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ロシアのダーチャに遊びに行く。

私は普段、中高生に地理を教えているので、以前から、教科書に登場するロシアの家庭菜園つきの別荘、ダーチャのことが気になっていました。(先週土曜の授業で扱ったセンター地理過去問にも登場しました。)

別荘とは言っても、どうもバカンス的なイメージのヨーロッパ風のものとはニュアンスが異なるのではないかという気がするけど、なんだかいまいちわからない、そう思っていました。だから、ロシアに訪問した際にはぜひ行ってみたいと思っていました。

というわけで、ハバロフスク郊外のダーチャを訪問したときの話です。



ハバロフスク市街から車で1時間弱行ったところに、ダーチャ村とでも呼びたくなるような、たくさんのダーチャが並ぶ地域があります。
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現地のツアー会社を通じて、通訳を日本語が堪能なアンドレイにお願いしました。本人は「僕は撮らなくていいよ~~」と言っていましたが、撮らせてもらいました。
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ダーチャに到着し、さっそくオーナー夫妻に部屋の中を案内してもらいました。簡素なものを素材にしながらも、上品に豪華に仕上げられた部屋の美しさに驚きました。とても素敵ですね。何度もアンナに伝えました。
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「ここの窓からウチの菜園が見えるのよ。」とアンナがカーテンを開けます。
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窓から縦長の菜園の全貌を見渡すことができます。
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敷地が特別に広いわけではないのですが、さまざまな種類の根菜が所狭しと育てられているのがわかります。非常に集約的、かつ機能的な印象を受けます。



子ども部屋。オーナー夫妻のダニイルとアンナは、身寄りのない子どもたちを何人も養子として迎え入れています。
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写真左端のエゴールはその右のダニイル、右端のアンナの息子さん。かつて日本と極東の貿易に関わる仕事をしていたために、日本語を話すことができます。現在は市内のホテルで働いているそう。現在は、数年前に結婚した妻と二人でここの2分の1くらいの大きさのダーチャを持っているそうです。とても穏やかな語り口の好青年でした。
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菜園内を案内してもらいました。
トマト、キャベツ、トウモロコシ、ビーツ(ボルシチの赤い色素のもとになっているカブによく似た根菜)など、多種多様な野菜が育てられています。寒い土地だから大きい実はできないとのこと。
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たくさんの家畜も育てています。鶏、七面鳥、家鴨、豚などがいました。
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うんと、これは何でしょうか。。
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ピンクの壁のかわいらしい車庫には、クマをはじめとする動物たちの毛皮や剥製が飾られていました。改めてこの土地がヒグマ、ツキノワグマ、アムールトラなどが生息するアムールタイガのすぐそばであることに気づかされました。
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たくさんのかわいらしい猫や犬たちがそこら辺をうろちょろしています。
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昼食をごちそうになりました。
炭火でケバブ風の串焼きを炭火にかけるダニイル。
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楽しい団欒のとき。それにしてもすごいごちそう! 
すべてが家庭でとれた食材でつくられた料理で、これ以上の贅沢はないと思いました。
「どんなレストランより美味しいよ」と通訳さんが言っていましたが、わたしもそう思いました。
めちゃくちゃ美味しかった。ピロシキも人生一美味しかった。身体が喜んでいるのがわかりました。
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いくら食べても次々に料理が運ばれてきます。
ダニイルは一見ぶっきらぼうで寡黙な人に見えるのですが、誰よりも私たちが楽しんでいるか、美味しい料理を口に運んでいるかを気にしていました。私たちがよいこの場所でよい思い出をつくることを心から望んでいることが伝わってきてとてもうれしかったです。
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極東はもともとアイヌと近縁の先住の人たちが住んでいた土地。
「ここは日本で言うと北海道みたいなところ。近代になって開発されていまの姿があるんだ。」
ダニイルに「あなたとあなたの親たちはずっとここに住んでいるの?」と尋ねると、
「そうだよ、祖父の代からは。」との答え。彼はアーリア系で、もともとは中央アジアに住んでいた家系とのこと。



養子のかわいらしい3人。一番上のイヴァンは心優しき頼りがいのあるお兄ちゃん。
二番目のアレクセイは私たちの訪問を一番楽しんでくれているように思いました。
三番目のマルクはまだ1歳!かわいい盛りです。
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マルクはそのらへんにあるものなら何でも口に含んでいて、ちょっとはらはらしました。
でもそれを全く止めもせずにこにこと見守る大人たち。
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ロシア流?の奔放な子育てに驚かされました。


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ご夫婦は実の子どもとこの日いた養子の3人以外に、2人の養子がおり、彼らはすでに成人していまは他の土地に暮らしているそう。何でもないことのように淡々とそのことを語るお2人がとても素敵でした。


肝心のダーチャについてもいろいろなことを聞きました。

「ダーチャは夏の間、週末になったらみんなで集まってバーベキューをしたり、しゃべったりゲームをしたりしていて、冬の間はほとんど来ることはないよ。たまに若者たちが冬なのに籠ってることもあるけど。過去も今も家でできる食材だけが信用できる食べ物なんだ。いまは中国から大量の食材が入ってきているけど、信用できるのは家でとれた野菜たちなんだ。」

社会主義の集団農場が存在した時代から、ダーチャは各々の自由な耕作が認められた土地でした。
経済危機や国内の政治的混乱の際に市場に食物がなくなっても、ダーチャを持つ人たちは、そこで栽培した野菜と家畜を食べることで飢えることはありませんでした。

ロシアの1人あたりのGDPは日本の3分の1ほどしかありません。しかし、自給自足をする力は決してGDPに換算することはできません。日本や欧米ではグリーンツーリズムや農村体験などが脚光を浴びていますが、ロシアのダーチャの伝統は、ロシアの人たちの命と直接結びついたものであり、生きる力としてのダーチャの魅力が、私の目にはとても眩しく感じられました。


今後、ダーチャについて、もう少し深いイメージを携えて、子どもたちに話をすることができそうです。




※上記の話の中に出てくる人たちは、一部仮名で掲載しています。


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by terakoyanet | 2014-10-13 11:51 | 雑感・授業風景など | Trackback | Comments(0)