国語の伸ばし方

植本一子さんは去年の夏、私たちが日本財団の取材を受けたときに撮影に来たのが最初で、その数ヶ月後にトークイベントに来てもらったのでとらきつねに来てくださるのは今回で3度目、そして武田砂鉄さんは今回初めてとらきつねにお越しになります。


その武田砂鉄さんが去年の12月にタモリ倶楽部に出演したときの動画があります。
この日のタモリ倶楽部は「受験業界震撼の問題企画!作者の気持ちを作者は解けるか!?」という企画で花園大学の大学入試問題国語の文章「鼻毛に背負わせすぎ」の著者である武田砂鉄さんが「作者の気持ちを作者は解けるか」どうかを試すためにタモリたちとともに問題を解き、えー!?作者なのに作者の気持ちの問題が解けないのか!?といういわばお決まりのオチに落ち着くという、ある意味予定調和の笑いの内容と言えると思います。

でも、タモリ倶楽部、タモリの笑いのいいところはそこに強引さがないところです。一方的な解釈を押し付けるようなことはしません。
実のところ、国語の入試問題で根拠なく「作者の気持ち」なんてものを答えさせる問題は絶対に出ません。この番組に登場する入試問題の作成者である今井隆介准教授(入試問題の素材に「鼻毛に背負わせすぎ」を選んだ時点で今井教授はきっと間違いない人!)も言っているとおり、解の根拠を説明できない問題は入試問題として不適合であり、出題者は論理的根拠があるという点において出題者としての責任を負って問題を作成しています。よって国語の問題を解くことは、作者というよりは、問題作成者との知恵比べ、がまん比べになります。
だからその意味で、国語を解くということがわかっていない人が「作者の気持ちを答えよなんてナンセンスだよ、そんなのわかるわけないじゃん」と言うのと同じような結論をこの番組が導き出していないことに安心しました。だってそれは端的に事実誤認だからです。この番組ではむしろ出題者の今井さんへの敬意が感じられたし、その一方で武田砂鉄さんのチャーミングさと「鼻毛に背負わせすぎ」という短編の面白みが存分に伝わってきました。こうやって、タモリの笑いというのは基本的にどの立場の人も傷つけない敬意を持ったものなので、安心して見ていられます。[その点、昨夜テレビであっていた「月曜から夜ふかし」は、取り上げられたケーキ屋さんが、そのセンスのなさを強調されるだけで終わっていて(マツコが私は好き、と言っていたがあんなものではフォローとしては弱すぎる)なんて一方的な編集なんだと憤ってしまいました。]

国語は伸ばしにくいと言われる科目ですが、きちんとポイントを押さえて学習すれば必ず伸びる科目です。
私たちの教室には、芥川龍之介や鷲田清一といった難しい内容の文章も果敢に読み解いていく小学生対象の国語の授業があり、中学生対象の国語力を伸ばすことだけに特化した授業「国語塾」があり(この授業はオプション料金が発生するのにかかわらず、当校の中学生の6割以上が履修しています)、センター試験や最新の入試問題を厳選して読み解く高校生対象の「現代国語」の授業があり(昨日の授業では2015年のセンターに出た大庭みな子の短編「紅茶」と、2018年の早稲田大社会科学部の問題に出た東浩紀の「ゲンロン0 観光客の哲学」を扱いました。ちなみに東浩紀さんの「ゲンロン0 観光客の哲学」の刊行記念読書会が2017年にとらきつねで開催されました 。こうしてとらきつねのイベントと大学入試、日ごろの授業はつながっています)、小・中・高のそれぞれの授業で子どもたち(計108名が履修中)が明確に国語の力を伸ばしており、その成果は歴然と日ごろの模試でも表れています。

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↑は先ごろ発表された夏の模試の平均偏差値。国語塾履修生(1学期から国語塾を履修している生徒)の平均、その他の生徒の平均です。
国語塾生は本人もご家族も勉強に熱心であることが多く、中2数学以外の全ての科目で国語塾履修生のほうが平均が高くなっていますが、やはり国語の平均偏差値は国語塾履修生が圧倒的に高いことがわかるデータになっています。中3に関しては英語(やここに載っていませんが社会)でも国語塾履修生が差をつけており、文系科目全体への好影響も伺える結果となっています。

当校で生徒たちに国語を解く上で何を意識づけさせているかをまとめると、以下のようになります。(以下がすべてではありません。一例です。)

1 まず大前提として、文章を読むことに深く集中すること。
2 決してフィーリング(感覚)で解かない。評論はもちろん、小説さえも論理的に解くこと。
3 問題を解くことは問題作成者との知恵比べと心得ること。
4 論説文・評論文など読みづらいものは、本文読解と設問を同時並行で読み進めて解いていく。
5 小説・随筆(比較的すいすい読めるもの)は、先に本文をすべて読んだ後に設問を解いてもよい。
6 設問で問われている内容は何か確認し、間違えないように印をつける。(「理由を答える」のか「考えて説明」するのか、「一文を探す」のか「部分を抜き出す」のかなど。
7 設問傍線部中(または傍線部直前)の指示語に〇をつけ、その指示語が何を示しているかを明らかにする。
8 本文中の接続詞(しかし・つまり・また、など)は文脈の転換点。注意を払う。
9 むやみやたらに本文に印をつけない。解くことを単なる「作業」に貶めないこと。印は必要な箇所に最低限つける。印をつける箇所を厳選すること自体が国語力アップの鍵。
10 選択問題というのは要はボケとツッコミである。出題者のボケに的確なツッコミを入れることができるかが勝負。各選択肢の、明らかに間違っている(ボケてる)箇所に線を引き×をつけ(これがツッコミ)、怪しいところには△をつける(ただし中途半端なツッコミはできるだけ避けたい)。※ボケにはパターンがあるので、そのパターンを授業中にしっかり確認をしています。
11 解くのに慣れてきたら、時間をはかって解く。


他にもありますが上のようなことを繰り返し繰り返しやっていくと国語力は着実に伸びていきます。内容が難しいときは、その内容について子どもたちが「そういう話だったのか!」と腑に落ちるような話をすることも大切です。集中して問題を解かせる→論理的な根拠をもとに問題を解説→最終的に子どもたちの心にすとんと落とし込む、これがうまくいったときは、思わず「今日はうまくいったー!」と叫びたくなることもあります。国語の授業は生モノで扱いにくいところもありますが、子どもたちのおかげでとても楽しく進行できていると感じます。そして、国語の授業で読んだこと感じたことが意識・無意識に子どもたちの将来の財産になることを、祈るような気持ちで密かに願っています。

最初にお話しした武田砂鉄さんのイベント、こちらを読んだ方はぜひご参加いただければと思います。ずばり面白くなると思います。(残席少ないので売り切れてしまった場合はご了承ください。)



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by terakoyanet | 2019-10-08 04:51 | 寺子屋エッセイ(読み物) | Trackback | Comments(0)