ブックレビュー 2018年7月-10月
2018年 11月 03日
彼らは「国民」という言葉を、「国民一人一人」という使
武田砂鉄さんの新刊『日本の気配』は、現代の政治がとて

「うちはみんなバラバラ」と思って生きてきた寺尾紗穂さ
やたら涙もろいとか
果てなくさまよい続けるとか
君と僕とは似ているよ
「ねえ、彗星」寺尾紗穂 アルバム『御身』より
物心つく前は、誰しもが私という彗星の軌道の上を、私を
でも、あるときに気づくのです。私と親、私と家族はそれ
手を差し伸べても届くことのない、もう一つの彗星。決し
でも、私が遠くに見ているあの彗星も、無限の孤独に耐え
そう思うと、あなたの彗星のしっぽの先に乗って、同じ宇
寺尾さんの文章を読んで、そんなことを考えた朝でした。
やや隠喩的になるが、伊藤比呂美という詩人は、目の前の
伊藤比呂美はこれほどに生と死の狭間にあるエロスを描き
「阿部一族」に描かれる死生観から、夫との死別、熊本地
瑞々しい木漏れ日のような、折坂悠太くん、マヒトゥザピ

『バウムクーヘン』詩 谷川俊太郎・挿画 ディック ブルーナ
すべての詩が かなで書かれたこの詩集。
谷川さんはこの詩集のことを「私の中に今もひそんでいる
かなの言葉の連なりが 私たちに小さな声で語りかけるの
人生の楽しみ 不可思議 驚き 慄き そして 愛の言葉
みえるのははるかに
どこまでもおわらないみちだけ
しらないあいだにぼくのからだに
だれもしらないうたがうまれて
こころがだまってうたっている
*2章「みち」より
きらいのなかに
すきがまざってることがある
そのすきはうそじゃない
*3章「すききらい」より
自分の心を掘ったあのときに
きっと確かに浮かんだ言葉が
この小さな詩集の中に散りばめられていて
うれしいような 少しくやしいような
そんな いつまでも大切にしたい 詩集です

何て、本らしい本。凛と角ばっていて、ページをめくりや
私はいまこの本を読み始めてわずか45分。本のはじめか
本というのは読んでいると途中で弛緩することがあるのだ
島田さんがこの本の冒頭に言葉を綴ったのは、きっとこの
島田さんの言葉でもうひとつ印象に残ったのは、「具体的
矢萩多聞さんの中1で学校をやめてインドから日本の友だ
矢萩さんの言葉で印象に残ったのは、この章のタイトルに
そして3人目のバトンは校正者の牟田都子さん。「ものを
普段、感傷的すぎることは恥かしいと思い、自分のことに
写真家・植本一子がフェルメールの全作品を巡る旅をその
美術書なのに完全取り下ろしの写真集でもあり、植本一子
そして映画に時間を使ったせいで、いま徹夜で仕事をしている。映画の最後のシーンの残像が見える。きたないはきれい。

ろう者であり写真家である齋藤陽道さんの新刊。これは人

相思社さんは、水俣病の最初の発生地といわれる集落のす

17世紀のイングランドのおとぎ話に基づいたトリック・

目に焼き付いて離れない鮮やかなシルクスクリーンのインクの色が、やさしく力強く、魂のうたを私たちに届けてくれるのです。そうやって、苦しくて悲しい現実も、喜びや希望も、私たちに確かに繋がっている、この蛇腹式の本を1枚 1 枚にめくりながら、その感触を確かめながら、そのことをひしひしと感じるのです。
