寺子屋ブログ by 唐人町寺子屋

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カテゴリ:おすすめの本・音楽( 103 )


2018年 09月 15日

『本を贈る』を読む。

本を手に持ったとたんにびんびんと伝わってきた。この本は、本を心底愛している人たちによって作られている本だということが。

何て、本らしい本。
凛と角ばっていて、ページをめくりやすくって、言葉のひとつひとつがしっかり目に飛び込んでくる。


私はいまこの本を読み始めてわずか45分。
本のはじめから120ページ、編集者の島田潤一郎さん、装丁家の矢萩多聞さん、校正者の牟田都子さんの3人の文章を読んですぐにパソコンの前に座って文章を書き始めたところだ。(つまりまだ全体の半分も読み終わっていない。だから、まだ読み終わっていない人が書いているという留保つきで、この文章を読んでください。いっしょに「読み始め」の感覚を味わってもらえたら。)

本というのは読んでいると途中で弛緩することがあるのだけど、この本はちょっと違う。本を愛している人たちが意図せぬうちに絶妙なチームワークを生み出し、言葉のリレーを繰り広げる。まるで、運動会のリレーのように、走者たちがバトンを渡すたびに見る者の高揚感は高まる。この本は、まさにそんな感じだ。(その高揚感をそのままに、4人目にバトンを渡そうとする所作だけ最後に確認して、もう文章を書き始めてしまった。)

島田さんがこの本の冒頭に言葉を綴ったのは、きっとこの本にとっての幸運だ。島田さんの言葉の中に、ひとつの「全体」の話があった。これは、私が思うに本が持つ最も根源的な力だ。こんな話から始まるこの本はすごいと思った。そしてこの本もそのままで、ひとつの「全体」を体現するものになっているんじゃないか、そんなことを考えた。

島田さんの言葉でもうひとつ印象に残ったのは、「具体的な読者のために仕事をしたい」という話。私自身、何か文を書いているときに、一般とか大衆とかいう言葉がピンとこない。具体的な読者しか、逆に想定できない。だから島田さんの言葉に勇気をもらった。具体的な読者、目の前のあなたに向けて書いていることが、どこかで見知らぬ誰かとも、少しだけ交わることを信じたいと思う。


矢萩多聞さんの中1で学校をやめてインドから日本の友だちに何百通も手紙を送ったという「ビョーキな趣味」の話を読んでいると、子どものころに私も何かを人に伝えたいという強いビョーキの衝動を持っていた時代があったことに気づかされた。小学校時代は毎日新聞を書いて、初めは壁新聞として貼りだしていたけど、それでは物足りなくなって、新聞を毎日学校の印刷室で刷ってクラスのみんなに配るようになった。(よく先生が認めてくれたものだと思う。)中学では毎週寝不足になりながら原稿を書いて、給食時間に図書館アワーという全校放送を1年間続けた。1年間続けた最後の日、給食の終わりかけの時間に教室に戻ってきた私に対し、担任の村石先生が、一年間、こんなに内容のある素晴らしい放送を続けられるものではない、みんな拍手を!とクラスのみんなに拍手を求めてくれたことは忘れない。どこかで自分の趣味でやっているだけ、という引け目のような気持ちが巣くっていたから、先生が認めてくれたことで、どれだけ救われたか。そんな少年時代のことを思い出した。

矢萩さんの言葉で印象に残ったのは、この章のタイトルにもなっている「女神はあなたを見ている」。この言葉は、きっとこの本がこの世に生まれた意味そのものを示しているので、ここで説明してしまっては余りにもったいない。物事を大切にいとおしむことを知っている矢萩さんの文を通して、この本を読む人に、この言葉を味わってほしいと思います。


そして3人目のバトンは校正者の牟田都子さん。「ものを知っている」というよりも「調べ方を(人よりも多少)知っている」という校正の仕事の本質の話、しかしその校正という行為自体は「読む」というよりも「耳をすます」ことであるという話。
私も昨年初めて本をつくって、校正の方と、そして自分が書いた得体の知れぬ言葉と、格闘し、会話をした。そうか、校正というのは、こんなにあったかくて、真剣な仕事なんだと、そこには確かに血の通った会話があったと、牟田さんの言葉を読んで、改めて深く噛みしめた。
私は本を書きたいとか、本を出したいとかそんなことではなくて、究極にはこういう会話がしたいだけなんだ、そのことが、次の本のことについて考えているこのタイミングで確認できてよかったと思う。


普段、感傷的すぎることは恥かしいと思い、自分のことについては極力書かないようにしているのですが、この本は、あまりに自分に寄せて読むことができる本なので、前半を読んだだけですが、つい長文を書いてしまいました。

とらきつねには昨日入荷しました。ぜひ手にとって読んでみてください。

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by terakoyanet | 2018-09-15 04:08 | おすすめの本・音楽 | Trackback | Comments(0)
2018年 08月 27日

さくらももこさん

さくらももこさんの訃報を受け、ショックを受けています。

さくらももこさんのことは、多くの人と同じようにちびまるこちゃんで知りました。中学生のころ。

それから、マンガをむさぼるように何度も読んだのは、いまから考えれば、生まれて初めて自分の感性にとても近いと感じるものが描かれていて、それがとてもうれしかったのだと思います。


ちびまるこちゃんはもちろん面白いけれど、『コジコジ』と『神のちから』はとんでもない傑作で、さくらももこの頭の中は決して「ほっこり」なんかじゃない、いびつでキテレツなものに溢れていること、彼女には天賦の才能があることを思い知らされました。


きっと根っこがとてもやさしいんです。

だから、何度励まされ、何度元気づけられたことか。

まだ、いまいち実感がわかないけれど、さびしい気持ちです。





こちらのブログでは、ちょうど10年前に、一度だけさくらさんの漫画を紹介したことがあります。





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by terakoyanet | 2018-08-27 22:36 | おすすめの本・音楽 | Trackback | Comments(0)
2018年 06月 26日

ブックレビュー 2018年6月

私たちは、自分が正しい道を歩んでいると信じていたいし、そうでなければならないと思っている。でも、その「正しさ」についてちゃんと考え抜いているのかな、「正しさ」さえも私たちが自分が生きるために必死に作り込んだストーリーでしかないかもしれない。尹雄大さんの新刊『脇道にそれる <正しさ>を手放すということ』を読むと、そのことに気づかされ、考えさせられます。

共感によって手に入れようとした安心には、根がまったくない。それでも互いに「わかるよ」と頷きあっている関係さえあれば、たとえ中身が紛いものであっても「自分は孤絶していない」という手応えは確かに感じられる。私は現実ではなく、現実らしさを望んでいたのだった。(本文より)

私は私であることを恐れ、常に何者かになろうとする。自己実現とは、ありのままの自分になるという意味ではなく、常に評価される何者かになろうとしていまの自分を超えようとすることを指す。その何者とは、「理想」でありやがて達成されるであろう自己だ。いずれも像でしかなく、現実ではない。よくできた贋物でしかない。(本文より

第 1 章で、読者の胸を刺す<贋物である私>の指摘から始まるこの本は、第 4 章のべてるの家、しょうぶ学園といった、脇道にそれることを厭わない人たちへの取材を通した話で終わる。そういうこの本もひとつの「ストーリー」であり、それを欲する私たちもまた、自らの「ストーリー」に寄与するものとしてこの本を望んでいる。この本に出会った人が、自分のストーリーを大切に抱えながらも、「正しさ」や「信念」といった呪縛から解き放たれることを願っています。

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熊本・橙書店の店主、田尻久子さんの本、『猫はしっぽでしゃべる』。橙書店といえば、創刊以来とらきつねで販売させてもらっているアルテリの版元でもあります。

熊本地震のあと、移転した橙書店に行ったとき、以前と同じ匂いがする、と安心した人は多いでしょう。本の中にも「同じ匂いがする」と言って涙ぐむ人が出てきます。(決して湿っぽくはならないのですが。)地震の前も後も変わらずに営業を続ける書店員田尻さんの日常が淡々と綴られます。

いつも橙書店で執筆をしている坂口恭平さんのことが書かれた章があります。これを読んだあとに、本に付属している小冊子の坂口恭平さんの文章を読むと、心を深く動かされます。

田尻さん(恭平さんは久子ちゃんと呼ぶ)は何もジャッジしない、いつも「それでいいよ」「大丈夫」と言う。それは単に「否定」の対極にある「肯定」ではなくて、あなたの存在を無償で受け入れるからあなたは好きにしなさい、そういった、自分の存在に確かな囲いを与えてくれる場所としての「橙書店」が明らかになる場面です。人に救いを与えるというのは、本当はこういうことなんだろうな、そう感じます。
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写真集としては異例ともいえるロングヒットで24刷が決まった(おめでとうございます!)川島小鳥写真集『未来ちゃん』。

子どもというのは私たち大人とは別の世界に住んでいて、その世界はきっと宇宙より広いんだ。そのことを思い知らされる本です。

未来ちゃんがこうして確かに存在した一瞬を思うと、思わず涙が出るほど心揺さぶられるし、そしてたったいまも日本で、世界中で、きっと未来ちゃんが元気に駆け回っているのだろうということを信じることができます。そして、未来ちゃんがいる限り、私たちも絶望なんてしてられない、そう思うのです。

ナナロク社の本を多数入荷しました。『未来ちゃん』もサンプル本とともに展開中です。ぜひお手にとってみてください。

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失ってみてはじめて分かったことだが信頼は、生きることの基盤をなしている。自己への信頼も、他者との信頼の間に育まれる。心を開いてくれる他者と出会えたとき人は、他者との間だけではなく、自己との新しい関係をも結ぶことができるのはそのためだ。

心を開くとは、他者に迎合することではない。そうしてしまうと相手だけでなく、自己からもどんどん遠ざかってしまう。むしろ、心を開くとは、自らの非力を受け入れ露呈しつつ、しかし変貌を切望することではないだろうか。(本文より)


日経新聞に連載されたエッセイが単行本になった若松英輔さんの『悲しみの秘儀』。一冊の本のことを「誠実な読み物」と呼ぶのは、無粋で野暮なことだとわかっているけれど、それでも、これほど誠実さが身にしみる文章というのは、なかなか出会えないのです。悲しい(愛しい、美しい)生の中に生きる、全ての大人たちのために綴られた文章
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昨年、哲学者の中島義道さんをお呼びしたイベントの際に、ある来場者の方から、「高橋源一郎さんは、呼ばれないんですか。」と尋ねられました。彼女にとって、中島義道さん、高橋源一郎さんのふたりが、長年のアイコンらしく、また、随分毛並みの違うお二人が好きなんですね、なんて話をしたのを覚えています。高橋源一郎さん、お話ししてもらったら、そりゃあもう、面白いでしょうね。

高橋源一郎さんの新刊、『 お釈迦さま以外はみんなバカ 』 ( 集英社 ) を入荷しました。古今さまざまな本を題材に、さまざまに繰り広げられる四方山話。唸ったり笑ったりしているうちに、心がほどけてくる面白い本。松岡修造のどこがすごいのか、なんて話も、気軽なのに説得力のある言葉で綴られています。そして、本のどこから読んでも楽しいのが、また、ありがたい。攻めたタイトルも好きです。
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by terakoyanet | 2018-06-26 02:00 | おすすめの本・音楽 | Trackback | Comments(0)
2018年 05月 21日

ブックレビュー 2018年5月

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鈴木潤『絵本といっしょに まっすぐまっすぐ』

まっすぐであったかい絵本ガイド。
メリーゴーランド京都の店長、鈴木潤さんによるこの本は、絵本と私たちの日常は繋がっている、そういう、何気ないけれど、なぜ私たちにとって、本が、絵本が、こんなに愛おしいのか、そのことを改めて教えてくれる本です。

絵本が好きな方なら、私がご紹介するまでもなくご存知かもしれませんが、メリーゴーランドは、四日市と京都にある子どもの本専門店。子どもと世界が穏やかに繋がるためのイベントや、毎月本が届くブッククラブなどの活動も知られています。この本に出てくる数々の絵本たち。絵本がかなり好きな方でもきっと新たな発見があります。思わず付箋だらけになってしまう人もいるかも。

この本では、鈴木さんの日常と、絵本の紹介がパラレルに進んでいくんです。そして日常の喜怒哀楽やささやかな思いや気づき、そういったものに絵本がそっと寄り添っている。そのシンクロニシティに思わずぞくぞくっとするのです。ページをめくるたびに、本はなんて柔らかで頼もしい存在なんだろう、そういう実感がふつふつと沸き起こるこの本は、間違いなくいい本です。帯文は詩人の谷川俊太郎さん。こちらの本、現在とらきつねの「子どもと本」のコーナーで展開中です。


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植本一子『降伏の記録』

それでも植本一子を全て肯定したい。私がこの本を読み終えたときの率直な感想です。

夫である石田(ECD)さんが癌になり、心身を壊していくなかで書かれたこの本。

本に綴られる内容、特に後半の内容というのは、何で書かなくてもいいことまで書くのか、人の気持ちを何だと思っているのか、人間としてどうなのか、そういった、さまざまな批判を呼んでいます。

でも、この本に綴られている内容を通して私たちが痛烈に知りうることは、自分を愛すること、人を愛することは、わからないことと矛盾ばかりだということ。正解なんていつまでもたどりつけるものではないこと。自分自身の足元を掘り下げれば、当然醜いものが現われ出ることだってあるし、それがいわゆる社会的常識や社会倫理から逸脱する可能性だってある。正直で率直と言ってしまえばまるで美しいことのようだけれども、そうではなくて、この本を読んだときの違和感に当てられる感覚というのは、それ自体がほんとうでまっとうで、それは、白昼堂々と虚言・妄言が繰り返されるこの世の中で、信頼に足るわずかなことのうちのひとつ、そんな気がするのです。

『降伏の記録』は単体で読むことも可能ですが、彼女の『かなわない』『家族最後の日』を読んだあとに読むと、読後感に拡がりが増します。『かなわない』と『家族最後の日』は苦しい育児をしている方にも読んでほしいです。
植本一子の3部作『かなわない』『家族最後の日』『降伏の記録』はとらきつねにてお取り扱い中。

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佐々木正美『子どもへのまなざし』【発刊20周年】


子どもにとって自分が本当に愛され、たいせつにされていることが、実感できるように育ててあげることが、まずもって非常に重要なことです。

子どもは親を信じているから反抗しているのだと、認識していればいいのです。いわゆる反抗期は、三歳前後、就学前後、それに思春期にありますが、この時期は同時に、子どもが急速に成長や発達をする時期です。

教育とか育てるということは、私は待つことだと思うのです。「ゆっくり待っていてあげるから、心配しなくてもいいよ」というメッセージを、相手にどう伝えてあげるかです。子どもにかぎらず人間というのは、必ずよくなる方向に自然に向いているわけです。


児童精神科医の佐々木正美さんによる子育て本の新しい古典『子どもへのまなざし』(福音館)は発売から今年で20周年を迎えました。決して色褪せることのない子育ての基本的な考え方が、心に留まる読みやすい言葉で綴られています。


佐々木さんのまなざしの確かさに触れてみてください。子どもに心を向けるというのはどういうことなのか、丁寧に詳細に書かれた唯一無二の本です。とらきつねの「子育ての本」のコーナーで展開中。


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須賀敦子『須賀敦子詩集 主よ 一羽の鳩のために』

今年没後20年の須賀敦子。イタリア留学中の1959年、須賀敦子が30歳当時に書いていた詩が発見され、このたび纏められました。

彼女がエッセイで見せる硬度はそのままに、でも、その詩たちは眩しいほどに瑞々しい。
静かに自らの魂を見つめ、そして、ある光を希求する日々のゆらぎがそのまま封じ込められた一冊です。池澤夏樹の読み応えある解説も。

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石川直樹『極北へ』

ぼくの知らないところでシロクマがアザラシに食らいつき、浜で動けなくなって死ぬ。誰かがぼくの携帯電話を鳴らし、そこでは昼夜を問わず忙しく働いている人がいる。そういう世界に生きていることを、ぼくは孤高の島の上であらためて知る。

石川直樹さんの文章を読むときに、心臓が脈打ち、呼吸が苦しいと感じるのは、生と死の間隙に憑りつかれた彼の営為とその息遣いが、私たち自身に駕り移る(のりうつる)からに他ならない。「極北」には生の営みの極限がある。その隣には常に死が横たわっている。石川直樹さんの新刊『極北へ』は、そのような「極み」をこの目で見極めたい、そんな人に読んでほしい本です。

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『現代思想 総特集 石牟礼道子』

石牟礼文学の総力特集。初期の未発表作品も収録されています。

石牟礼文学というのは、闘争の話ではなくて、水俣病という苦しみの話でもなく、「この世界でうまく生きられないように感じている人」すべての人のもの(赤坂真理 さん)

同郷の渡辺京二 さん、伊藤比呂美さんや、金時鐘 の「光州詩片」の一部を引用した姜信子さんをはじめ、エッセイを寄せた人たちの文章に魂が宿っていると感じさせるのは、石牟礼さんの命の欠片が私たちの世界の片隅にずぶりずぶりと刺し込まれている証左でしょう。


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安野光雄『はじめてであう すうがくの絵本』

お子さんが4・5歳くらいになったらお家の絵本棚に置いておいて、自分から読み進め始めたらチャンス。クイズを解く気持ちで一緒に読んでみてください。

数学っていまいちなじまない、そう思っている親にこそおすすめです。ああ、そうか、数学ってこういうふうに私たちの周りに存在しているのか、と実感できるんです。それを子どもと共有する喜び。

決してこの本を使って、数学を教育しようなんて思わないでほしいんです。子どもがこの絵本から受け取っているものをそのままに信じてあげてください。

この本には数学の本来性がぎゅっと詰まっています。1〜3巻まで読めば、基礎的な数の概念が身につく構成になっていることには、思わず唸ってしまいます。

そして何より安野光雄さんの絵の奥深い可愛らしさ。
全ての子どもが数学と幸福に出会えますように。





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by terakoyanet | 2018-05-21 08:05 | おすすめの本・音楽 | Trackback | Comments(0)
2018年 05月 01日

森田真生『数学する身体』を再読。

ロンドンに向かう飛行機の中で、先ごろ文庫版が出たばかりの、森田真生『数学する身体』を再読しています。
この本は、私の中では過去10年に出た本のうち、最も刺激を受けたもののひとつです。


不安の中に、すなわち間違う可能性の中にこそ「心」がある、そのことを知り抜き、数学を通して「本当の心」に辿り着こうとしたチューリング。
物理的な「個」の肉体の中に閉じ込められた「心」の本来の広がりを、数学を通して取り戻そうとした岡潔。

2人の数学者を通して見えてくるのは数学の真理のようなものというよりは、ふだん私たちが閑却の彼方に置いている、思考という営みを続ける私たちの身体の生成と動きそのものの姿。そして、むしろ私たちが日々求める真理のようなものが、いかに特殊で限定的な思い込みであるかということをまざまざと知らされるのです。驚異的なほど腑に落ちる本。


数学なんて無理、そう思う方でも大丈夫です。本に登場する、虚数も解析関数もわからなくていいんです。
わからないところは読み飛ばしても、この本の核心は掴めます。
だってこの本は、数学という名をまとった、哲学の、生き方の本ですから。まさにいま読むべき本です。

大人に、そして高校生に、ぜひ読んでほしい。
数学は、単に計算を扱う学問ではないよ。

現在、とらきつねで取り扱い中です。

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by terakoyanet | 2018-05-01 07:14 | おすすめの本・音楽 | Trackback | Comments(0)
2018年 04月 17日

『親子の手帖』お取り扱い店舗一覧(4月17日現在)

重版出来の『親子の手帖』。お取り扱い店が全国に拡大中です。

それぞれの街のお知り合いの方にお伝えください。

ここにもあったよという情報もお知らせいただければ幸いです。



◎4月17日現在のお取り扱い店 (*在庫状況はお店にご確認ください。)

【東京】
・荻窪 本屋title
・吉祥寺 ブックスルーエ
・吉祥寺 ジュンク堂書店 吉祥寺店
・世田谷 本屋B&B
・多摩 ジュンク堂書店多摩センター店

【埼玉】
・大宮 ジュンク堂書店大宮高島屋店

【新潟】
・笹口 ジュンク堂書店新潟店

【岐阜】
・岐阜 ジュンク堂書店岐阜店

【静岡】
・静岡駅前 戸田書店 静岡本店
・鷹匠 MARUZEN&ジュンク堂書店静岡店
・鷹匠 水曜文庫

【愛知】
・栄 丸善 名古屋本店
・栄 ジュンク堂書店ロフト名古屋店
・東山公園 ON READING

【京都】
・河原町丸太町 誠光社
・河原町三条 丸善京都本店
・四条河原町 メリーゴーランド京都
・四条通り ジュンク堂書店京都店
・一乗寺 恵文社 一乗寺店
・浄土寺 ホホホ座

【大阪】
・茶屋町 MARUZEN&ジュンク堂書店梅田店
・堂島 ジュンク堂書店大阪本店
・松屋町 TORI FOOD by トリ風土研究所

【兵庫】
・明石 ジュンク堂書店明石店
・三宮 ジュンク堂書店三宮店
・三宮 ジュンク堂書店三宮駅前店
・西宮 ジュンク堂書店西宮店

【鳥取】
・湯梨浜 白線文庫(HAKUSEN内)

【広島】
・広島駅前 ジュンク堂書店広島駅前店
・本川町 READAN DEAT

【愛媛】
・松山 ジュンク堂書店松山店

【福岡】
・赤坂 ブックスキューブリック けやき通り店
・糸島 くらすこと
・うきは MINOU BOOKS & CAFE
・大牟田 TARAMU BOOKS & CAFE
・西戸崎 ナツメ書店
・天神 ジュンク堂書店福岡店
・唐人町 とらきつね
・唐人町 よくねる寝具店
・博多 丸善福岡店
・箱崎 ブックスキューブリック箱崎店
・桧原 福岡おもちゃ箱
・六本松 六本松蔦屋書店
・六本松 雑貨と古書 ハチジュウイチ

【長崎】
・長崎 ひとやすみ書店

【熊本】
・合志 HAYASHI(母野思)
・新町 長崎次郎書
・練兵町 橙書店


【鹿児島】
・鹿児島 ジュンク堂書店鹿児島店


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『親子の手帖』が置かれる絵本やさん メリーゴランド京都店



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うきはの minou books and cafe さんにもあります



Amazonでも部門上位をキープしています。(4月16日 1部門で1位、2部門で3位)ありがとうございます。

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初版と第2版、中表紙に大きな変化が。初版は透明感のある白でしたが、第2版は手帖という名に相応しいニュアンスのある茶色に。中表紙がこれだけ落ち着いた仕上がりになると、カバーを外して持ち歩くのもいいなと。元永彩子さんの絵も別の美しさを宿したように見えて嬉しいです。とらきつねでは初版と第2版、どちらもお買い求めいただけます。



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by terakoyanet | 2018-04-17 13:08 | おすすめの本・音楽 | Trackback | Comments(0)
2018年 04月 13日

『ユマニチュードという革命』

「ユマニチュード」は認知症高齢者に対するケアの方法として昨今、脚光を浴びていますが、この本を読むと、ユマニチュードというのは、決してケアの方法にとどまらない、人間同士の本源的な関係の結び方についての作法について語っていることに気づかされます。

そこでは、誰かをケアするときに必要と考えられている専門的な知識や技能が、むしろ思考停止を呼び込み、ケアをする相手との関係性を遮断しかねないという問題意識から、「よい扱い(ビアントレタンス)」という概念が提唱されています。
ケアの現場において必要なのは「適切な距離感」ではなく、「適切な距離感はない。ただ近づくだけ。」とイヴ・ジネストは言います。
それは、「関係性そのものに相手を尊重することがはじめから織り込まれている」から、あえて「相手を尊重しましょう」という必要のない関係性です。

ケアする側が気づかなければならないのは、ケアする側は権力を持っていて、患者や入居者を管理するという発想に陥りがちだということ。医者は「自分は患者を治せる」と思いがちですが、そうではなく「その人自らが治した」のです。そうでなければ、医者は同じ処置をしても治らなかった患者全てに対して「自分が患者を殺した」と言わねばならなくなりますから。
(かつて、塾生が不合格になったから坊主になった塾講師がいました。塾生が不合格になったことを「100%私の責任だ」と言って親や子どもに謝罪した塾講師がいました。[寺子屋にいたわけではなく、伝え聞いたことです。] 私はこれを聞いたときぞっとしました。不合格について100%私の責任だという人は、合格についても100%私の手柄だと言わなければならなくなります。これほど子どものがんばりを無視したものがあるでしょうか。子どもたちは自分自身の力で合格するのです。指導者は、自分が「権力者」になりがちであることに自覚的でなければなりません。)
ユマニチュードで可能なのはケアであり、キュア(治療)ではないことが明言されています。そしてケアとは「相手の能力を奪わない」ことだと言います。(学習指導においても、最も大切なことは、「相手の能力を奪わない」ことです。これを理解しているかどうかは、とてつもなく大きいです。)
自分が権力者だと気づき、その権力を脇に置くことが大切であるということが、この本では繰り返し語られます。

そして「よい扱い」のための具体的な作法として語られるのが、その人の「いま」に注目すること。そして、眼差しを注ぐこと、話すこと、触れること、立位の援助をすることです。
それは、「自分は愛情を、優しさを受取るために人間として生まれてきた。」そのことをお互いが理解するための実践です。

私はこれらのユマニチュードの考えを人と人との関係性そのものの基礎、愛の作法と受け取りました。
私が先ごろ上梓した『親子の手帖』という本は、ユマニチュードの親子実践編ともいうべき内容を書いたつもりです。(この本ほどうまく書けていませんが。)

『ユマニチュードという革命』は構成が素晴らしく、ユマニチュードについて深く理解する教科書として抜群にすぐれています。
これほど哲学的な内容を、これほど簡明に書いた本があるでしょうか。
こちらの本は現在、とらきつねの「生き方の本」の棚に展開中です。

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by terakoyanet | 2018-04-13 09:26 | おすすめの本・音楽 | Trackback | Comments(0)
2018年 04月 10日

『星の王子さま バンド・デシネ版 (Le Salon des livres)』

バンド・デシネというのは、フランス語で芸術性を備えたマンガのこと。
『星の王子さま』の唯一の公式マンガ版と言われるジョアン・スファールによるこの本を読んで、私は初めて「星の王子さま」に出会った、と思いました。

あくまで原作に忠実でありながら、でもこの本に出てくる彼は、ただの繊細な少年ではない。
やんちゃで無鉄砲で、刹那の感情に振り回されて、それでいてどうしようもなくたよりない。
ああ、これまで私は彼のことを誤解していた、そうか子どもというのはこんなにわがままな生き物だったんだ、だからこそ素直でまっすぐで、こんなに感動的なんだ。そうやって、いまさらながら、この物語の脆くてピュアな魅力に気づかされます。

あの有名な、王子と薔薇の場面はどうしようもなくせつないです。代償がないからこそ、報われないからこその美しさがそこにはあり、ああこれが本当なのだ、ときっと誰もが涙するシーンです。

技ありの軽妙な翻訳は池澤夏樹によるもの。
それにしても、池澤夏樹氏の古典に新たな息吹をもたらす慧眼に、これまでどれだけ助けられたことでしょう。
『星の王子さま バンド・デシネ版 (Le Salon des livres)』はとらきつねでお取り扱い中です。

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by terakoyanet | 2018-04-10 12:57 | おすすめの本・音楽 | Trackback | Comments(0)
2018年 03月 19日

『親子の手帖』の販売が始まりました。

『親子の手帖』の販売が始まりました。とらきつねなど一部のお店ではすでに販売が始まっており、一般の書店でも21~23日ごろから始まるようです。どうぞよろしくお願いいたします。
Amazonでも、現在、鳥影社部門で1位、親子関係部門で9位と健闘しているようです。



ブログですでに書いた内容は2~3割程度、それ以外はすべて書き下ろしになります。

親として、というより、かつて子どもだった自分に戻って読んだという予想外の反応を、とてもうれしく思っています。さっそく感想を寄せてくださり、ありがとうございます。



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by terakoyanet | 2018-03-19 15:11 | おすすめの本・音楽 | Trackback | Comments(0)
2017年 12月 30日

2017 BEST TRACK 1 (KOREA/JAPAN)

2017年のおすすめトラック、日本/韓国編。10曲を選びました。それにしても、今年も豊作でした。(毎年豊作ですが。)


● Maison book girl / faithlessness
ハマる変拍子が今年もまた。



●柴田聡子 / ゆべし先輩
今年読んだ植本一子さんの本の中にもでてきてたけど、この人、本当に天才だな!



●Qiezi Mabo loves PUNPEE - Qiezi Mabo Forever  
ふざけてるけど、一周まわって衝撃的にかっこいい。



●PAELLAS - P House Feat. ENNE
今年いちばんハマった曲。かっこいいけどヤボいからちゃんと温度がある。


●BTS (방탄소년단) / Go Go (고민보다 Go)   
今年はBTSの年でしたね。来年はさらに加速しそう。




●HYUKOH (혁오) / Leather Jacket  
ヒョゴはまずボーカルがすばらしい。音もおもしろい。動画はネバヤンとの対談。




● IU(아이유) / Palette(팔레트) (Feat. G-DRAGON)  
まさに今年を代表する曲。




●寺尾紗穂 / 私の怪物
胸をえぐる曲。寺尾さんの音の世界がまた一段深化した。
●Shinichi Atobe - Regret  
Susumu Yokota 氏の不在を嘆いていた時に、すっと胸に入ってきたのが彼の音でした。



●電気グルーヴ / トロピカル・ラヴ  
ひさびさにすごいトラックきましたね。



他にメジャーどころでは、以前も書いた、オザケン、コーネリアスの復活。そしてスピッツ30周年に伴う「振り返り」のためのエモい新曲”1987”。さらに、くるりにしか聞こえなかったネバヤンの夏の名曲Surely、そして今年この曲が出たことに必然しか感じなかった(だって今年は「家族」がテーマですもん)星野源の"Family Song"など、たくさんいいものがありましたね。来年も楽しみです。


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by terakoyanet | 2017-12-30 11:28 | おすすめの本・音楽 | Trackback | Comments(0)