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政治と芸術

政治と芸術(もしく音楽)との関係性について、昨今さまざまな意見が沸き起こっています。
その中で、私自身は会田誠さんの以下の発言が一番しっくりきました。

会田誠 @makotoaida
芸術に政治を入れるのになんの躊躇もない。ノープロブレム。しかしわざわざ芸術家になろうとしてなったんだから、政治なんて軽蔑してる。下に見てる。そういう感じでいきたい。

軽蔑してる、下に見てる。言葉は悪いけど、芸術をやろうっていう人はそうでないとと思います。政治は私たちにとって第一義の問題ではありません。むしろ政治を第一義の問題と錯覚している人たちと私たちは戦わなければならないのでは、とも。

先日、長年ポストコロニアルの勉強をしてきた人と話す機会があったのですが、反体制でなければ芸術家として弱いということを話していて、私はそうとも限らないと強く思いました。芸術家や哲学者は、反体制よりもずっと過激に体制を焦土にするようなことをやっているのに、皆が気づこうとしないだけではないか、と。



日本のメインストリームは、政治と芸術との相互的な関わりが貧弱です。というより単にそれらの関係性を自身の問題として落とし込み深化させること自体が苦手なのかもしれません。

サザンオールスターズ(桑田佳祐)は間違いなく稀有なの歌い手であり、作曲家であるけれども、とかく政治となると単なるポーズにとどまっているように見えます。数年前の紅白の際のパフォーマンスで物議をかもしましたが、パフォーマンスそのものというよりは、その批判に対する謝罪をしたために、その動機の軽薄さを自ら証明する結果となりました。

その点、同じ年に紅白に出た椎名林檎のパフォーマンスはすごかった。彼女はメインストリームにいながら、抽象的に政治を音楽に織り込むことに成功している稀有な才能だと感じています。このパフォーマンスは、見る人によって解釈が180度変わってしまうすさまじいもので、ある人は、ナショナリズムの熱狂そのものを感じるでしょうし、ある人は、そういったものに対して思いっきり中指を突き立てているように見えるでしょう。
サザンよりずっと過激なパフォーマンスなのに、日章旗の色が反転しているのに、あまりに解釈の幅があるために一方的な非難にさらされることはありませんでした。なんて上手(うわて)なんだと感心しました。





海外では政治の問題を自身の問題ととらえているアーティストがメインストリームにも多くいて、私自身が、サンダースへの支持を表明したレッチリ(Red Hot Chili Peppers)などより、ずっと共鳴しているのがビョーク(Björk)です。

アイスランド出身のビョークは現在、来日中で、さかんに日本のメディアでも取り上げられていますが、なかでもこちらのインタビューは必読です。

ロックやバンド形式自体に男性的ヒエラルキーが出来上がっているという話、エレクトリックミュージックこそが彼女を音楽的に自由にした話など、過去20年間彼女の音楽を聴いてきた私としては、合点がいきすぎて感動的です。彼女の存在自体が音楽自体が政治的であらざるを得ない必然や困難についても垣間見える話です。



ちなみにインタビュー中でビョークが「エレクトリックミュージックには魂がこもってない、なんてまだ寝呆けたことを言っているヤツらに、中指を立ててみせたような作品」と言っているJames Blakeの新譜、「(彼女とは)距離が近すぎる」と語っているANOHNIの新譜、本当に素晴らしいですからおすすめです。






そしてANOHNIもかなり読み応えのあるインタビューがあります。こういう質の高いインタビューが日本語で読めるというのはうれしいですね。

”マーガレット・サッチャーも、女性ひとりが男性のルールのなかでリーダーになっただけ。でも、政治自体が女性から指揮されるようになれば世界は変わると思います。 ” 

後半は政治的な話もでてきます。ビョークもそうですが、彼女たちには政治と音楽という境界はなく、切実な血肉の問題として政治と音楽があり、それらが避けがたく結びついています。音楽の政治的利用でも、政治の音楽的活用でもなく。

私は昨年ツイッターで(男性の現政権への支持率の高さに驚いて)「選挙権はもう女性だけに与えたらいいのに」という問題発言をして指弾されたのですが、アノーニが話す、政治にこそ女性のスキルが必要、という話に賛同します。インタビューでは、土方巽や大野一雄の名前も飛び出して驚かされます。



いわゆる左派の人たちのなかでは、バーニー・サンダースや三宅洋平への支持が盛り上がっています。
多くの若い人たちがインスパイアされていて、面白い動きだと思うのですが、私自身は、翻ってトランプ候補と同じスタンスになりかねない彼らの立ち位置よりも、あくまでそれが芸術でありながら、政治的なものを表出せざるをえない彼女たちに心が引き寄せられます。



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by terakoyanet | 2016-07-01 13:05 | 連載(読み物) | Trackback | Comments(0)