ホテルオークラ東京とぜいたくについて
2015年 04月 15日
東京オリンピックを間近に控える1962年に開業したこのホテルがもつ「日本的建築美の創造」を体現した同ホテルの取り壊しに対し、それを惜しむ声がやまないとのことです。(参照:ホテルオークラ取り壊しに世界が動いた ポール・スミス氏ら有名デザイナーが続々「待った」 マーガレット・ハウエル、〈ホテルオークラ東京〉解体計画に物申す!)
本館ロビー

吉野桜とオークラランタン

ホテルオークラ東京は、他の東京のハイグレードなホテルに比べ、何といえばよいか、泊まり心地が特によいかといえば、いまやそうとは言えず(といっても全ての部屋がそうかどうかはわかりませんが) 断熱性と気密性の高いマンション暮らしに慣れた人たちにとっては、最近建てられたり改築されたホテルのほうが、その点(断熱性等)をフォローしているため身体がその部屋に馴染んで快適だと感じるのではないかと思います。
私の妻などはとてもその辺に身体が敏感なので、断熱性の高いホテルの部屋で羽毛布団で寝るときだけは、ぐっすり眠ることができることがあるけれど、そうでない環境では眠ることがあまりできていないように見えます。これはぜいたくだと言われても、一度慣れてしまうと身体がそうなってしまう人にとっては、何ともどうしようもありません。(ぜいたく化するのは何も精神だけではない。ぜいたく化することの本質はむしろ身体にあるように思われます。)
私自身はどんな環境でも眠ることができる「眠りの達人」です。雑踏のなかでも砂嵐のなかでも歩きながらでも眠ることができます。寒山で遭難して「今眠ると死ぬぞー!」と耳元で叫ばれながら、最初に死ぬ人間でしょう。
昨年モロッコのサハラに近い辺鄙な田舎の安宿に泊まった時には、同宿のヒッピー風の男性が奏でるシタールの音色を聞きながら「ようやく全ての雑踏から解放された」と私はすっかり悦に入っていたのですが、隣にいる妻は泣いていました。環境があまりに普段の生活と違うので、身体がついていかない不安で泣いていました。私は心底かわいそうだと思い、反省しました。
現在、私の妻のような都会暮らしの人が増えてきているとすれば、今回の建て替えは畢竟致し方ないのだろうかと思います。このままでは、ホテルオークラは、泊まり心地に高級感のない中途半端な印象のホテルになることを免れないし、高級ホテルと言われる割にはかなり割安な現在の価格設定を変えることはできないでしょう。
新しいオークラは、現在の「日本の伝統美」のイメージを携えたまま新しいステージに向かうことを目指しているようです。来年、東京に行くことがあれば、新生オークラに泊まってみて、妻に感想を聞いてみようと思います。
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