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三者面談の効用-子どもたちの欲望が生まれる現場として

毎年三者面談をしていると、面談をすることは目に見えて生徒にとってプラスにはたらくことが多いことを実感します。(残念ながらすべてのご家庭で必ずというわけにはいきませんが。)

三者面談の効用は、なんといっても子ども1人を主人公にして、その子についてさまざまな話をすることができることです。これは、子どもにとって、日ごろの生活、日ごろの授業では経験しえないことです。私は、お母さん・お父さんの前でできるだけ具体的に生徒の長所や傾向について話します。(厳しいことを言うこともありますが。)その子に対する思いをお母さん・お父さんたちに話すことで、間接的に子どもに伝わるようにします。

この間接的にというのがミソです。間にお母さん・お父さんが入ることで、私が話している内容に客観性が生まれます。その客観性は子どもにとって新鮮で、ああ私はそんなふうに先生に見られてたんだなと、自分をひとつの対象として味わうことを子どもは知ります。

面談のときに「あなたは次からこうしなさいよ。」と上から説教ばかりするようでは、いい面談とは言えません。
なぜなら、子どもはそうやって上から押さえつけらている限り、子ども自身から自分自身の意思が生まれることはないからです。

面談はぜひ本人の本来の考えや意思が思わず表出するような現場になれば理想的だと思います。
そのためには、ジャッジされないままに子どもが自分自身を味わう時間を作ることが必要です。

受験生の面談の際には、当然もっとがんばろうとはっぱをかけるようなことを言うわけですが、それだけでは不十分です。
受験生にはまず、率直に現状(現在の成績状況や合格可能性など)について本人に変に肩入れすることなくできるだけクリアに伝えます。そして、お母さんやお父さんとA高校は部活的にはいいけどちょっと遠いよねとか、B高校は部活はいまいちだけど校風的には本人にあってそうとか、そういう話をします。このとき、本人は置いてけぼりでいいんです。大人たちが半ば無責任に高校についていろいろな話をしていると、子どもは勝手に「じゃあ、私はB高校がいいかな。」とか考えはじめるんです。
このときに初めて子どもは自分の内なる欲望を発見します。それは、大人が「あなたどこに行きたいの?」と無理に子どもから希望を聞き出そうとするより、子どもの自然な意思が出てくるという意味でずっと有効な手段です。ときには、大人たちがそうやって話していても、子どもからはっきりとした答えが出ないこともあります。でもそれでいいんです。自分の欲望を発見した子どもは来たるべきタイミングで自分の意思に基づいて動き始めます。

こうやって自分の欲望を発見し、それに基づいた選択をした子どもには何らかの手ごたえが残ります。その手ごたえが、将来の彼らを支える一つの拠り所になったとしても、それは不思議なことではありません。

面談を叱咤激励の場と考えるのはちょっと視界が狭くて、子どもたちの欲望が生まれる現場になればと思いながら面談をしています。




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by terakoyanet | 2019-11-18 07:08 | 寺子屋エッセイ(読み物) | Trackback | Comments(0)