子どもに「なぜ勉強するの」と聞かれたら。(4)
2007年 12月 10日
子どもに「なぜ勉強するの」と聞かれたら(1)
子どもに「なぜ勉強するの」と聞かれたら(2)
子どもに「なぜ勉強するの」と聞かれたら(3)
私はだいぶん前にこの記事の(3)を書いた後、ずっとこの記事をどうやって締めようかと考えてきた。私はまだ「なぜ勉強するの」という問いに対する自分が書いた答えに、自分自身が納得いっていなかった。そしてこの納得のいかないわけをつきつめると、それはこういうことだった。「なぜ勉強するの」という問い自体に落とし穴がある。「なぜ勉強するの」と質問者が勉強する理由を問い、また回答者が勉強が必要な理由づけをしている限りは、勉強の本質的な意味についてわたしたちは考えることができないのではないか?ということだ。つまり、勉強が必要だという前提から一度離れて、もう一度私たちの生の営みから鑑みたときに、私たちにおける勉強とは何なのかということを考えてみなくては、本質的な話はできないのではないか、ということだ。
この前mixiを見ていたら友達の記事に「小さなことからコツコツと・・・」という記事があった。そこには、4年間かけて東京から長崎まで完歩した71歳の女性の話とか、1人で20年かけて立派な庭園をつくりあげた1800年代の女性が紹介されていた。そして友達は「毎日コツコツの力ってすごいねー」と、ただひとことシンプルな感想を記事の最後に書いていた。うちの妻はその何でもない記事を見て、ちょっと泣いてしまったという。その友達の記事には何か感動的なドラマチックなことが書かれていたわけではない。女性ふたりがやったことの事実の列記と友達の感想「毎日コツコツの力ってすごいねー」 それだけの記事だった。
妻が泣いたのは、71歳の女性が完歩したという事実でも、女性1人で20年かけて立派な庭園をつくりあげ、それが評価されたことでもなく、ただ、コツコツと・・・これにぐっと胸をつかまれたのだ。
コツコツというのは、ふつう派手なものではないし、コツコツをずっと続けている当人からすると毎日当たり前のようにただやっていることであって、人の評価をあてにしてやるものでもない。ただ淡々と時が過ぎるようにコツコツと何かが続いてくだけだ。
でもコツコツという言葉はなんだかとてもいい。そっと耳を澄ませてみてほしい。コツコツ、コツコツ、と音が聞こえてくるのだ。私たちの心臓の規則正しい鼓動と同じように、コツコツ、コツコツと静かに音をたてる。それは私たちが粛々と生きていることのささやかな証だ。それは毎日その存在理由などを問われることもなく、ただただ静かにコツ、コツと微弱な音をたてるだけである。
妻は「コツコツの力ってすごいねーって手放しで誉めているところがなんか・・・」と言っていた。コツコツというのは、結果が伴わない場合には埋もれてしまって評価されることはない。長崎まで完歩した女性も、途中の広島とかで挫折していたら、マスコミに取り上げられることはなかっただろう。友達は「コツコツの力ってすごいねー」と書いた。ただそれだけ書いたから胸に響いた。コツコツっていうのはもともと日の目を見るようなものではない。理由もわからずにただコツコツと小さな音を立てて続いていくから尊い。妻はそのコツコツという音を聞いて泣いたのだと思う。私にはその記事を見て泣くほどの繊細さはなかった。でも妻の話を聞いて、私までそのコツコツという小さな音を聞いた気がした。
私はこれだと思った。コツコツ、コツコツこれである。
子どもに「なぜ勉強するの」と聞かれたら、私は(3)で言ったように、大人になっていろいろと視野を広く持って考えるための訓練だと答えることになるだろうと思う。私はこの説明については、いまの子どもたちに与える答えとしては、他の説明(例えば学歴があったほうが経済的に有利など)よりずっと説得力を持っていると思っている。
でも一方で心の中では少し違う気持ちを持とうと思う。勉強というのは、本当はコツコツ、コツコツとただやればいいんだということだ。あらゆる理由づけもむなしく私たちはいつか死んでしまう。一人の人間の生を眺めたときに、そこにコツコツという足あとがほのかに見える。または全く見えないかもしれない。でも誰にも見えなくても、コツコツの道のりには確かに人間としての美しさがある。死ぬと同時にコツコツは忽然と消え失せる。みんな忘れてしまう。でも、私はそれでもいいと思う。
私がいま思ったことは子どもの前で話すようなことではないだろうと思う。そもそも「なぜ勉強するの」という質問に対する答えとしては、そもそも質問自体に疑問をぶつけてしまっている時点で反則である。だからこのことは心に抱きながら、その子にとって最良の答えをこれからも考えていこうと思う。(終)
追記:私自身が最も感じる「勉強」の効用は、他に流されずに、自分で考える力が身につく、ということだと思っています。これは生きていく上で大きな財産になります。また、ひとつのことを本当に深く知れば、他のこともよく見えるようになるというのは実際そのとおりだと思っています。
2007年の好きな歌(2)
2007年 12月 09日
(1)Super Furry Animals - Show Your Hand
2007年アルバム"Hey Venus!"収録。最近ちょっと暗めのわかりにくいアルバムを2作連続で出していたファーリーズ。今回はひさびさにちょっとはじけていて、かなり楽しいです。特にこの"Show Your Hand"の曲展開は、ひさびさにやってくれた!という感じの会心の出来。
(2)Bjork - The Dull Flame Of Desire
2007年アルバム"Volta"収録。スケールの大きな曲。最後のパーカッションの締めは圧巻。Bjorkの今回のアルバムは本当に佳曲揃いです。
(3)Elliott Smith - All Cleaned Out
2007年アルバム"New Moon"収録。2003年に34歳という若さで亡くなったエリオット・スミスの未発表音源集。未発表音源集といっても、とにかく1曲1曲の完成度の高さに驚かされる。寄せ集めにしてはあまりにいい曲ばかりで聞き入ってしまう。1曲1曲がはかなく悲しく美しく、でも奥には暖かい明るさが広がっている。
(4)Wilco - Either Way
2007年のアルバム"Sky Blue Sky"収録。1曲目からこの曲とはやってくれます。今回のアルバムはとても穏やか。Wilcoのこれまでで最良の作品のひとつであることは間違いありません。
グラミー賞ノミネートが発表になりました。
今年はAmy WinehouseとKanye Westが主役になりそうです。
個人的には今年はAmy WinehouseやKanye WestよりもむしろNelly FurtadoやJuntin TimberlakeあたりのPOP畑のほうが面白かったと思いますが。
また、そのうちに続編を。
配布物・模試等のお知らせ
2007年 12月 09日