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いよいよ4日後にせまった冬にわかれて福岡公演に寄せて、おすすめの曲たちをご紹介。


◇君の街 - 冬にわかれて



この曲、すごく、すごくいいですよね。
「ああ なんだか」で始まる歌詞、憂いのある歌声とアレンジ。
作詞・作曲はメンバーの伊賀航。


伊賀航さんは1998年に帯広出身のバンドbenzoのメンバーとしてメジャーデビューをしているのですが、
benzoは90年代フレイバーを感じさせつつも、いま聞いても古びていなくて、すごくいいです。

◇出会った頃よりも - benzo



細野晴臣のサポートキャリアも長い伊賀さんが細野晴臣の楽曲を選んだプレイリストが上がっていて、これは貴重な記事です。
伊賀さんのプレイリスト名、長い(笑)。鮮新世ではありえない熱帯夜にドロシーに恋のひとことを言おうとピクニックに出かけ原因不明の音に悩まされながらも愛を祝いあおうとする事について。だそうです。

◇熱帯夜 - 細野晴臣


Gradated Grey - 細野晴臣+高田漣 (g),伊賀航 (b),伊藤大地 (dr)



伊賀航さん、現在は星野源のライブで数万人を前に演奏した次の日に、ライブハウスで数十人を前に演奏するような日々。
↓は若き日の星野源&伊賀航の貴重映像。ふたりとも泣けるほど若い。

伊賀航さんはほしげんの右。




冬にわかれてのメンバー3人がそれぞれ寄稿した文章が載っている、寺尾紗穂さん編の『音楽のまわり』という小さくて美しい本があります。この本、昨年からとらきつねのベストセラーになっているのですが、その冒頭が伊賀航さんの車の文章。
『音楽のまわり』について、そして伊賀さんについて、愛のある素敵な文章で綴られたブログを見つけました。
ここに書いてあること、もう100%同意です。


そして、冬にわかれてのもうひとりの男子、あだち麗三郎さん。
彼の音楽、ほんとうにニッチでヤバいです。


◇Candy - あだち麗三郎クワルテッット



◇フラミンゴの飛ぶところ - あだち麗三郎

変拍子を多用した超絶アレンジと独特な世界観。本当にこの人天才だなと思う。


あだち麗三郎さんは 片想い、cero、鈴木慶一、HeiTanaka といった、バンドやアーティストの主要なサポートメンバーとして知られています。ceroの超傑作、Orphansではサックスを担当しています。

◇Orphans - cero



冬にわかれてのメインボーカル、寺尾紗穂さんは、縁があって毎年、夏ごろに福岡にお呼びしてイベントを開催しています。
いま検索してみたら、本ブログ内に寺尾紗穂さんの関連記事が39もあることが判明。

寺尾さんの曲で何が一番好き?と聞かれてると、とても困るのですが、私が挙げることが多いのは「道行」です。

◇道行 - 寺尾紗穂

そして、寺尾さんの代表曲のひとつといいでしょう。「楕円の夢」
美しくて、そして彼女の哲学がそのまま詰まった曲。
舞踏はソリケッサ、撮影とディレクションには植本一子が参加。
伊賀航はベース、あだち麗三郎はドラムで参加しています。

◇楕円の夢 - 寺尾紗穂



そして寺尾紗穂さんとの親交も深いゲストの坂口恭平さん。
坂口さんは『独立国家のつくりかた』などのベストセラーをもつなど中高生の教科書にも登場する作家として知られていますが、
実際のところは、絵や音楽から工芸まで境目ない活動を行う「芸術の自動機械」「芸術の総合商社」と呼びたくなるような人です。
アウトデラックスに出演した変人(ほめてます)でもあります。
いまの時代に生きていて、彼を目撃しないのはとてももったいないと思うのです。

◇あの声 - 坂口恭平



坂口さんはメロディラインがエモい曲が多いです。
↓は彼のファンの間でも特に人気のある曲のひとつ「西港」の坂口ファミリーver.。
曲が始まるまでの前振りも含めて最高にいい。

◇西港 - 坂口恭平



それ以外のおすすめは、すでにこちら↓の記事でおすすめをしていますので、あわせてどうぞ。

◇なんにもいらない - 冬にわかれて


なんにもいらないよ
君の幻以外

誰にも知られずに
死ぬかもしれぬ朝

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by terakoyanet | 2019-06-03 10:53 | とらきつね | Trackback | Comments(0)

残照


幾度も旅に出ては、旅先で出会ったことを忘れたくなくて、記録する。こうして旅のことについて何か記そうと思うたびに、いつも思い出すのが「私は旅や探検家が嫌いだ。」というレヴィ=ストロースの言葉だ。

これは『悲しき熱帯』の冒頭に置かれた作者の独白である。旅とそれを書く行為を「羞恥と嫌悪」に塗(まみ)れた感情で綴りながら、自らが「無為なもの」と言い切る冒険を途轍もない熱量で書ききったあの有名な書物は、この言葉で始まる。

現代の私たちは、かつてレヴィ=ストロースが世に問うた内容を知っている。
近代の知に拠って、西洋の特権的な視座だけで世界を見ると本質を見誤るということを、ある程度は理解している。
しかし、『悲しき熱帯』に表出する、旅先の何かに触発された語りは、構造主義的な意義を超えて私たちに直截に訴えかける魅力を放っている。
精緻な描写のひとつひとつは、あまりに生き生きとしている。旅という行為から剰余として溢れ出す、隠喩に彩られた濃密な思索は、読む人を捻じ伏せるように圧倒し、そして時にひどく悲しくさせる。そのときの感情は、うまく説明のつかないものだ。


去年、イベントで写真家の石川直樹さんをお呼びして話を聞く機会を得た。「僕が富士山に行って写真を撮るとしても、それは、富士山を撮るんじゃなくて、富士山で撮るにすぎない。そこで自分が何を考えるかということでしかない。」「そこでは自らボールを投げるのではなく、飛んでくるボールをただ受け取るだけ。」彼は写真についての最も基礎的な話のなかで、それをいつものように淡々としゃべった。

石川さんもエッセイ『最後の冒険家』の中に書いているとおり、地理的に未知の領域が残されていない現在では、近代的な意味での冒険家というのは存在自体がありえないものとなった。『私は、「本当の」旅の時代に生まれ合わせていればよかった』とレヴィ=ストロースによって語られた時代よりもっと、新世界との邂逅の魅惑から遠く離れてしまった私たちは、それらの残滓を見つけることさえ難しい。

しかし、それでいながら、私たちは相変わらず旅を楽しむことができる。
なぜなら、いまも変わらず、私たちの一寸先の未来は誰も手中にすることができず、そこは未知の至福で溢れているから。

『悲しき熱帯』は旅の記録というよりは、未知に出会った私の変容の記録である。そこで飛んできたボールを受け取った私が、時に無邪気な子どもに戻ったように、時に物思いに耽る青年のようにそこにいて、ただ湧き出た心をそのままに感じている。だからこそ、言葉が生起した瞬間の瑞々しさがそのまま文体の中に溢れ出していて、そのこと自体が、とてもくるおしくて、どうしようもなく悲しいのだ。




平成という時代は、自分の世界をコントロールして最適化できる時代の幕開けであった。
SNSでは、フォローしたり、フォローを外したりすることで、写真をトリミングするように、自分が見たい情報だけを見る、見たくない情報は見ないようにすることが可能である。
そうやって、いつも最適化できる安心な世界の心地よさを知っている現代の子どもたちは、自分の手でうまく制御できないことからは即座に退却しようとする傾向がある。
彼らは驚くほどに平坦を求めている。
「僕が一番求めているのは安定です。それだけあればいい。」この前のディスカッションで、高校1年生のAくんがそう言い切った。
彼は、学校の先生の理不尽さをたびたび批判するような、反骨精神に溢れる子なので、私はなおさら驚いた。

若者が変化を求めて転がり回る時代はすでに終わったのかもしれない。
彼らはいつも心地よい共感の中にいて、ぬくぬくとした関係を築くことができる友人関係を求めている。そして、思い通りにならない恋愛関係はちょっとめんどくさいと敬遠する。
でも実は、コントロールできないことと、恋愛対象への渇望というのはセットなので、これが意味することは、性的なもの全般に対する退却でもある。これが「草食化の時代」と言われた平成という時代の中身なのかもしれない。




『悲しき熱帯』に刻印された過剰な語りは、旅先で自らが「見られている」経験をすることから生じる。

旅よ、お前がわれわれに真っ先に見せてくれるものは、人類の顔に投げつけたれたわれわれの汚物なのだ。

このような言葉は、不気味なもの、得体のしれぬものに眼差されているという経験なしには生まれ得ない。
しかし、いつもスマホの画面と向き合っている私たちは、その画面から眼差しを返されることはない。そこにあるのは、すでに私のために選別された情報であり、私の分身であり、つまりは私のための安心できる世界であり、そこに「見られている」という経験は含まれない。

ツイッターのタイムラインを見ながら多くの人がやっているのは、自分自身の傷探しである。ある時は、自分と同じ傷を負っている人に甚(いた)く共感し、ある時は自分と同じ傷を誰かに負わせた人を責め立てる。また別のある時は、感情の自動機械のようにその両方をする。

タイムラインの流れに身を任せ、それに転移することで自分を傷つけたものへの復讐を成就させる私たち。ツイッターはいまや傷探しのツールで、傷を見つけてはそれを埋める快楽を半ば反射的に繰り返す。こうやって、画面の中で自分の欲望が即時的に達成されてゆく世界には、「見られている」がない。

SNS上の「いいね」は、あなたが「いまのままでいい」ということを肯定するシステムである。
「いまのままでいい」は、自らが変容することに怖気づく主体をやわらかく包み、肯定する。
「いいね」は存在の甘やかしに他ならず、相互に「いいね」を繰り返すことで、その存在はめくれることをやめ、地滑り的にお互いをどんどん劣化させてゆく。

旅とは「見られる」という不気味なものを通して自らが開かれる経験である。しかし、インスタ映えを狙ったナイススポット巡りは、「見られる」経験を抑圧した上で「見る」ことができる私を肯定し、全能のものとして特権化するプロジェクトである。それは、即時的な「いいね」の快楽と相通じるものがある。

現在、SNSから離れてネットからは見えないコミュニティを作る動きや、本質的な体験を志向した新たな旅の提案など、現状に対する違和感を抱えた人たちによる新たな試行錯誤が続いている。これらの活動は「見られる」ことさえも目的化しかねない危うさを孕む。
しかし、最適化の時代に生きる私たちは、こうやって自身が変容していくことを半ば意識的に選択する必要があるのかもしれない。でなければ、スマホが与える情報と現実が身体化し、気づいたときには身動きが取れなくなっているかもしれない。




子どもとは不気味なもののことである。新生児の顔は実際に不気味である。

子どもは、自分にとって、もっとも親密でありながら、拡散し、増殖し、いつのまにか見知らぬ場所にたどりついてぼくたちの人生を内部から切り崩しにかかってくる、そのような存在である。
東浩紀『ゲンロン0 観光客の哲学』

子どもが不気味な存在であるがために、神に近い神聖な存在とみなされていたのは、それほど昔のことではない。
石牟礼道子さんが幼いころの記憶を描いた『椿の海の記』という本がある。これを読むと、幼年時代の彼女が、まさに不気味な存在として、世界をありのままに受け取って生きるさまが描かれている。

見えている世界より、見えない世界の方がよりこわい。目をつぶって、掌でそろりと撫でればモノというものがわかり、猫の鼻の不思議のような嗅覚をわたしは持っていた。その掌をかざせば指の間から天井が見える。天井の模様が見える。天井の模様はまだ見ぬ他界への入口だった。幻怪な形の鬼たちの太ももや、片耳や、穴の深い壺が、のびちぢみしている。仏さま仏さま、指の間からお仏壇を見る。
石牟礼道子『椿の海の記』

子どもの世界というのは残酷なほどあからさまである。そして、石牟礼さんのこの本には、その奇妙な残酷さがそのままに描かれている。
私はこれを読んだときの「この世界を知らなかったら、本当に危なかった」という感覚が忘れられない。自分が見失ってしまった世界があることに驚き、憑き物が落ちたような気持ちになった。

それは、子どもという得体の知れぬ妖精によって書かれた本であった。そこにあるのは大人から見た子どもではなく、子どもの目から見た子どもの世界そのものであり、すでに世間に取り憑かれている大人からすれば、驚愕すべき「異文化」の世界であった。





私は、人間という種がその世界に対してまだ節度を保っており、自由を行使することと自由を表す標とのあいだに適切な関係が存在していた一時代の残照、インディオのアメリカにおいてすら果敢ない残照を、慈しむのである。
『悲しき熱帯Ⅰ』レヴィ=ストロース


かつてレヴィ=ストロースがインディオのラテンアメリカで見たものは「異文化」が持つ不気味な力であり、それは「人間という種が、その世界に対してまだ節度を保っていた」ころの「残照」であった。

彼がここで言う「残照」とは、時代に取り残され、人の記憶から消えようとしている世界に手を伸ばし、自分のもとへ必死に手繰り寄せようとすることである。そして、それが私たちとどこか似ていることをおぼろげに触知することであり、その手触りを大切に抱くことである。

このことを通して、私たちはどうにか真っ当に生きていくことができるのではないか。


陽はすでに落ち 暗い部屋にひとりこぼれゆく時を 足元にみつめ問えど答えなく 風が鳴るだけ
寺尾紗穂『残照』



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一昨日、機上から捉えた富士山
夏が近いことを感じさせる山容



寺尾紗穂さん、いよいよ来週、福岡へ。

寺尾紗穂・伊賀航・あだち麗三郎のバンド「冬にわかれて」初の福岡公演は6月7日(金)。
ゲストは坂口恭平さん、そしてカフェはくらすことさん。
素晴らしいイベントになること間違いありません。






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by terakoyanet | 2019-06-01 01:27 | 寺子屋エッセイ(読み物) | Trackback | Comments(0)

冬にわかれて(寺尾紗穂 ・あだち麗三郎 ・伊賀航)福岡公演(ゲスト坂口恭平)まであと2週間をきり、申込みの方がググッと増えてまいりました。




これまで寺尾紗穂さんのライブに毎年駆けつけてくださっている方はもちろんのこと、あだち麗三郎クワルテットやceroの活動であだちさんの音の面白さをご存知の方、伊賀航さんを星野源のバンドの笑ってない人でしょ、と認識している方まで、幅広くお申込みをいただいています。坂口恭平さんにも会えますね。

(というわけで、冬にわかれて、寺尾紗穂のファンだけでなく、ceroや片想い、あだち麗三郎クワルテット、星野源、細野晴臣、坂口恭平などが好きな方もぜひご来場ください。)


冬にわかれて の曲の中で私が一番好きな「君の街」。


冬にわかれて の3人による 寺尾紗穂「幼い二人」。これもすごくいい。


あだち麗三郎さんの名曲「Afrikan Ghostz」。

この前、回kai の佐野さんと話していたときに、あだちさんすごいよねー、という話をため息混じりに。



私が伊賀航さんを知ったのはちょっと遅くて、いまから10年近く前(衝撃!)の、星野源(彼もこのころはまだ今みたいに人気者じゃなかった)の「ばかのうた」のメイキングビデオ。




『独立国家のつくり方』などのベストセラーで知られる坂口恭平さんは、作家としてご存知の方も多いと思いますが、

音楽もたくさん発表しています。過去には数度とらきつねにも。

「休みの日」のMVには、コーラスで参加している寺尾紗穂さんも。



そして、くらすことさんは、大人気のドーナツをはじめ、美味しい食べ物、飲み物をご用意くださります。
くらすことの藤田ゆみさんは、東京時代に寺尾紗穂さんとママ友だったとのこと。

縁は繋がりますね。


いよいよです。とても、とても楽しみですね。

冬にわかれて 福岡公演 (ゲスト 坂口恭平)

会場 :レソラNTT夢天神ホール 福岡県市中央区天神2丁目 5−55

公演日:2019年 6月 7日(金 )
開場: 17時40分 おやつと雑貨、くらすこと カフェ オープン
開演: 19時10分

料金:一般 前売 ¥4,500 当日 ¥5,000 / 学生割引 前売 ¥2,500 当日 ¥3,000
障害者割引 前売 ¥2,500 当日 ¥3,000 (付添 1名まで無料 )
(税込 /全自由 /予約番号を交付 /学生は当日に学生証を要提示 /障害者手帳等をお持ちの方 は当日 に手帳を要提示)
※当日入場時にドリンク代¥500をいただきます
※高校生以下無料 (ただし、1座席につきドリンク代¥500をいただきます。)
※ご購入 いただいたチケットの返金は不可 です。

前売券:購入方法
①とらきつねBASEオンラインで決済
https://torakitsune8.thebase.in/
②とらきつね(唐人町1-1-1成城ビル1F )店頭でご購入

お問い合わせ先:℡ 092-731-0121 ✉ tobacco2@jcom.home.ne.jp (とらきつね)



冬にわかれて プロフィール

寺尾紗穂(P.Vo)伊賀航(Ba)あだち麗三郎(Dr)によるバンド・プロジェクト「冬にわかれて」。シンガー・ソングライターの寺尾が、ここ数年来、彼女を支えてきた伊賀とあだちという気心の知れた二人のアイデアを受け、3人で練り上げて生まれる音楽をやってみたいと結成。2017年8月にシングル「耳をすまして」でデビューを果たす。2018年10月に1stアルバム『なんにもいらない』をリリース。収録曲「君の街」が三ヶ月にわたりJWAVEのヒットチャート100に入るなど注目を集めた。ピアノがリードする寺尾のソロ作品とは一味違う陰翳ある世界観、実験的でありながら懐かしいポップスの佇まいが支持されている。

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by terakoyanet | 2019-05-27 08:22 | とらきつね | Trackback | Comments(0)

私は、真の表現者というのは「フィクション」に対する覚悟を持っていると思っていて、その「フィクション」に対する覚悟が現われている、最もわかりやすい例だと私が思っているのが、星野源が病床で書いた曲『地獄でなぜ悪い』の歌詞です。



無駄だ ここは元から楽しい地獄だ
生まれ落ちたときから 出口はないんだ

いつも窓の外の 憧れを眺めて
希望に似た花が 女のように笑うさまに 手を伸ばした

嘘でなにが悪いか 目の前を染めて広がる
ただ地獄を進む者が 悲しい記憶に勝つ

<中略>

作り物で悪いか 目の前を染めて広がる
動けない場所からいつか 明日を掴んで立つ 明日を掴んで立つ

幾千もの 幾千もの 星のような 雲のような
「どこまでも」が いつの間にか 音を立てて 崩れるさま

嘘で出来た世界が 目の前を染めて広がる
ただ地獄を進む者が 悲しい記憶に勝つ

作り物だ世界は 目の前を染めて広がる
動けない場所から君を 同じ地獄で待つ 同じ地獄で待つ

星野源『地獄でなぜ悪い』




私はこの歌詞を聞いたときに、星野源という人は、この時点で「星野源」をフィクションそのもののとして見立てて活動していくという覚悟を決めてしまったのだなと思ったのです。彼が植木等を敬愛しているというのはそういうことだったのか。これは怖ろしいことだな、すごいことだなと。

この考えの根底には、「作り物だ世界は」という根本的な洞察があるんです。

私たちはとかく「世界の真実」について考えがちだし、「私たちが生きている現実」について考えがちなのですが、そうではなくて彼は「私たちはすでに作り物である世界に投げ出されてしまって」いて、それははじめから「真実」や「現実」などの拠り所などはない「楽しい地獄」なのだというところから始めている。

私はこういう出立地を持つ表現者を信頼します。



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by terakoyanet | 2019-01-04 11:11 | 寺子屋エッセイ(読み物) | Trackback | Comments(0)

BEST TRACK 2018 (JAPAN)

2018年に出会った好きなトラックを10本ご紹介します。(日本編)
→世界編はALBUM10本をそのうちご紹介しようと思います。


◇折坂悠太 - さびしさ
こちらのブログでは過去に何度かご紹介している、折坂悠太くん。
ミュージックマガジンの2018年BEST ALBUMの1位にも選出された『平成』は、彼の世界がさらに深化したことを感じさせる傑作です。
この曲は、いままで届きそうで届かなかった人たちにも届いた曲なんじゃないかなと思う。


◇折坂悠太 - 芍薬
折坂くんの曲、もうひとつ。2018年はこの曲からはじまりました。今年の初めにガツンとやられた劇的、激的な楽曲。
ミニアルバム『ざわめき』に収録。この曲が好きな人は、『平成』収録の「逢引」も絶対に聞くべきです。


◇never young beach - うつらない
never young beach のもつ抒情的な繊細さはそのままに、ギターのリフも、コーラスも、曲を支える深いベース音も、全てが美しい、祝祭的な曲。ネバヤン、こんな世界に来たのかと、涙ぐむ名曲。


◇宇多田ヒカル - あなた

最近の宇多田ヒカルの中には、自分の内側を軽やかに抉るような作品があり、目が離せなくなる。
この曲については、来年出す新刊に書くかもしれないけど、私とあなた(子ども)の密室的な関係がエグいほどに描かれていて、凄まじいと思ったのです。


◇Tempalay - どうしよう
今年、一番かっこいいと思った曲。


◇King Gnu - It's a small world

シーンのど真ん中にTempalayやKing Gnuがいる世代がうらやましい。MVも秀逸。


◇冬にわかれて - 君の街

寺尾紗穂+伊賀航+あだち麗三郎の3人によるバンド、冬にわかれてのファーストアルバム『なんにもいらない』より。
伊賀航作詞・作曲のこの曲は、淡々とした中に静かな哀切が漂っていて、寂しさを温めるような大人の一曲に仕上がっています。


◇元ちとせ Feat. 民謡クルセイダーズ - 豊年節
2017年に出た民謡クルセイダーズのアルバム『エコーズ・オブ・ジャパン』は大傑作なので、ディープな音が好きな人には絶対に聞いてほしいのですが、つい先日、元ちとせが出した奄美の民謡を集めたアルバム『元唄』に収録されたこの曲は、猥雑で楽しげな雰囲気が漂うアレンジがほんとうにかっこいいです。豊年節は、そのタイトルにかかわらず、豊作を祝う歌ではなく、支配者である薩摩船の到着を祝うという歌なんです。ここらへんも勉強して、聞くとさらに面白い。


◇cero - 魚の骨、鳥の羽根
以前から、ceroファンには知られていたこの曲。
彼らは今年のアルバム『POLY LIFE MULTI SOUL』でさらに凄味が増しました。



◇前野健太 - 今の時代がいちばんいいよ
平成最後の物哀しさを湛えたこの年に「今の時代がいちばんいいよ」と歌った前野健太。
悲観でも楽観でもなく、淡々と「今の時代がいちばんいいよ」と呟くように歌う彼の詩と歌が胸に刺さる。







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by terakoyanet | 2018-12-24 13:03 | おすすめの本・音楽 | Trackback | Comments(0)

米津玄師について

今年の配信でおそらく国内年間1位になりそうな"Lemon"のヒットなど、飛ぶ鳥を落とす勢いの米津玄師。
時代の寵児となり、今日もつまらないバッシング記事を目にすることがあり、本人もさぞ大変な毎日だろうなと察するところです。(取材したいなら、まず相手を尊重すべきでしょという当たり前のことをこの記事を読んで思います。)

ハチ改め米津玄師名義になったころ(このブログで最初に彼を紹介したのは2012年7月の記事)は、すごく人気だけど、それでもニッチなところでの人気でとどまるのではないかと思っていました。センスがぶっちぎり(彼は作曲も作詞も作画もダンスも編集もすべて職人技)で良すぎたし、曲の根っこが暗いから。

もともとメロディセンスに長けた人なので、その後は耳馴染みがよく、しかも、噛むほど美味しくなる楽曲を発表し続けるのですが、いま歌詞をじっくり読んでみると、確かに、確かに、いまのネット世代の若い子たちの内面を深く露出させているものがとても多いと思うのです。このことについては、もしかしたら次に出す予定の本で触れることになるかもしれません。実体や実感というものがよくわからない、宙ぶらりんな私たちのよるべのなさを、これほど根深く楽曲に刻み込んでいる人が、日本の音楽のど真ん中にいることは、とても面白いと思うのです。

以下に私が好きな彼の曲を10曲載せたいと思います。


1 アイネクライネ (2014)


2 Loser (2016)


3 vivi (2012)


4 ゴーゴー幽霊船(2012)


5 首なし閑古鳥(2012) ※MVがないので『diorama』アルバム全曲レビューより(12曲目6:11~)


6 Flowerwall(2015)


7 サンタマリア(2013)


8 あめふり婦人(2012) ※MVがないので『diorama』アルバム全曲レビューより(5曲目2:14~)



9 ポッピンアパシー(2013)



10 ピースサイン(2017)




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by terakoyanet | 2018-10-29 13:56 | おすすめの本・音楽 | Trackback | Comments(0)

2017 BEST TRACK 1 (KOREA/JAPAN)

2017年のおすすめトラック、日本/韓国編。10曲を選びました。それにしても、今年も豊作でした。(毎年豊作ですが。)


● Maison book girl / faithlessness
ハマる変拍子が今年もまた。



●柴田聡子 / ゆべし先輩
今年読んだ植本一子さんの本の中にもでてきてたけど、この人、本当に天才だな!



●Qiezi Mabo loves PUNPEE - Qiezi Mabo Forever  
ふざけてるけど、一周まわって衝撃的にかっこいい。



●PAELLAS - P House Feat. ENNE
今年いちばんハマった曲。かっこいいけどヤボいからちゃんと温度がある。


●BTS (방탄소년단) / Go Go (고민보다 Go)   
今年はBTSの年でしたね。来年はさらに加速しそう。




●HYUKOH (혁오) / Leather Jacket  
ヒョゴはまずボーカルがすばらしい。音もおもしろい。動画はネバヤンとの対談。




● IU(아이유) / Palette(팔레트) (Feat. G-DRAGON)  
まさに今年を代表する曲。




●寺尾紗穂 / 私の怪物
胸をえぐる曲。寺尾さんの音の世界がまた一段深化した。
●Shinichi Atobe - Regret  
Susumu Yokota 氏の不在を嘆いていた時に、すっと胸に入ってきたのが彼の音でした。



●電気グルーヴ / トロピカル・ラヴ  
ひさびさにすごいトラックきましたね。



他にメジャーどころでは、以前も書いた、オザケン、コーネリアスの復活。そしてスピッツ30周年に伴う「振り返り」のためのエモい新曲”1987”。さらに、くるりにしか聞こえなかったネバヤンの夏の名曲Surely、そして今年この曲が出たことに必然しか感じなかった(だって今年は「家族」がテーマですもん)星野源の"Family Song"など、たくさんいいものがありましたね。来年も楽しみです。


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by terakoyanet | 2017-12-30 11:28 | おすすめの本・音楽 | Trackback | Comments(0)

毎年のように綴っている、独断と偏見で選んだ今年のベストアルバム。2017年はこの9作を選びました。


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NUUAMM - w/ave (JAPAN)



Lana Del Rey - Lust For Life (US)



大森靖子 - kitixxxgaia (JAPAN)



Fever Ray - Plunge (SWEDEN)



EPIK HIGH - WE'VE DONE SOMETHING WONDERFUL (KOREA)



IBEYI - Ash (FRANCE/CUBA)



寺尾紗穂 - たよりないもののために (JAPAN)



PAELLAS - D.R.E.A.M. (JAPAN)



Mac DeMarco - This Old Dog (CANADA)




エレクトロニクスと音楽は年々ますます親密になっていきます。この時代にこんな音楽と出会えてよかったと思います。後日、ベストトラック編を。




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by terakoyanet | 2017-12-20 12:23 | おすすめの本・音楽 | Trackback | Comments(0)

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オアハカから東南東に20㎞の場所にある町、サン・ヘロニモ・トラコチャウアヤ(San Jerónimo Tlacochahuaya)の教会堂に行きました。

16世紀に建てられたこの聖堂。外見は質素ですが、中に入ると素晴らしいんです。
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直前にタクシーのパンクトラブルがあり、着いたときには見学時間を過ぎていましたが、お願いしてみたら特別に見せてくれました。
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2階も見る?と聞かれて私は大喜び。だって私はこの教会の2階にあるパイプオルガンを見るためにこの町に来たんです。見学時間外のため、若いアーティスト2人がパイプオルガンで音源の録音中だったのですが、快く見せてくれました。
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2階から堂内を見下ろす 天井画が目前にせまって美しさにめまいがするほど



そして、こちらが私が見たかったパイプオルガン。
2階に上ったとき、ちょうど録音のリハーサル中でしたから、その音を聴くことができました。
いかにもプリンシパル系の明るい音で、一聴しただけで、素晴らしいオルガンだとわかるほどでした。
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よく見ると、
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唄口に人が描かれているんです。空気が出入りする場所が口になっているなんて、素晴らしいでしょう!
一見ユーモラスなんですけど、それだけでは片付けられない強いエネルギーを感じます。

こんなものが作られるというのはただ事ではないです。このパイプオルガンを見ているだけで、教会と音楽とが人々の生活に深く刻み込まれているこの町について、もっと知りたいと思わずにはいられません。

メキシコのめくるめく聖堂の話、またそのうちに。





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唐人町寺子屋の新しいオフィシャルホームページはこちらです。

入塾希望の方、お問い合わせの方はこちらの「お問い合わせフォーム」を通してご連絡ください。
by terakoyanet | 2017-11-21 02:53 | 好きな場所 | Trackback | Comments(0)

魅惑のK-POP

日本と韓国の間の関係が冷え切っている。
報道やテレビの中の人たちを見ていると、そんな印象を受けることもありますが、
それはあくまで一部の政治とそれに付随する感情的なものであって、
いまの中高生、大学生の(特に)女の子たちを見ていると、ファッションや音楽の受容において、これほど熱く若い子たちに韓国発のものが支持された時代があっただろうかと思うのです。

少し前に、私がTWICEを知らなかったことから、「先生、何も知らんっちゃん」と、中2の女の子たちからいまバカにされているところなのですが、TWICEを知らなかったからといってはげしいツッコミを受ける40代男性も世の中には少ないだろうと、いまの境遇を楽しんでいます。

J-POPにくらべても圧倒的に世界的な浸透度を誇るK-POP。いまの大学生たちは、Frank OceanやKendrick Lamarを聴きながらBIGBANGやBTSも聴いちゃうところがすごくいいと思います。

TWICEを知らなかった疎い私でも、オススメがたくさんありますので、私がふだん聴いているK-POP、以下にいくつか紹介します。


















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by terakoyanet | 2017-10-30 10:37 | おすすめの本・音楽 | Trackback | Comments(0)