『おやときどきこども』ご紹介 第2章

6月末に刊行される『おやときどきこども』ですが、新しい紹介文が公開されています。

「大人はデフォルトで絶望のくせに、子どもに希望を持てとかほんとダサいし。私はそもそも絶望してないから。私の言ってること、わからないでしょ。」

「正しさ」を手放したところから始まる、新しい人間関係のあり方をリアルな事例とこれまでにない考察でつづる本。
福岡市のど真ん中で小中高生たち150余名の子どもたちと日々奮闘する著者が、まさにいまの親子が抱えるリアルな問題を、子どもたち自身の生き生きとした語りを通して描き出します。

私たちはいつのまにか大人になる過程で、子どものころの私の声を失ってしまった。
だから、私はいま目の前にいる子どもと交われないんじゃないかな。
子どもの声を聞いて、もう一度、私の声を取り戻す。
この本には、そのための心で温めたいストーリーが詰まっています。

東浩紀さんの『ゲーム的リアリズムの誕生』、國分功一郎さんの『中動態の世界』、齋藤環さんの『オープンダイアローグとは何か』をはじめ、平成から令和を代表する人文書を通して、現代の子どもや家族の問題を取り扱っていますので、取っつきにくい専門書の入門編としてもおすすめ。現代思想を「実装」すると教育はこんなふうになるのか、という臨場感に溢れています。そして、子どもたちが紡ぎ出すストーリーの奥からは、最果タヒ、米津玄師、マヒトゥ・ザ・ピーポーら、現代のアイコンたちの歌が響いてきます。


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今日は2章のご紹介です。
2章は、「大人の葛藤の中身」。今回の本は明確に「子ども」を主人公としているのが『親子の手帖』と一線を画しているのですが、この章は唯一「大人」が子どもに接する際のエラーをさまざまに取り扱っているという意味で、『親子の手帖』に連なる内容になります。

2 大人の葛藤の中身
子どもは簡単に自分を責めてしまう/よそよそしい家族/がんばっているのに、成績が伸びない/子どもの生き方は、もう決まっている/思春期の子どもがわからない/呪いでない宝はない/えこひいきする先生/遊びと企て

電話をかけてきたお母さんは、子どもの葛藤を知っています。ちゃんとがんばらなくちゃと思っているのに、さまざまな理由からしんどくて立ち向かえない彼女のことを知っています。知っているからできるだけ彼女に寄り添って応援しようとします。ときには具体的にあれこれと援助しようとします。それでも、子どもからすれば、親の行動は初めから結論ありきの大人の考えの押しつけと感じられてしまうので、鋭く反発します。お母さんにとっては、子を思う気持ちからよかれと思ってやったことですから、それが反発という形で無下に扱われるとどうしても怒りの感情が噴き出します。「いつも同じことばっかり言わせて。いい加減にしなさいよ。そんなことならもうやめてしまいなさいよ。」ついお母さんは子どもにきつい言葉を投げ掛けます。すると子どもはさらに反発を強め、ますます会話が成立しなくなります。
こういうときどうしたらいいでしょうかと、お母さんたちからたくさんの相談を受けてきました。


ふだんから「僕は勉強が苦手」だと言うある男の子。算数のテスト中に手が止まってしまった彼と目が合ったので、私は「が・ん・ば・れ」と口の動きで伝えました。すると、とたんに彼は口元をきゅっと結んでもう一度答案に取り組み始めました。私はその一瞬の彼のまっすぐさをいとおしく思いました。相対的な苦手意識より、彼の中にある絶対的な「好き」こそを発掘して、いっしょに味わっていきたいと思いました。


2章は、宿題のことで責めを受けたことをきっかけに学校に行かなくなった寿焼(としあき)くんの話から始まり、そして家庭内の葛藤を抑圧するばかりにあるよそよそしさをまとってしまった家族の問題、「良い子育て」の問題点などを取り扱っていきます。さらに、思春期の子どものことがわからなくなるのはなぜなのか、ということを具体的にほぐすような話をしたあと、親が子どもにかける「呪い」について、決してそれが一面的に負のものとして捉えられないことを明らかにします。最後に、私たちの日常生活の行動様式を「遊び」と「企て」に分けて考えることで、「遊び」を脱ぎ捨てて「企て」に身を投じることが「大人」になることである一方で、「企て」はいつまでも満たされない自己否定の循環であり、それが「大人」の病であることを明らかにしていきます。







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by terakoyanet | 2020-05-31 07:50 | おすすめの本・音楽 | Trackback | Comments(0)