とらきつね一般書ランキング(11/22-12/29)


とらきつねより、昨年最後の書籍ランキングです。


(初)1うれしい生活 植本一子 河出書房新社
(1)2まとまらない人 坂口恭平 リトルモア
(初)3「いいんだよ」は魔法の言葉 立花高等学校 梓書院
(9)4 親子の手帖 鳥羽和久 鳥影社
(再)5 自殺会議 末井昭 朝日出版社
(初)6 不登校になって伸びた7つの能力 吉田晃子 星山海琳 廣済堂出版
(再)7 自殺 末井昭 朝日出版社
(初)8 橙書店にて 田尻久子 晶文社
(初)9 ありのままがあるところ 福森伸 晶文社
(初)10 小さな天才の育て方・育ち方 吉田晃子 星山海琳 セルバ出版



満席のイベントが3つも行われ、たくさんの方々で賑わったとらきつね。これまでで最も多くの本が皆さまのもとに届いた月となりました。

そんな中、トップを飾ったのは植本一子さんの初の写真集『うれしい生活』。ほんとうにすばらしいので一人でも多くの方に届きますように。


田尻久子さんは当店ですごく売れるのですが、今回は売れるペースが過去でいちばん早いです。しょうぶ学園福森さんの『ありのままがあるところ』も初登場。話題作目白押しです。


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1位の植本一子さん写真集『うれしい生活』については、別のところでレビューを書きましたので以下に転載します。

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植本一子 うれしい生活(河出書房新社)

写真を撮ることを「世界との一定の関係に自分を置くこと」と言ったのはスーザン・ソンタグ(『写真論』1987年)だが、『うれしい生活』はまさに、植本一子という一人の人間がどのように世界と関係を結んできたかを記録した写真集である。

被写体に対しての愛を感じる写真というのは美しい。でも、愛に耽溺する余り、愛に対しての驕りを感じさせる写真は、とたんに醜悪になる。

植本一子が撮る人たちの多くは笑っていない。
彼女の撮る写真は、どこか被写体と一定の距離感が保たれていて、愛があるのに醒めている。彼女は愛に耽溺しないし驕らない。私はそこに彼女の作家性を強烈に感じる。

自然光のみで撮影するスタジオ「天然スタジオ」を運営する彼女の写真は、やはり光が美しい。(彼女のことを"光の魔術師・下北のフェルメール"と呼んでいる人がいたな。)この光は彼女の潔い覚悟の現れである。光の前では何もごまかせない。光は全てを衆目に晒す。

この写真集を何度も繰り返し見てしまうのは、彼女の世界への希求がそのままに映し出されているからだ。「たとえ一緒にいられなくても、遠くでもいいから、どうか、わたしを好きなまんまでいて。」そんな声が聞こえてくるようで、胸がどうしようもなく締めつけられる。

しかし、夫である石田さん(ECD)の視線は、そういった彼女の作家性を食い破ってしまう。ECDはこの写真集における異物である。彼の透徹した個(孤)の眼差しは、私たちの奇妙な生という営みを睨み返す。ECDはこの写真の途中から痩せていき、ついには死に至る。彼の死は、この写真集に永遠性を備えた命を与えた。なんてことだろうと思う。

たとえ一緒にいられなくても、あなたに会えたことがうれしい。私たちは最も身近な家族とでさえ、いつまでもいっしょにはいられない。子どもは瞬く間に離れていってしまうし、私もあなたも、もしかしたら明日死んでしまうかもしれない。

それでも、たったいまあなたといるという現実がうれしいのだ。私たちには「いま」しかなく、できることは、いまといまとを大切に繋いでいくことだけだ。この写真集は、うれしい「いま」の光で溢れている。




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# by terakoyanet | 2020-01-08 20:38 | とらきつね | Trackback | Comments(0)

八丈富士の絶景

年末年始は時期的に宿泊費が高騰する温泉旅館に払うお金の惜しさもあって、お金があまり掛からない島で過ごすことが多いのですが(2018奄美大島、2017屋久島、2016西表島/石垣島、2015台湾島)今年は伊豆諸島の八丈島で過ごしました。

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登龍峠展望台から見た八丈富士
左奥に八丈小島

八丈島は2つの火山島がくっついた双子島で2つの火山の間の低地に島民の多くが住んでいます。
たくさんいろいろな場所を訪れましたが、今日は、元旦に登った八丈富士の絶景を。

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八丈富士の7合目あたりを1周する鉢巻道路から見た八丈小島
この島、1960年代まで有人島だったんです。


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登山口から1200余段を上っていきますが、山慣れしている人にとってはさほど苦難の道ではありません。
むしろ、こんなに楽してこんなに美しいなんて…と惚れ惚れする景観が楽しめます。
山頂のお鉢廻りは風が強いときはかなり怖いのでご注意ください。
羽田から50分の八丈島。食べ物もハイクオリティで、集落ごとに特色があって、とても面白い島でした。


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# by terakoyanet | 2020-01-03 00:32 | 好きな場所 | Trackback | Comments(0)

2020年、明けましておめでとうございます
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写真は今日の午後、葛城山山頂(静岡県伊豆の国市)で撮影した富士山。
私事ですが、今年に入って八丈富士(東京都八丈町)とこちらの2つの山に登ってきました。
いまは福岡に戻り、仕事を始めました。



年末年始に、塾について考えるいくつかのきっかけをもらいました。

ひとつは、日ごろなかなか見る機会がないテレビで、離島の無料塾リフォームの番組があっていたのを見たことです。無料の何もないところに、エアコンやらパソコンやらボルタリングやらなんやら付けてしまって、その後の維持費はどうするのか?とか、そもそも運営する先生たちが主体的に設計しなくてどうする?とか腑に落ちないところが多々ありましたが、事情がわからないのでとりあえずそれは脇に置いておくとして、そもそも、この番組はリフォームすることやパソコンなどを揃えることが塾の価値を上げることに繋がるというバカげた価値観を塾に関わる人たち(子どもや親、運営側も)に与えるというその一点だけ見ても害悪でしかないと思いました。

パソコン一台より、心を許せる大人がそこにいて、その人から勉強を習うことが面白い!わかる!ということの方が大切で、そのためには極端に言えば公民館の長机と椅子だけでも十分だと思うのです。そういう当たり前のことを無視して、ハコのきらびやかさで子どもと親を喜ばせたところで、人という実質が伴わなければすぐに事業は頓挫します。(実際、ハコだけきれいで子どもを伸ばせない教育機関は、塾に限らず私立学校も含めたくさんあるのではないでしょうか。)ちゃんと他にいいところがあったのに、モノのきらびやかさに惹かれた親や子がさらなるモノをねだるようになると、運営側が懸命にモノで応えようとする→当初の良さが疎かになる、というようなクソみたいな循環が生まれるので、結局大切なことが失われていくことになりかねません。モノはあくまで自ずから生まれた要請に従った必要最小限のものでよいのですから、あの無料塾は、せっかく作ってもらったからとか言ってないで、いらないものはどんどん潰していかないと、立ちゆかなくなってしまうでしょう。資金面ももちろん大切ですが、それ以前に運営側が面白くないと教室は続きません。続かないことが子どもたちにとっては一番不幸です。子どもが好きで子どもを助けたいという志がある人たちが、あの番組を見て、意識高いだけの居心地の悪い教室を作らないことを祈っています。


もう一つ気になったのはこちらの記事。
小6の子どもたちが大晦日から正月返上でハチマキ締めて勉強しているなんて私は悲劇だと思います。
こうして鉢巻き締めて勉強するという一辺倒の価値観はおかしいということにとっくに多くの人たちが気づいている今の時世にこのようなことを企画する塾は、時代の趨勢を読めないという意味で、そういう人たちが子どもに影響を与える立場にいること自体が子どもに害悪でしかないと思うし、こんな家族生活をぶっ壊すようなスケジュールの合宿に「もうすぐ受験だから頑張るのよ」なんて子どもを宥めすかしながら参加させる親も、小学6年生の子どもにとって、家族にとって何がほんとうに大切かを見失っているという意味で、そういう親たちが日ごろから子どもに何を犠牲にさせているのだろうと想像するだけでぞっとします。

合宿はわざわざ正月にやらなければならない必然性はありません。その苦しさを乗り越えて、という価値観が虚偽であることくらいわかっていなければ、逆に今からまっとうに生きていけません。

本校も中3の受験生たちには正月休みにたくさんの課題を出していますが、それでも、どんなときも子どもたちには生活というものを失ってほしくないと思います。好きなことに没頭した結果、生活を失ってしまうのは仕方がありません。でも小6の子どもたちが中学受験のせいで家族との正月を奪われることは、あまりにいびつだと思います。「自分の意志で行っているんだから」という親もいるでしょうが、私はその意志はヤバいと思います。子どもが自分で意志を示したことで全て免罪になるなんてとんでもない話で、少なくとも、中学生くらいまでの子どもの意志の半分近くくらいは、親に責任があることくらいわかっておくべきだと思います。



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# by terakoyanet | 2020-01-02 23:40 | 雑感・授業風景など | Trackback | Comments(0)