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本日は沖縄・宗像堂さんのパンの日。
1年以上ぶりに、雨のパンの日となりそうです。

雨の日だから腰を落ち着けて、宗像堂さんについて少し。


先日、イベントに来たあるお客さんに「なぜ宗像堂を取り扱っているのか」と尋ねられました。私は石川直樹、若松英輔、坂口恭平のイベントに参加した。彼らを呼んだとらきつねが宗像堂を取り扱うのにはやはり何か理由があるのか?と尋ねられました。そのとき、私がお話ししたのは宗像誉支夫さんのことです。


私は宗像誉支夫さんのことを、パン屋というより求道者だと思っています。宗像さんは日々変化する天候や薪の状態、酵母の状態、そういった今日限りの条件を身体で感じながら、パン作りをします。宗像さんは酵母やパンをコントロールしようなんて思っていません。あくまで、おばぁから受け継いだ酵母の力を信頼して、酵母が生き生きとはたらく環境を整えることに力を傾注し、最終的には酵母自体の力に身を委ねるようなパン作りをしています。石窯を5回作り直したり、自ら古代小麦の栽培をしたり、徹底的に自分の身体でパン作りに向き合いながらも、宗像さんは自分の作ったパンの独創を自賛することなく、今日はこういうパンができたという神秘を毎日楽しんでいるんじゃないかなと思います。でも結果的にそれが唯一無二のパンになっているというのは、本当に面白いことだと思うんです。


そんな話(というか紹介)をしたことを覚えています。この紹介が的を得ているかはわかりません。でも、石川直樹、若松英輔、坂口恭平といった人たちをこの店に呼んでいるのと、宗像堂さんのパンを取り扱っているのは無関係ではないと思いますと。でも、無理に関連づける必要はないし、それはお客さんが自然に感じてくれたらそれでいいと思うと。


宗像堂さんのパン。福岡の皆さんがご家庭で食べるときは、リベイクして、ベストの状態で食べていただきたい。その豊かさは、きっと伝わると思います。


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沖縄・宗像堂さんのパン、焼き菓子の販売はいよいよ本日13時からです🥐
先月も全品完売してしまった宗像堂さんのパン。食べれば食べるほど、パンと親密になり、幸せの実感が深まるパンだとしみじみ思います。下の写真は先月から販売開始となった読谷酵母スコーン。スコーンの枠をはみ出した凄まじく粋な味わいで、衝撃を受けました。

・サブリナ
・黒糖シナモンロール
・つぶつぶ麦のフォカッチャ
・黒糖2山食パン
・黒糖メロンパン
・くるみ&カレンズ
・ライ麦入りカンパーニュ
・黒糖カトルカール
・読谷酵母スコーン

以上がラインナップです。お目当てがある方はお早めに。13時より、皆さまをお待ちしています。

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・・・・・・・・・・・・

京都・かみ添さんに坂本龍一さんご訪問。
嘉戸さんの笑顔が素敵。
とらきつねは、九州で数少ないかみ添さんのお取り扱い店です。世界が惚れ込む嘉戸さんの仕事。手に取ってご覧いただければ、その美しさに心を奪われることと思います。

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by terakoyanet | 2019-05-18 06:05 | とらきつね | Trackback | Comments(0)

辻山良雄/nakaban 『ことばの生まれる景色』(ナナロク社)


体調が少しでも上向いたらこの本のことを書きたいと思っていました。
でもなかなか上向かず、いまは上向いたと思ったらまた少し悪くなってしまい、でもそんな中、この本のことをやはり書いてみたいと思いました。上向いたと思ったら少し悪くなってしまったいまは、なんとなくこの本のことを書くのにむしろふさわしいタイミングのように思われたのです。


この本は辻山さんという本を滋養に生きてきた人の記録です。結果としてたくさんの作品を紹介している本ですが、決して単なるガイド本ではありません。
辻山さんはきっと私たちが慌ただしい日常の中でついつい見ることをやめてしまう、心の深いところにある澱のようなものを替わりに掬うような仕事をしている人なのです。そしてそれは、少なくとも私にとってはこの世でもっとも大切なかけがえのない仕事だと感じられるものです。


この本の文章は、庄野潤三のそれのように淡々と綴られていきます。『ことばの生まれる景色』というタイトルそのままに、本という景色の中から自ずと生じた色が、そのまま辻山さんの文章を醸成してしまったような、そんな気配に満ちています。
この本は幸福なことに、その気配を伝える装置としてnakabanさんの絵がそれぞれの文章に添えられています。nakabanさんの絵を見て、その不穏さや不可思議さに、その明るさに、少しどこか落ち着かないような気持ちを抱えながら次のページをめくり、辻山さんの文章を読むと、それはnakabanさんの絵に対する返歌でもあるかのように、絵と文が軽やかに呼応し合っていて軽い目眩を覚えるのです。幸福なことばが生まれたライブ感を味わうことができるのは、この本の凄さです。


この本の中では、たびたび相対する2つのものが見出されます。
ヴォネガットの小説の中に「泣きながら笑う」しかない「二つの感情を同時に生きる」私たちが見出され、『遠野物語』の中に現代人が「明るさ」という仮象によって見失っている「闇の力をとどめておく物語」が見出され、クンデラの小説の中に「軽さ」と「重さ」という相反する葛藤と、クンデラ自身の引き裂かれた意識が見出され、そして、齋藤陽道さんの昨年発売された2つの作品『声めぐり』『異なり記念日』にひとりの人間が見せる一見相対するような複雑な人格が見出されるのです。


私たちは引き裂かれた世界に生まれ落ち、自らも引き裂かれた存在として生きています。だから、引き裂かれた生の実存に私たちは目を逸らせなくなるし、ときにそれに反目しながらも、ときにそれが生存の拠り所になるのかもしれません。
静かな強度をもつこの本が、多くの人に広まることを願ってやみません。


最後に、数日前にどなたかがすでにツイートされていたのですが、私も、この本の246ページの黄色い絵が目に飛び込んできたとき、うわーっと全身がざわめき、胸が高鳴りました。齋藤陽道さんの文を読んだときの、あの苦しくも美しくて幸福な感覚が、その絵を見た瞬間に、全身に呼び覚まされたのです。


『ことばの生まれる景色』 は、ナナロク社の村井さん、川口さんの直プレゼンの効果もあり、とらきつねでは入荷当日に売り切れたものの、再度入荷しており、現在は在庫がございます。


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橙の光の下で撮ったので
せっかくの表紙の美しい「青」がくすんでしまい、すみません。




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by terakoyanet | 2019-01-12 02:47 | おすすめの本・音楽 | Trackback | Comments(0)

BEST TRACK 2018 (JAPAN)

2018年に出会った好きなトラックを10本ご紹介します。(日本編)
→世界編はALBUM10本をそのうちご紹介しようと思います。


◇折坂悠太 - さびしさ
こちらのブログでは過去に何度かご紹介している、折坂悠太くん。
ミュージックマガジンの2018年BEST ALBUMの1位にも選出された『平成』は、彼の世界がさらに深化したことを感じさせる傑作です。
この曲は、いままで届きそうで届かなかった人たちにも届いた曲なんじゃないかなと思う。


◇折坂悠太 - 芍薬
折坂くんの曲、もうひとつ。2018年はこの曲からはじまりました。今年の初めにガツンとやられた劇的、激的な楽曲。
ミニアルバム『ざわめき』に収録。この曲が好きな人は、『平成』収録の「逢引」も絶対に聞くべきです。


◇never young beach - うつらない
never young beach のもつ抒情的な繊細さはそのままに、ギターのリフも、コーラスも、曲を支える深いベース音も、全てが美しい、祝祭的な曲。ネバヤン、こんな世界に来たのかと、涙ぐむ名曲。


◇宇多田ヒカル - あなた

最近の宇多田ヒカルの中には、自分の内側を軽やかに抉るような作品があり、目が離せなくなる。
この曲については、来年出す新刊に書くかもしれないけど、私とあなた(子ども)の密室的な関係がエグいほどに描かれていて、凄まじいと思ったのです。


◇Tempalay - どうしよう
今年、一番かっこいいと思った曲。


◇King Gnu - It's a small world

シーンのど真ん中にTempalayやKing Gnuがいる世代がうらやましい。MVも秀逸。


◇冬にわかれて - 君の街

寺尾紗穂+伊賀航+あだち麗三郎の3人によるバンド、冬にわかれてのファーストアルバム『なんにもいらない』より。
伊賀航作詞・作曲のこの曲は、淡々とした中に静かな哀切が漂っていて、寂しさを温めるような大人の一曲に仕上がっています。


◇元ちとせ Feat. 民謡クルセイダーズ - 豊年節
2017年に出た民謡クルセイダーズのアルバム『エコーズ・オブ・ジャパン』は大傑作なので、ディープな音が好きな人には絶対に聞いてほしいのですが、つい先日、元ちとせが出した奄美の民謡を集めたアルバム『元唄』に収録されたこの曲は、猥雑で楽しげな雰囲気が漂うアレンジがほんとうにかっこいいです。豊年節は、そのタイトルにかかわらず、豊作を祝う歌ではなく、支配者である薩摩船の到着を祝うという歌なんです。ここらへんも勉強して、聞くとさらに面白い。


◇cero - 魚の骨、鳥の羽根
以前から、ceroファンには知られていたこの曲。
彼らは今年のアルバム『POLY LIFE MULTI SOUL』でさらに凄味が増しました。



◇前野健太 - 今の時代がいちばんいいよ
平成最後の物哀しさを湛えたこの年に「今の時代がいちばんいいよ」と歌った前野健太。
悲観でも楽観でもなく、淡々と「今の時代がいちばんいいよ」と呟くように歌う彼の詩と歌が胸に刺さる。







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by terakoyanet | 2018-12-24 13:03 | おすすめの本・音楽 | Trackback | Comments(0)

子どもを産まない選択を「勝手なこと」と言った政治家がいるらしい。彼は、みんなが子どもをたくさん産めば国が富む、子どもを産まない勝手な人がいるから国が富まないと考えているらしいが、日々のささやかな思いを大切に生きている「国民一人一人」のことを想像さえしようとしない、こういった政治家が頭に思い浮かべる「国」の正体とはいったい何なのか?

彼らは「国民」という言葉を、「国民一人一人」という使い方ではなく、「なんとなく全体がそう思っている感じ」くらいに設定してくる。(武田砂鉄『日本の気配』)

武田砂鉄さんの新刊『日本の気配』は、現代の政治がとても不穏で危険なものであることを明らかにするとともに、それが私たち自身が持つ危うさでもあることを告発します。現代を知るためのルポであると同時に、この社会は生きにくいと感じている人にとっては、その生きにくさの正体を明らかにしてくれる格好の解説書でもあります。
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新潮8月号を入荷しました。四方田犬彦さんの初の本格小説『鳥を放つ』が掲載されている8月号ですが、寺尾紗穂さんの手記「二つの彗星ー父・寺尾次郎の死に寄せて」を読むことができます。

「うちはみんなバラバラ」と思って生きてきた寺尾紗穂さんが、「最愛の」と呼ぶことができなかった父のことを語る文章。父に「さすって」と言われたときの彼女の心の震えの痛さが、ずっと心に残っています。

やたら涙もろいとか
果てなくさまよい続けるとか
君と僕とは似ているよ
「ねえ、彗星」寺尾紗穂 アルバム『御身』より


物心つく前は、誰しもが私という彗星の軌道の上を、私を中心に、親も家族も、いっしょに回っているんだ、きっとそんなイメージを持っているかもしれない。

でも、あるときに気づくのです。私と親、私と家族はそれぞれが別々に孤独な軌道を回っていて、私の周りには無限の孤独が広がっているということを。

手を差し伸べても届くことのない、もう一つの彗星。決して交わることのないように思われる、「最愛の」彗星。

でも、私が遠くに見ているあの彗星も、無限の孤独に耐えながら、君と僕とは似ているよ、私の方を見ながら、そんなことをぼんやりと考えているかもしれない。

そう思うと、あなたの彗星のしっぽの先に乗って、同じ宇宙の空を切って飛んでいる私を想像することができる。私の孤独は、孤独そのものとして、あなたの孤独と交わることができる、その可能性に気づかされ、涙が出る。

寺尾さんの文章を読んで、そんなことを考えた朝でした。


寺尾紗穂さんの手記「二つの彗星ー父・寺尾次郎の死に寄せて」は、10月発売の寺尾紗穂さんの新刊『彗星の孤独』(スタンド・ブックス)に収録されています。
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伊藤比呂美『切腹考』(文藝春秋)
いかにも著者らしいタイトルと鮮血を想起させる赤い文字に、装丁を見たとたんに目眩がした。

やや隠喩的になるが、伊藤比呂美という詩人は、目の前の人が腹を切り、鮮血を出すそのさまを、酷薄に、そして克明に、記す仕事をしてきたのだろう。その彼女が鷗外に惹かれる必然が、ここには確かに描かれていて、その必然は人生に或る暗さと妖しさと艶めかしさ、そして屹立した真面目な美しさを与える類のものだ。

伊藤比呂美はこれほどに生と死の狭間にあるエロスを描きながら、「生きる死ぬるの、実体など、ほんとはどこにもなかった」そう言い切る。そこに彼女の鋭い知性を感じる。私が彼女を信じられると思える理由もそこにある。

「阿部一族」に描かれる死生観から、夫との死別、熊本地震まで、話題は多岐に渡る。生きる死ぬるについての話は、彼女のような人とこそ語り合いたい。そう思った一冊。

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シンガーであり作家でもある寺尾紗穂さんが、音楽をやっている知人たちに声をかけて、音楽ではない何かについての文章が一冊に集まってできた「音楽のまわり」。

瑞々しい木漏れ日のような、折坂悠太くん、マヒトゥザピーポーの文章、縁側で座って聞いたらふふふと笑いながら聞けて楽しそうな伊賀航さんやユザーン、寺尾さんの話。どれもこれも良いのですが、少々理屈っぽいわたしは、エマーソン北村さんの「寝る前に読む進化論」がツボでした。科学も歴史も弁証法も、ほんとうは愛に満ちているんじゃないかな、そんなことを信じさせてくれる、美しい短編です。

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美しい小さな詩集が刊行されます。
『バウムクーヘン』詩 谷川俊太郎・挿画 ディック ブルーナ

すべての詩が かなで書かれたこの詩集。
谷川さんはこの詩集のことを「私の中に今もひそんでいる子どもの言葉をかりて、老人の私が書いた大人の詩集です」と話しています。

かなの言葉の連なりが 私たちに小さな声で語りかけるの
人生の楽しみ 不可思議 驚き 慄き そして 愛の言葉

みえるのははるかに
どこまでもおわらないみちだけ
しらないあいだにぼくのからだに
だれもしらないうたがうまれて
こころがだまってうたっている
*2章「みち」より

きらいのなかに
すきがまざってることがある
そのすきはうそじゃない
*3章「すききらい」より


自分の心を掘ったあのときに
きっと確かに浮かんだ言葉が 
この小さな詩集の中に散りばめられていて
うれしいような 少しくやしいような
そんな いつまでも大切にしたい 詩集です


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本を手に持ったとたんにびんびんと伝わってきた。この本は、本を心底愛している人たちによって作られている本だということが。

何て、本らしい本。凛と角ばっていて、ページをめくりやすくって、言葉のひとつひとつがしっかり目に飛び込んでくる。

私はいまこの本を読み始めてわずか45分。本のはじめから120ページ、編集者の島田潤一郎さん、装丁家の矢萩多聞さん、校正者の牟田都子さんの3人の文章を読んですぐにパソコンの前に座って文章を書き始めたところだ。(つまりまだ全体の半分も読み終わっていない。だから、まだ読み終わっていない人が書いているという留保つきで、この文章を読んでください。いっしょに「読み始め」の感覚を味わってもらえたら。)

本というのは読んでいると途中で弛緩することがあるのだけど、この本はちょっと違う。本を愛している人たちが意図せぬうちに絶妙なチームワークを生み出し、言葉のリレーを繰り広げる。まるで、運動会のリレーのように、走者たちがバトンを渡すたびに見る者の高揚感は高まる。この本は、まさにそんな感じだ。(その高揚感をそのままに、4人目にバトンを渡そうとする所作だけ最後に確認して、もう文章を書き始めてしまった。)

島田さんがこの本の冒頭に言葉を綴ったのは、きっとこの本にとっての幸運だ。島田さんの言葉の中に、ひとつの「全体」の話があった。これは、私が思うに本が持つ最も根源的な力だ。こんな話から始まるこの本はすごいと思った。そしてこの本もそのままで、ひとつの「全体」を体現するものになっているんじゃないか、そんなことを考えた。
島田さんの言葉でもうひとつ印象に残ったのは、「具体的な読者のために仕事をしたい」という話。私自身、何か文を書いているときに、一般とか大衆とかいう言葉がピンとこない。具体的な読者しか、逆に想定できない。だから島田さんの言葉に勇気をもらった。具体的な読者、目の前のあなたに向けて書いていることが、どこかで見知らぬ誰かとも、少しだけ交わることを信じたいと思う。

矢萩多聞さんの中1で学校をやめてインドから日本の友だちに何百通も手紙を送ったという「ビョーキな趣味」の話を読んでいると、子どものころに私も何かを人に伝えたいという強いビョーキの衝動を持っていた時代があったことに気づかされた。小学校時代は毎日新聞を書いて、初めは壁新聞として貼りだしていたけど、それでは物足りなくなって、新聞を毎日学校の印刷室で刷ってクラスのみんなに配るようになった。(よく先生が認めてくれたものだと思う。)中学では毎週寝不足になりながら原稿を書いて、給食時間に図書館アワーという全校放送を1年間続けた。1年間続けた最後の日、給食の終わりかけの時間に教室に戻ってきた私に対し、担任の村石先生が、一年間、こんなに内容のある素晴らしい放送を続けられるものではない、みんな拍手を!とクラスのみんなに拍手を求めてくれたことは忘れない。どこかで自分の趣味でやっているだけ、という引け目のような気持ちが巣くっていたから、先生が認めてくれたことで、どれだけ救われたか。そんな少年時代のことを思い出した。
矢萩さんの言葉で印象に残ったのは、この章のタイトルにもなっている「女神はあなたを見ている」。この言葉は、きっとこの本がこの世に生まれた意味そのものを示しているので、ここで説明してしまっては余りにもったいない。物事を大切にいとおしむことを知っている矢萩さんの文を通して、この本を読む人に、この言葉を味わってほしいと思います。

そして3人目のバトンは校正者の牟田都子さん。「ものを知っている」というよりも「調べ方を(人よりも多少)知っている」という校正の仕事の本質の話、しかしその校正という行為自体は「読む」というよりも「耳をすます」ことであるという話。私も昨年初めて本をつくって、校正の方と、そして自分が書いた得体の知れぬ言葉と、格闘し、会話をした。そうか、校正というのは、こんなにあったかくて、真剣な仕事なんだと、そこには確かに血の通った会話があったと、牟田さんの言葉を読んで、改めて深く噛みしめた。私は本を書きたいとか、本を出したいとかそんなことではなくて、究極にはこういう会話がしたいだけなんだ、そのことが、次の本のことについて考えているこのタイミングで確認できてよかったと思う。

普段、感傷的すぎることは恥かしいと思い、自分のことについては極力書かないようにしているのですが、この本は、あまりに自分に寄せて読むことができる本なので、前半を読んだだけですが、つい長文を書いてしまいました。


『本を贈る』三輪舎
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植本一子『フェルメール』(ナナロク社 Blue Sheep )

写真家・植本一子がフェルメールの全作品を巡る旅をそのまま収録した本。

美術書なのに完全取り下ろしの写真集でもあり、植本一子の心のふるえに感応する文学でもあるこの本は、美しい装丁と印刷に思わず見惚れます。

・・・

LINEで一子さんから「鳥羽さん、フェルメールどうだった?!」とメッセージ来たから、彼女にはマジメに次のメッセージを送りました。


フェルメールを読んでいて、なぜ草刈さんと村井さんが植本さんにお願いしたのか
少しわかった気がしました

ふつうの美術書だと、絵と絵にまつわる物語が固着していて動きがない

でも植本さんのフェルメールはまさにその瞬間の動き(目の動き、心の動き、つまり私と絵の間)が封じ込められていて、それは写真家だからできた仕事だと思います

絵を見る目線がそのまま撮られた写真が印象的でした 絵を見るという行為について考えさせられました

デジタルかフィルムかという葛藤が そのまま 偶発性のようなものを恐れながらもでもそれが全てなんだという
うえもとさんのもがきと覚悟をあらわしていて おもしろかった です

フェルメールの絵自体を掘り下げて フェルメールの深層・真相 を掴みたい人には期待はずれの本だと思います
でも絵自体の真実なんてないでしょう 自分が変化したら絵も変化するんだから と思っている人間には 興味深い本でした

というのがまじめな感想です

文で感想を伝えると、便秘のようにかたくなってしまうので、また会ったときに!

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あなたは私をそれでも肯定できますか? 瞬間瞬間で変わってゆく私を。そう問いかけられる、試されている、そんな映画だった。

そして映画に時間を使ったせいで、いま徹夜で仕事をしている。映画の最後のシーンの残像が見える。きたないはきれい。

『ユリイカ』9月号は濱口竜介監督特集。

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『沖縄アンダーグラウンド 売春街を生きた者たち』
平成という時代が終わるこの時期に、見て見ないふりをされてきた歴史をしっかりと見つめてみたいのです。
昨年発売された『裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち』と共に、刮目に値する書。
沖縄の問題、女性の問題は、いつだって己の問題です。
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『異なり記念日』(医学書院)
ろう者であり写真家である齋藤陽道さんの新刊。これは人の「異なり」という「多様性を認める」本というより、「異なり」をめぐる軋轢や奇妙さを、ときに甘くてすてきな、ときににがくて苦しい思い出のままに、大切にいとおしむ本だ。

「異なり」を喜ぶのは決してきれい事じゃない。
生きている私たちが、死という究極の「異なり」を見据えながら、「異なり」の思考を逞しくしていくこの営みの中に、深い喜びがあるんだ、そのことを教えてくれる優しくて力強い本。
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水俣市の中心部から車で15分程離れた丘の上にある、水俣病センター相思社の永野三智さん著『みな、やっとの思いで坂をのぼる 水俣病患者相談のいま』特装版 を入荷しました。
特装版の表紙カバーは、水俣の創作ユニットHUNKAによって限定制作された、手刷りシルクスクリーンによるもの。表紙を見ただけで一目惚れ。あ、これは大切な思いで作られた一冊だとわかります。

相思社さんは、水俣病の最初の発生地といわれる集落のすぐそばで、「悶え加勢すればよかとです」という石牟礼道子さんの言葉を胸に、今日も認定、非認定にかかわらず、水俣病患者の方たちと向き合っています。
永野さんは1980年代生まれの若い世代。水俣出身の人間がいまの時代に水俣病と関わること、患者たちと向き合うこと、それは到底きれいごとでは済まない人間臭い現実があり、水俣病というのは彼岸にある過去の他人事ではなく、たったいまの私たちのことだった、そのことに気づかされる本。永野さんはこの本には何の解決も希望もないです、と語っていました。
それを聞いたとき私は、でも、だからこそ、そこから始まっているからこそ、この本に描かれる「ありのまま」が、相思社に関わる人たち、この本を読む人たちの心の灯火となる、それを信じる力に繋がるのだと思いました
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タラブックスのコアなファンたちから特に人気のある"I Saw a Peacock With a Fiery Tail"は『タラブックス インドのちいさな出版社、まっすぐに本をつくる』(玄光社)でもその魅力が紹介されています。青いハードカバーのデザインのすばらしさに心を射抜かれる方もいるでしょう。

17世紀のイングランドのおとぎ話に基づいたトリック・ポエムの構造が、この絵本の特別な仕掛けによって明らかになるのは鳥肌ものです。(最初の言葉は無意味であるかのようにたたずんでいるのですが、各行の途中で中断を与え、その断片的な文節の意味を辿っていくと、自ずとその意味が解明し始めるのです。)

作画は"The Night Life of Trees"(夜の木)のRamsingh Urveti。トライバルアートの新たな魅力に出会える1冊。タラブックスはシルクスクリーン絵本だけじゃない、その大胆なアレンジ性とデザインにこそ魅力がある、それを感じることができる1冊です。

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シルクスクリーンで鮮やかに刷られた絵巻物。今年の9月に日本語版が出たばかりのタラブックスの「つなみ」。 2004 年に発生したあのインド洋大津波のことを描いたものですから、題材は深刻で悲しい現実でありながら、しかし、この絵とうたには胸が張り裂けそうになるくらい、めいいっぱいの愛と喜びと希望が溢れている。

目に焼き付いて離れない鮮やかなシルクスクリーンのインクの色が、やさしく力強く、魂のうたを私たちに届けてくれるのです。そうやって、苦しくて悲しい現実も、喜びや希望も、私たちに確かに繋がっている、この蛇腹式の本を1枚 1 枚にめくりながら、その感触を確かめながら、そのことをひしひしと感じるのです。

一家に一冊この本があれば、大切なお守りになってくれるんじゃないかな、思わずそんなことを考えてしまうくらい、パワーを感じる特別な一冊です。

日本語版のレイアウトは矢萩多聞さん。
タラブックスを日本に紹介した立役者のひとりである矢萩多聞さんの ambooks のHP( tamon.in/s001/ )には「ポトゥア、東野健一さんのこと」という文章が載っていて、矢萩さんがどんな思いでこの本の日本語デザインを担当したかが熱く深く書かれていて圧倒されます。ぜひ読んで、そしてこの本を手にしていただきたいと思うのです。
くどいですが、本当に見事に素晴らしい本、絵巻物です。

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by terakoyanet | 2018-11-03 03:51 | とらきつね | Trackback | Comments(0)

米津玄師について

今年の配信でおそらく国内年間1位になりそうな"Lemon"のヒットなど、飛ぶ鳥を落とす勢いの米津玄師。
時代の寵児となり、今日もつまらないバッシング記事を目にすることがあり、本人もさぞ大変な毎日だろうなと察するところです。(取材したいなら、まず相手を尊重すべきでしょという当たり前のことをこの記事を読んで思います。)

ハチ改め米津玄師名義になったころ(このブログで最初に彼を紹介したのは2012年7月の記事)は、すごく人気だけど、それでもニッチなところでの人気でとどまるのではないかと思っていました。センスがぶっちぎり(彼は作曲も作詞も作画もダンスも編集もすべて職人技)で良すぎたし、曲の根っこが暗いから。

もともとメロディセンスに長けた人なので、その後は耳馴染みがよく、しかも、噛むほど美味しくなる楽曲を発表し続けるのですが、いま歌詞をじっくり読んでみると、確かに、確かに、いまのネット世代の若い子たちの内面を深く露出させているものがとても多いと思うのです。このことについては、もしかしたら次に出す予定の本で触れることになるかもしれません。実体や実感というものがよくわからない、宙ぶらりんな私たちのよるべのなさを、これほど根深く楽曲に刻み込んでいる人が、日本の音楽のど真ん中にいることは、とても面白いと思うのです。

以下に私が好きな彼の曲を10曲載せたいと思います。


1 アイネクライネ (2014)


2 Loser (2016)


3 vivi (2012)


4 ゴーゴー幽霊船(2012)


5 首なし閑古鳥(2012) ※MVがないので『diorama』アルバム全曲レビューより(12曲目6:11~)


6 Flowerwall(2015)


7 サンタマリア(2013)


8 あめふり婦人(2012) ※MVがないので『diorama』アルバム全曲レビューより(5曲目2:14~)



9 ポッピンアパシー(2013)



10 ピースサイン(2017)




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by terakoyanet | 2018-10-29 13:56 | おすすめの本・音楽 | Trackback | Comments(0)

『本を贈る』を読む。

本を手に持ったとたんにびんびんと伝わってきた。この本は、本を心底愛している人たちによって作られている本だということが。

何て、本らしい本。
凛と角ばっていて、ページをめくりやすくって、言葉のひとつひとつがしっかり目に飛び込んでくる。


私はいまこの本を読み始めてわずか45分。
本のはじめから120ページ、編集者の島田潤一郎さん、装丁家の矢萩多聞さん、校正者の牟田都子さんの3人の文章を読んですぐにパソコンの前に座って文章を書き始めたところだ。(つまりまだ全体の半分も読み終わっていない。だから、まだ読み終わっていない人が書いているという留保つきで、この文章を読んでください。いっしょに「読み始め」の感覚を味わってもらえたら。)

本というのは読んでいると途中で弛緩することがあるのだけど、この本はちょっと違う。本を愛している人たちが意図せぬうちに絶妙なチームワークを生み出し、言葉のリレーを繰り広げる。まるで、運動会のリレーのように、走者たちがバトンを渡すたびに見る者の高揚感は高まる。この本は、まさにそんな感じだ。(その高揚感をそのままに、4人目にバトンを渡そうとする所作だけ最後に確認して、もう文章を書き始めてしまった。)

島田さんがこの本の冒頭に言葉を綴ったのは、きっとこの本にとっての幸運だ。島田さんの言葉の中に、ひとつの「全体」の話があった。これは、私が思うに本が持つ最も根源的な力だ。こんな話から始まるこの本はすごいと思った。そしてこの本もそのままで、ひとつの「全体」を体現するものになっているんじゃないか、そんなことを考えた。

島田さんの言葉でもうひとつ印象に残ったのは、「具体的な読者のために仕事をしたい」という話。私自身、何か文を書いているときに、一般とか大衆とかいう言葉がピンとこない。具体的な読者しか、逆に想定できない。だから島田さんの言葉に勇気をもらった。具体的な読者、目の前のあなたに向けて書いていることが、どこかで見知らぬ誰かとも、少しだけ交わることを信じたいと思う。


矢萩多聞さんの中1で学校をやめてインドから日本の友だちに何百通も手紙を送ったという「ビョーキな趣味」の話を読んでいると、子どものころに私も何かを人に伝えたいという強いビョーキの衝動を持っていた時代があったことに気づかされた。小学校時代は毎日新聞を書いて、初めは壁新聞として貼りだしていたけど、それでは物足りなくなって、新聞を毎日学校の印刷室で刷ってクラスのみんなに配るようになった。(よく先生が認めてくれたものだと思う。)中学では毎週寝不足になりながら原稿を書いて、給食時間に図書館アワーという全校放送を1年間続けた。1年間続けた最後の日、給食の終わりかけの時間に教室に戻ってきた私に対し、担任の村石先生が、一年間、こんなに内容のある素晴らしい放送を続けられるものではない、みんな拍手を!とクラスのみんなに拍手を求めてくれたことは忘れない。どこかで自分の趣味でやっているだけ、という引け目のような気持ちが巣くっていたから、先生が認めてくれたことで、どれだけ救われたか。そんな少年時代のことを思い出した。

矢萩さんの言葉で印象に残ったのは、この章のタイトルにもなっている「女神はあなたを見ている」。この言葉は、きっとこの本がこの世に生まれた意味そのものを示しているので、ここで説明してしまっては余りにもったいない。物事を大切にいとおしむことを知っている矢萩さんの文を通して、この本を読む人に、この言葉を味わってほしいと思います。


そして3人目のバトンは校正者の牟田都子さん。「ものを知っている」というよりも「調べ方を(人よりも多少)知っている」という校正の仕事の本質の話、しかしその校正という行為自体は「読む」というよりも「耳をすます」ことであるという話。
私も昨年初めて本をつくって、校正の方と、そして自分が書いた得体の知れぬ言葉と、格闘し、会話をした。そうか、校正というのは、こんなにあったかくて、真剣な仕事なんだと、そこには確かに血の通った会話があったと、牟田さんの言葉を読んで、改めて深く噛みしめた。
私は本を書きたいとか、本を出したいとかそんなことではなくて、究極にはこういう会話がしたいだけなんだ、そのことが、次の本のことについて考えているこのタイミングで確認できてよかったと思う。


普段、感傷的すぎることは恥かしいと思い、自分のことについては極力書かないようにしているのですが、この本は、あまりに自分に寄せて読むことができる本なので、前半を読んだだけですが、つい長文を書いてしまいました。

とらきつねには昨日入荷しました。ぜひ手にとって読んでみてください。

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by terakoyanet | 2018-09-15 04:08 | おすすめの本・音楽 | Trackback | Comments(0)

とらきつね一般書ランキング(6/9-7/17)


(1) 1 親子の手帖 鳥羽和久 鳥影社
(ー) 2 勉強の哲学 来たるべきバカのために 千葉雅也 文藝春秋
(ー) 3 ゲンロン8 特集 ゲームの時代 東浩紀編 genron
(再) 4 子どもと一緒にスローに暮らす 藤田ゆみ アノニマ・スタジオ
(ー) 5 どもる体 伊藤亜紗 医学書院
(ー) 6 主よ一羽の鳩のために 須賀敦子 河出書房新社
(2) 7 脇道にそれる 尹雄大 春秋社
(ー) 8 謎床 松岡正剛,D チェン 晶文社
(4) 9 猫はしっぽでしゃべる 田尻久子 ナナロク社
(ー) 10 おしっこちょっぴりもれたろう ヨシタケシンスケ PHP研究所


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by terakoyanet | 2018-07-18 03:10 | とらきつね | Trackback | Comments(0)

私たちは、自分が正しい道を歩んでいると信じていたいし、そうでなければならないと思っている。でも、その「正しさ」についてちゃんと考え抜いているのかな、「正しさ」さえも私たちが自分が生きるために必死に作り込んだストーリーでしかないかもしれない。尹雄大さんの新刊『脇道にそれる <正しさ>を手放すということ』を読むと、そのことに気づかされ、考えさせられます。

共感によって手に入れようとした安心には、根がまったくない。それでも互いに「わかるよ」と頷きあっている関係さえあれば、たとえ中身が紛いものであっても「自分は孤絶していない」という手応えは確かに感じられる。私は現実ではなく、現実らしさを望んでいたのだった。(本文より)

私は私であることを恐れ、常に何者かになろうとする。自己実現とは、ありのままの自分になるという意味ではなく、常に評価される何者かになろうとしていまの自分を超えようとすることを指す。その何者とは、「理想」でありやがて達成されるであろう自己だ。いずれも像でしかなく、現実ではない。よくできた贋物でしかない。(本文より

第 1 章で、読者の胸を刺す<贋物である私>の指摘から始まるこの本は、第 4 章のべてるの家、しょうぶ学園といった、脇道にそれることを厭わない人たちへの取材を通した話で終わる。そういうこの本もひとつの「ストーリー」であり、それを欲する私たちもまた、自らの「ストーリー」に寄与するものとしてこの本を望んでいる。この本に出会った人が、自分のストーリーを大切に抱えながらも、「正しさ」や「信念」といった呪縛から解き放たれることを願っています。

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熊本・橙書店の店主、田尻久子さんの本、『猫はしっぽでしゃべる』。橙書店といえば、創刊以来とらきつねで販売させてもらっているアルテリの版元でもあります。

熊本地震のあと、移転した橙書店に行ったとき、以前と同じ匂いがする、と安心した人は多いでしょう。本の中にも「同じ匂いがする」と言って涙ぐむ人が出てきます。(決して湿っぽくはならないのですが。)地震の前も後も変わらずに営業を続ける書店員田尻さんの日常が淡々と綴られます。

いつも橙書店で執筆をしている坂口恭平さんのことが書かれた章があります。これを読んだあとに、本に付属している小冊子の坂口恭平さんの文章を読むと、心を深く動かされます。

田尻さん(恭平さんは久子ちゃんと呼ぶ)は何もジャッジしない、いつも「それでいいよ」「大丈夫」と言う。それは単に「否定」の対極にある「肯定」ではなくて、あなたの存在を無償で受け入れるからあなたは好きにしなさい、そういった、自分の存在に確かな囲いを与えてくれる場所としての「橙書店」が明らかになる場面です。人に救いを与えるというのは、本当はこういうことなんだろうな、そう感じます。
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写真集としては異例ともいえるロングヒットで24刷が決まった(おめでとうございます!)川島小鳥写真集『未来ちゃん』。

子どもというのは私たち大人とは別の世界に住んでいて、その世界はきっと宇宙より広いんだ。そのことを思い知らされる本です。

未来ちゃんがこうして確かに存在した一瞬を思うと、思わず涙が出るほど心揺さぶられるし、そしてたったいまも日本で、世界中で、きっと未来ちゃんが元気に駆け回っているのだろうということを信じることができます。そして、未来ちゃんがいる限り、私たちも絶望なんてしてられない、そう思うのです。

ナナロク社の本を多数入荷しました。『未来ちゃん』もサンプル本とともに展開中です。ぜひお手にとってみてください。

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失ってみてはじめて分かったことだが信頼は、生きることの基盤をなしている。自己への信頼も、他者との信頼の間に育まれる。心を開いてくれる他者と出会えたとき人は、他者との間だけではなく、自己との新しい関係をも結ぶことができるのはそのためだ。

心を開くとは、他者に迎合することではない。そうしてしまうと相手だけでなく、自己からもどんどん遠ざかってしまう。むしろ、心を開くとは、自らの非力を受け入れ露呈しつつ、しかし変貌を切望することではないだろうか。(本文より)


日経新聞に連載されたエッセイが単行本になった若松英輔さんの『悲しみの秘儀』。一冊の本のことを「誠実な読み物」と呼ぶのは、無粋で野暮なことだとわかっているけれど、それでも、これほど誠実さが身にしみる文章というのは、なかなか出会えないのです。悲しい(愛しい、美しい)生の中に生きる、全ての大人たちのために綴られた文章
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昨年、哲学者の中島義道さんをお呼びしたイベントの際に、ある来場者の方から、「高橋源一郎さんは、呼ばれないんですか。」と尋ねられました。彼女にとって、中島義道さん、高橋源一郎さんのふたりが、長年のアイコンらしく、また、随分毛並みの違うお二人が好きなんですね、なんて話をしたのを覚えています。高橋源一郎さん、お話ししてもらったら、そりゃあもう、面白いでしょうね。

高橋源一郎さんの新刊、『 お釈迦さま以外はみんなバカ 』 ( 集英社 ) を入荷しました。古今さまざまな本を題材に、さまざまに繰り広げられる四方山話。唸ったり笑ったりしているうちに、心がほどけてくる面白い本。松岡修造のどこがすごいのか、なんて話も、気軽なのに説得力のある言葉で綴られています。そして、本のどこから読んでも楽しいのが、また、ありがたい。攻めたタイトルも好きです。
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by terakoyanet | 2018-06-26 02:00 | おすすめの本・音楽 | Trackback | Comments(0)

本校の1Fとらきつねが書店を兼ねるようになってから、これまで以上にたくさんの方が立ち寄ってくださるようになりました。近所の方たちや学校の先生たちもたびたび立ち寄ってくださっています。

とらきつねでは不定期に一般書の売り上げランキングを発表しています。(ただし学習参考書は集計対象外。)


とらきつね一般書ランキング(4/23-6/8)


(1) 1 親子の手帖 鳥羽和久 鳥影社
(-) 2 脇道にそれる 尹雄大 春秋社
(-) 3 子どもと一緒に読みたい絵本 玄光社MOOK
(-) 4 猫はしっぽでしゃべる 田尻久子 ナナロク社
(10) 5 「ユマニチュード」という革命 イヴ・ジネスト他 誠文堂新光社
(7) 6 星の王子さま バンド・デシネ版 ジョアン・スヴァール 池澤夏樹 サンクチュアリ出版
(-) 7 もう ぬげない ヨシタケ シンスケ ブロンズ新社
(-) 8 良いおっぱい悪いおっぱい 完全版 伊藤比呂美 中公文庫
(-) 9 〈ほんとうの自分〉のつくりかた 榎本博明 新潮社
(-)10 あやとりの記 石牟礼道子 福音館書店

本日のとらきつねは12時オープン。(日曜のみ12時オープンです)
本棚の本たちは随時入れ替わっています。
1冊1冊大切に選んでいますから、雨の日にゆっくり読む本を探しにきていただければと思います。

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子どもが読書をしない、となげく親御さんがいらっしゃいますが、親が読書が楽しいと思って日々本を読んでいて、それが子どもに伝われば、自ずと読書が好きな子どもが育つことが多いです。(面白そうな本がずらっと並んでいる本棚があるとなお良いです。)

読書は何歳からでも始められるし、人生を濃密にする方法としてはとてもすぐれていると思います。
皆さんがよい本に出会えますように。


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by terakoyanet | 2018-06-10 10:26 | とらきつね | Trackback | Comments(0)

2017 BEST TRACK 1 (KOREA/JAPAN)

2017年のおすすめトラック、日本/韓国編。10曲を選びました。それにしても、今年も豊作でした。(毎年豊作ですが。)


● Maison book girl / faithlessness
ハマる変拍子が今年もまた。



●柴田聡子 / ゆべし先輩
今年読んだ植本一子さんの本の中にもでてきてたけど、この人、本当に天才だな!



●Qiezi Mabo loves PUNPEE - Qiezi Mabo Forever  
ふざけてるけど、一周まわって衝撃的にかっこいい。



●PAELLAS - P House Feat. ENNE
今年いちばんハマった曲。かっこいいけどヤボいからちゃんと温度がある。


●BTS (방탄소년단) / Go Go (고민보다 Go)   
今年はBTSの年でしたね。来年はさらに加速しそう。




●HYUKOH (혁오) / Leather Jacket  
ヒョゴはまずボーカルがすばらしい。音もおもしろい。動画はネバヤンとの対談。




● IU(아이유) / Palette(팔레트) (Feat. G-DRAGON)  
まさに今年を代表する曲。




●寺尾紗穂 / 私の怪物
胸をえぐる曲。寺尾さんの音の世界がまた一段深化した。
●Shinichi Atobe - Regret  
Susumu Yokota 氏の不在を嘆いていた時に、すっと胸に入ってきたのが彼の音でした。



●電気グルーヴ / トロピカル・ラヴ  
ひさびさにすごいトラックきましたね。



他にメジャーどころでは、以前も書いた、オザケン、コーネリアスの復活。そしてスピッツ30周年に伴う「振り返り」のためのエモい新曲”1987”。さらに、くるりにしか聞こえなかったネバヤンの夏の名曲Surely、そして今年この曲が出たことに必然しか感じなかった(だって今年は「家族」がテーマですもん)星野源の"Family Song"など、たくさんいいものがありましたね。来年も楽しみです。


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by terakoyanet | 2017-12-30 11:28 | おすすめの本・音楽 | Trackback | Comments(0)