日本語を駆使できる大人になってくださいね。
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