『ものがたり ゆんぼくん(上・下巻)』 西原理恵子著
2007年 04月 21日
物語では、主に、イガグリ頭がかわいいゆんぼの成長と、破天荒なそのお母さんが描かれています。
そこには親子愛が描かれていますが、しかしその中身はなかなか過激です。
ゆんぼは家出して誰かの別荘に空巣に入ってしまうし、お母さんは誰かの墓石に登って果物をとったり、墓石を漬物の置石にしてしまったりします。
これらはもちろん悪いことです。作者もゆんぼやお母さんが悪いことをすることを肯定しているわけではありません。
ただ、この物語を通してわたしたちが教えられることは、自分の頭で考える、ということです。
先に善悪を定めてしまって、善いことだからする、悪いことだからしない、と割り切ってやっていくのは、もちろん間違ったことではないし、楽で安全なことです。
一方で、この物語のゆんぼとお母さんは考えます。自分がそのとき置かれている状況でもって自分がどのような行動を取ればよいか考えます。それは決してご都合主義というわけではなく、そこにはむしろ既成の善悪観に流されない強さがあります。
以前、うちの塾には規則がありませんでした。私は、子どもたちが、規則なんかなくても、自分の頭で考えて行動を取ってくれることを願い、信じていました。私は子どもたちが自分の頭で考えることができるようになることを願い、ある意味私はそのために指導をしているのだ、と考えていました。
でも、あるとき規則が必要だと感じるようになりました。まだ自分で考える用意ができていない子どもたちを責任持って預かるには規則が必要だと感じるようになりました。そしてその規則を守るという練習は、人間の信頼関係をつくる大切な練習になりうると考えるようになりました。これはいまでも間違ってはいないと感じています。しかし、一方で、規則が必要なのは、大人のそれこそご都合主義的な面があることは否めないとも感じています。
私は上からの押付けで既成の善悪観をたたきこむのではなく(このようなことをしたら、子どもは自分の力で考えることができなくなります)、あくまで自分で考える力を養ってほしいと思っていますし、これからもそれを教えるべく指導していくつもりです。
ということで、わき道に逸れてしまいましたが、『ゆんぼくん ものがたり』は、いま書いたようなことだけでなく、懐広く、私たちに、いろいろなことを考えさせてくれたり、わたしたちの心をほぐしてくれたりします。ぜひ、読んでみてください。
よかったらどこの出版社からでているか教えていただけますか。
通りすがり様、コメントありがとうございます。
出版社は竹書房文庫です。またぜひページをのぞいていただけたらうれしいです。