ヴェネチアのカ・ドーロ"Ca' d'Oro"とマンテーニャの「聖セバスティアヌス」
2013年 11月 25日
滞在先からカナルを挟んで対岸に見えていたのが、「ヴェネチアの宝石」とでも呼びたくなるような美しい建物、カ・ドーロ。
カ・ドーロは、1430年にヴェネツィア貴族コンタリーニ家のために建てられた邸宅です。
床や壁に配された大理石のモザイク柄がとても美しく、印象的でした。
カ・ドーロの上階にはジョルジョ・フランケッティ美術館"La Galleria Giorgio Franchetti"があり、マンテーニャが最晩年の1506年ごろに描いた『聖セバスティアヌス』が、厳粛さを漂わせる大理石空間の真ん中で威容を放っていました。
聖セバスティアヌスといえば、三島由紀夫の『仮面の告白』のなかで主人公が魅了されたグイド・レーニの絵画『聖セバスティアヌスの殉教』があります。
グイド・レーニのそれが官能的な甘美性を有した若々しい少年像であったのに対し、マンティーニャのそれは人間の生の苦悶を凝縮したような、見る者に強い痛みを感じさせるものでした。
三島はプライベートでもグイド・レーニの絵画の構図を模した写真を自らをモデルに撮っています。
三島はその甘美性に惹かれた一方で、彼自身の志(こころざし)は、別の方に向いていたように思えます。
彼が割腹自殺をする直前に執筆された『天人五衰』に登場する少年の透は、イタリア美術の中で、マンテーニャが好きだと答えています。
マンテーニャを介すことで、透という不可思議な少年の背後に、陰惨な暗い闇が広がるのを感じます。
死を目前にした三島が、透という少年に託したものは何だったのかを考えずにはいられません。
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