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【明日のNHKで放送】今年のディスカッション授業のこと

明日のNHK18:10~のロクいち!福岡で、コロナ禍の中、唐人町寺子屋の高校生ディスカッション授業がどのように行われたのか、特集で放送されます。取材をしてくださった豊田記者の頑張りには目を見張らされるものがありました。
うちの教室がどうこうというより、高校生たちが本当に生き生きとしているので、ほんとうにぜひ見ていただきたいです。

番組の取材をいただいた高校生ディスカッションは、本校の非常に特徴的な授業のひとつで、唯一受験に直結しない、でも、圧倒的に自分の言葉を身につけることができる授業です。

今年は高校生7名による授業(というより対話)が行われており、毎回ほんとうに刺激的な時間になっています。

ディスカッションの子どもたち一人ひとりの発言をこちらで拾ってご紹介することはできませんが、いったいどんな内容のことを話しているか、授業のレジュメ内容をこちらでご紹介したいと思います。


◇2020年第1回(4/19 ZOOM遠隔で実施)
トークテーマ コロナ禍の世界、日本、そして私たち


Topic 1 休校下の生活 福岡県 緊急事態宣言(特定警戒都道府県)


Topic 2 情報とのつき合い方 


Topic3 コロナ禍と民主主義


人間は確かに動物である。だから動物を管理するように管理すれば感染は防げる。でも同時に人間は動物では「ない」。そのことの意味を、絶対忘れてはならない。        

AERA 4/20 「eyes 東浩紀」より


私は皆さんに保証したい。自由に旅行し移動する権利を得るのがとても大変だった私のような人間に言わせれば、こうした制限は絶対的な緊急時にしか正当化されません。民主主義社会では決して軽々しく発動されてはならず、暫定的でないといけない。しかし今は、多くの命を救うために欠かせないのです。      

論座 藤田直央(朝日新聞)メルケル独首相 テレビ演説より




◇2020年第2回(4/26 ZOOM遠隔で実施)
トークテーマ コロナ禍の世界、日本、そして私たち その2

Topic1 国家とは何か

国家権力とは何か? 国家がみずからの命令や法に(人びとがそれに納得しているかどうかにかかわらず)人びとを従わせることができるのはなぜか?

理由:国家は最終的には暴力(物理的力)をもちいることができるから。(国家はみずからの命令に背いた人間を逮捕し、処罰することができる。物理的な力の行使が大規模になると、戦争までいきつく。)
「権力」とはたとえ相手がイヤだと思ってもこちら側のいうことに従わせることができる「可能性」のこと。ここで相手を従せる可能性を保証するのは暴力だけではない。(たとえば会社は給料や昇進への希望、「クビにするぞ」というおどし等によって、従業員を従わせ、働かせる。教師は、及第させるか落第させるかをきめる権限をもつことで、遊びたい生徒に勉強させることができる。これらも一種の権力。)しかし、国家はその可能性を、暴力(物理的力)の行使によって確保するところに特徴がある。国家権力の源泉は暴力の行使にある。

暴力は、それを恐れる者であれば誰にたいしてでも権力を発動することができる。暴力はあらゆる文脈をこえて権力をもちいることを可能にする。暴力の前では、他の権力源泉はほとんど機能することができない。しかも国家は法に基づいて暴力をもちいることができる。「国家とは合法的に暴力行使を独占する組織」(M.ウェーバー) だからこそ国家は、あらゆる組織や制度、集団を超えて、社会のなかに至上の権力(=主権)として君臨することができる。ー参考文献『国家権力とは何か』 萱野稔人

Topic2 コロナ禍と国家
◎デジタル感染追跡システム
→これらのシステム構築を国民が歓迎=自らで監視社会を歓迎する国民たち
→しかし、これらが国家権力(政府・警察など)に利用された場合どうなる?非常時非のみの対応にははならず、国家権力は新たな特権を手離したたがらない性質を考慮すべきではないか

Topic3 コロナ禍と人々の怒り

Topic4 高校生の不安と怒り


◇2020年第3回(5/10 ZOOM遠隔で実施)
トークテーマ 勉強を哲学する


Topic 1 なぜ勉強しなくちゃいけないんだろう?


Topic 2 しなくちゃいけないという問い方に疑問を持たなかった人へ


Topic 3 千葉雅也『勉強の哲学』

①勉強とは、これまでの自分の自己破壊である 

身近な環境になじんできた自分を客観視することで環境から引きはがし、別の考え方(言葉の使い方)をする新しい環境に引っ越すこと 

言葉を言葉として意識していない状態から、言葉を言葉として意識している状態への移行


②アイロニーとユーモア

アイロニー・・・自分が従ってきた環境を客観視し、それを疑うことでツッコミ(=批判)を入れ、真理を目指すこと

ユーモア・・・環境に対してボケをかますこと。つまり、これまでの1つの見方に縛られがちな環境に対して、別の見方を提示し、見方を多様化すること


⇒アイロニーは過剰になると、「絶対的に真なる根拠を得たい」という欲望になる。でもそれは実現不可能。だからアイロニーを過剰化させずにユーモアで折り返すことが推奨される。

⇒事実上私たちの言語使用では「ある見方」が仮固定されるもの。それは「こだわり」となってユーモアを切断してしまう。「こだわり」を固定的なものとみなすとそれは運命的に私たちを縛る。「勉強」はそのような「こだわり」を変化させ続けるもの。


Topic4 将来のためにいまを犠牲にすること


満ちたりた将来のためにいまできるだけがんばっておこうという論理、これは未来の幸福のために現在をとてつもなく貧しくする論理である。そのような論理にしたがって生きるひとたちは、老いれば老いたで、今日じぶんがあるのは…と過去をふりかえるのだろう。つまり過去の自分の延長線上にいまの自分を設定するのだろう。いってみれば、じぶんを過去の「実績」から逃げられなくするのだ。

老いの充実というのは、多くの場合、過去の栄光の記憶にのっかっている。あのときがんばっておいたから、いまこうしていられる…。「幸福な老年」とは、いままでの自分の業績に満足している状態である。つまり、過去の記憶とそこから生じた財によっかかって生きることである。ということは、別の生きかたというものをあらかじめ封じ込める生き方のことである。それは確定した過去の延長線上でなりたつ現在であり、したがってこの充実した老いはますます限定された狭い世界に入っていく。変化すること、存在がめくれることをみずからに禁じるような生きかたである。ー鷲田清一『じぶん・この不思議な存在』



◇2020年第4回(5/17 ZOOM遠隔で実施)
トークテーマ 幸福とは何か 

Topic 1 あなたは幸福ですか?


Topic2 幸福とは何か? 

社会学における「消極的幸福」「積極的幸福」

①消極的幸福…飢えや寒さ、命への脅威がなく病気や重労働など不幸や不安に苛まれない状態マイナスをゼロにする考え方

②積極的幸福…家族の幸福のため、自己実現のために物質的に豊かになること

高度経済成長期 物質的に豊かさになること=人(家族や世間を含む)から認められることと直結していた

成長神話⇒今日よりも明日がよくなることを誰もが信じていた豊かになる⇒人から認められる

=幸福の時代

③新しい消極的幸福…不安を煽り、不安を過度に共有しようとするマスコミや世間マイナスの疑似体験からゼロを得ようとする時代に


⇒モノを買うことでモノの向こうにある幸福を手に入れようとするのではなく、幸福を直接手に入れる方法を考える必要がある


Topic3 幸福を直接手に入れるとは?


①自分で気づかなかった自分の内部とつながること

「はまる」行為


*cf.人類の近代3大発見  

1)コペルニクス 地動説 地球は世界の中心じゃなかった!  

2)ダーウィン 進化論 ヒトは神の分身ではない!?  

3)フロイト 無意識ヒトは自分自身さえわからない!?


②社会や身近な他人とつながること

定年後の再就職や大学院進学災害支援、ボランティア
ー山田昌弘『幸福の方程式』



◇2020年第5回(5/24 今年度初の対面授業)
トークテーマ 学校について 

Topic 1 休校期間の学校の対応と学校の再開について(オンライン授業の感想も)

Topic 2 学校は好き?  
先生・授業・友達・学校行事など         

Topic 3 学校の目的教育基本法における教育の目的・目標

教育基本法1条(教育の目的)
教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。

⇒これをどう思いますか?

教育基本法2条(教育の目標)
その目的を実現するため、学問の自由を尊重しつつ、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。

⇒以下から1つ話題を取り上げてそれについて対話

・幅広い知識と教養を身につける。  
・真理を求める態度を養う。
・豊かな情操と道徳心を培う。      
・健やかな身体を養う。
2
・個人の価値を尊重する。
・個人の能力を伸ばす。
・創造性を培う。
・自主・自立の精神を養う。
・職業及び生活との関連を重視する。
・勤労を重んずる態度を養う。
3
・正義と責任を重んずる。
・男女の平等を重んずる。
・自他の敬愛と協力を重んずる。
・公共の精神に基づく。
・主体的に社会の形成に参画する。
・社会の発展に寄与する態度を養う。
4
・生命を尊び、自然を大切にする。
・環境の保全に寄与する態度を養う。
5
・伝統と文化を尊重する。
・それらを育んできたわが国と郷土を愛する。
・他国を尊重する。
・国際社会の平和と発展に寄与する態度を養う。

Topic 4 これからの学校           
こういう学校をつくりたい



今年はこのような内容で授業を行ってきました。
明日の放送は楽しみですが、これからますます面白くなっていくであろう子どもたちの変容がほんとうに楽しみです。


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by terakoyanet | 2020-05-27 21:24 | 雑感・授業風景など | Trackback | Comments(0)